迷惑行為対応
ハラスメントカスタマーへの提訴は既に後手

自治体が迷惑市民を提訴
自治体に対して何百件もの電話を執拗にかけ続ける迷惑市民が存在し、それに対して自治体がついに提訴に踏み切ったという報道が見られます。役所であれ企業であれ、公共窓口や顧客対応の最前線に立つ人々に対して、感情的なクレームや理不尽な要求を繰り返す「カスタマーハラスメント」は、すでに深刻な社会問題となっています。窓口担当者やコールセンター職員は、相手の要望に可能な限り応えようとしますが、それにつけ込むように行為をエスカレートさせる迷惑客は一定数存在し、通常の対応では被害を抑えきれません。
自治体が提訴に踏み切った背景には、通常の注意喚起や業務上の説得では改善の見込みがなく、かつ被害が拡大している現実があります。迷惑行為を繰り返す人に対しては、断固とした法的対応が有効だと言われますし、訴訟を通じて行為の違法性を明確にすること自体には一定の意義があります。しかしながら、実際には提訴が行われた段階で、すでに被害は相当進行していることが多く、被害の大部分は元に戻りません。
また、提訴したからといって迷惑行為が必ず止まるとは限りません。迷惑行為に及ぶ人の中には、そもそも訴訟に耐えうるだけの資力がなく、仮に損害賠償請求が認められても回収不能に終わるケースが多くあります。つまり、提訴によって形式上は勝訴できても、実際の被害回復や行為の抑止には直結しないという現実があるのです。
このように、提訴という対応は「最後の手段」であると同時に「既に後手に回った状況」で実施されることがほとんどです。被害が深刻化して初めて動き出すのでは、現場が受けた時間的・精神的負担を埋め合わせることはできません。そこで本稿では、こうした迷惑客を相手にする際にどのような視点で被害を最小化するべきか、その基本的な考え方を整理していきます。
なぜここまで大事に?
数百件の電話が寄せられるという事態は、通常の市民対応の範囲を大きく逸脱しています。組織としての通常業務を著しく妨げるだけでなく、対応にあたる職員の精神的疲弊は相当なものになります。クレーム対応は往々にして相手の感情的な言動に触れる機会が多く、敬語や丁寧な対応を守りながら応対を続けるだけでも大きなストレスを伴います。そこに執拗な連絡が繰り返されれば、対応者が心身を病んでしまうことも珍しくありません。
さらに、迷惑行為が長期間続くことで、被害は時間の消耗だけにとどまりません。対応に追われて本来の業務が遅延し、内部の業務効率にも影響が出ることで、組織全体にとって大きな損失が生じます。精神的な負担は金銭的に評価が難しく、損害賠償請求で回収できる範囲を大幅に超えるダメージが蓄積されます。このような被害は、後から金銭で補うことはほぼ不可能であり、まさに「防げる段階で防ぐべき」性質のものだと言えます。
では、なぜ事態がここまで大きくなるまで放置されがちなのでしょうか。一つには、公的機関や企業が「顧客や市民の声には耳を傾けるべきだ」という使命感を強く持ちすぎてしまう傾向があることが挙げられます。相手が無理を言っていることが明らかであっても、窓口側が対応を「拒絶する」ことをためらい、結果として対応が長引きます。また、担当者が交代しても過去の経緯が共有されていないことで、相手の言い分を一から聞き直してしまい、被害が増幅されるケースもあります。
被害が深刻化する前に対処するためには、現場に「これは異常である」と認識できる視点と、「一定のラインで対応を止める」勇気と支援体制が欠かせません。事後対応としての提訴は重要な手段のひとつですが、提訴に至る前段階で被害の拡大を阻止する体制が整っていなければ、組織としての疲弊は避けられません。
被害を減らす工夫が必要
迷惑客の対応においては、被害を最小限に抑える工夫が欠かせません。まず大切なのは、しつこい陳情や理不尽な要求に対して、担当者が必要以上に時間を割かない体制を作ることです。熱心に耳を傾ければ相手が満足するという考えは、迷惑行為を行う人には通用しません。むしろ「まだ話を聞いてくれる」と勘違いさせ、行為がエスカレートする原因になりかねません。
次に有効なのは、応対する職員を固定せず、適宜交代する仕組みです。同じ人が延々と対応することで、相手は「この職員は自分の言動に耐えてくれる」と安心し、要求を強めてくる傾向があります。担当者を変えることで心理的な距離が生まれ、相手のペースを崩すことができます。また、担当者が一人で抱え込むことによる精神的負担も軽減され、組織として長期間の対応に耐えられる体制が整います。
そして、対応できないことは明確に「できません」と伝える姿勢が不可欠です。曖昧な表現や曖昧な約束は、迷惑客からすると「まだ交渉の余地がある」と受け取られ、さらなる要求につながります。対応可能な範囲を明確にし、ルールに基づいて対応することで、組織として一貫した姿勢を示すことができます。
さらに、マニュアルの整備も重要です。対応の線引きを明文化することで、現場の判断が一定になり、迷惑客への対応が場当たり的になることを防げます。どこまで対応し、どの段階で対応を終了するのかを明確に定めておくことで、担当者の負担が減るだけでなく、組織として迷惑行為を許容しない体制を示すことにつながります。
こうした工夫を積み重ねることで、迷惑客による被害を最小限に抑えられます。提訴という「最後の手段」に頼る前に、日常的な行動の中で被害を軽減することが、最も効果的で現実的な対応策となります。
弁護士には訴訟よりも迷惑客対応を任せよ
迷惑客への対策を考える際に重要なのは、賠償金を得ることよりも、被害を最小化することです。実際のところ、賠償金が回収できるケースは限られており、訴訟を行っても手間と時間がかかります。現場が被害を受け続ける時間が長くなるほど、組織の損失は拡大してしまいます。そこで有効なのが、一定のラインを超えた迷惑客に対して、早い段階で弁護士を介入させることです。
弁護士が対応することにはいくつかの利点があります。まず、迷惑行為を行う人の多くは、相手を「下に見ている」からこそ強気に出ています。窓口職員や担当者に対しては横柄な態度を取る一方、弁護士が介入すると態度が急に変わる人が少なくありません。法律的な知識を持つ専門家から直接注意を受けることで、自分の行為が違法であるという認識を持ちやすくなり、行為をやめるきっかけにつながります。
また、弁護士が組織の窓口として対応することで、担当者が直接話を聞く必要がなくなり、精神的な負担が大きく軽減されます。組織としての正式な対応窓口が設定されることで、迷惑客とのやり取りが形式的なものになり、相手が感情的に要求を押し付けてくる余地が減ります。対応記録も正確に残るため、万が一訴訟に発展しても、証拠として有効に活用できます。
さらに、弁護士に早期介入を依頼することで、事態が大きくなる前に抑止できる点も見逃せません。迷惑行為が常態化してしまうと、それを止めるためには大きな労力が必要になります。早い段階で弁護士から直接注意喚起を行うことで、被害が深刻化するのを防ぎ、組織が本来の業務に集中しやすくなります。
つまり、弁護士への依頼は「訴訟を起こすために依頼する」のではなく、「被害を最小化するために専門家に任せる」ことが本質的な役割です。迷惑客が一定のラインを超えたと判断した段階で、顧問弁護士に対応を引き継ぐことは、組織を守る上で極めて合理的な選択だと言えます。
認めることは認めよう
迷惑客の対応を難しくしている要因の一つは、組織側が必要以上に「防御的」になることです。組織がミスを隠蔽しようとしたり、柔軟性のない形式的な対応に終始したりすると、顧客側が「このままでは納得できない」と強硬な姿勢を取ることがあり、結果として紛争が長期化します。問題が大きくなる原因は、迷惑客の一方的な言動だけではなく、組織側の硬直した対応にある場合も少なくありません。
まず大切なのは、組織側に明確な落ち度がある場合、それを素直に認め、適切に謝罪し、改善策を明示することです。ミスを過度に隠そうとすると、相手の不信感を招き、追及が厳しくなります。誤った対応を認めることは勇気のいることですが、誠実な姿勢を示すことで、多くの問題は早期に収束します。
一方で、対応できない要求に対しては、明確に拒絶する必要があります。「できないものはできない」とはっきり伝えず曖昧な返答をしてしまうと、相手は「交渉すれば通るのではないか」と期待し、要求をエスカレートさせてしまいます。柔軟に対応すべき場面と、拒絶すべき場面を見極め、その線引きを組織全体で共有することが重要です。
また、顧客とのコミュニケーションにおいては、感情的な反応を避け、丁寧かつ冷静に対応する姿勢が求められます。とはいえ、柔軟な対応が可能であったにもかかわらず、あえて形式的なルールに固執してしまうと、不要な対立を生むことがあります。苛烈なカスタマーハラスメントの事例の多くには、どこかの段階で組織側が柔軟な対応を欠き、相手の感情を逆なでするような行動を取ってしまった面が見られます。
結局のところ、迷惑客の対応は「一律に硬い対応を取ればよい」「とにかく強気で押せばよい」という単純な話ではなく、認めるべき点は認め、拒絶すべき点は拒絶し、柔軟に対応できる点は柔軟に行うという、バランス感覚が不可欠だと言えます。
まとめ
迷惑客への提訴は、確かに強いメッセージを発する方法であり、違法行為に対しては法的責任を問うべき場面もあります。しかし提訴が行われる時点で、多くの場合すでに被害は深刻化しており、提訴自体が後手に回った対応であることは否めません。だからこそ、組織としては迷惑行為が深刻化する前の段階で、被害を最小限に抑えるための仕組みを整えることが不可欠です。
被害の拡大を防ぐためには、担当者を固定せず、負荷を分散させる仕組みや、マニュアルによる対応の線引きが有効です。対応可能な範囲を明確にし、必要以上に相手の要求に付き合わないことで、組織側の疲弊を防げます。また、一定のラインを超えた迷惑客には早期に弁護士を介入させ、現場の負担を取り除くことが現実的な対策となります。
さらに、組織側に落ち度がある場面では、隠さず誠実に向き合うことで、相手が不必要に攻撃的になることを防げます。一方で、対応できない要求に対しては、毅然と拒絶する姿勢が必要です。柔軟さと強さの両立こそが、迷惑客対応における本質的なバランスです。
提訴をゴールと捉えるのではなく、日常的な業務の中で迷惑行為を広げない体制を構築することこそ、組織を守る最も効果的な方法と言えます。
当センターでは官公庁のカスハラ対応も任された弁護士が、「被害の最小化」という観点で御社のカスハラ対応体制の整備にご協力いたします。下記よりお気軽にご相談ください。

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郵便局がミスをした職員に自転車での配送を命令

郵便局がミスをした職員に自転車での配送を命令
郵便局において、いわゆる「懲戒自転車」という風習があったことが問題視されています。これは、ミスをした職員に対して通常のバイク配達ではなく、自転車での配達を命じるというものです。一見すると単なる業務内容の変更のように映るかもしれませんが、その実態は厳しい懲罰的処遇に近いと指摘されています。特に、郵便配達は多くの荷物を扱い、さらに長距離移動が必要となる業務です。それを、バイクから自転車に変更するというのは、単純に移動手段が変わるだけでなく、大幅に身体的負担が増えるという意味を持ちます。夏場の炎天下や山間部での配達ともなれば、その負担は想像以上のものとなり、体力面のみならず精神面にも強いストレスがかかります。
こうした対応は、たとえ表向きが「業務命令」であったとしても、実質的に罰として機能してしまうと大きな問題です。本来、効果的な職場教育とは、業務改善や再発防止につながる建設的なものでなければなりません。ところが、このような懲戒的な手段が存在していた背景には、「ミスをした者には苦痛を負わせるべきだ」という古い価値観が根強く存在していたと考えられます。社会全体でハラスメントへの意識が高まっている中、こうした処遇が引き続き行われていたことは見過ごせない問題です。そこで本稿では、ミスに対するペナルティの正しいあり方を考え、より健全な職場文化について考察したいと思います。
ミスに対する対応は必要だが
ミスをした人に対して何らの対応も行わないというのは、組織として望ましい姿ではありません。ミスを放置すれば、同じ事態が再発し、顧客や会社全体に迷惑をかけてしまいます。そのため、ミスをした人に改善を促す仕組みを持つこと自体は必要です。たとえば子どもの教育では、危険な行為やルール違反に対して一定の罰を与え、行動を改めさせるという方法が取られることがあります。これにより、子どもは何が良く、何が悪いのかを理解します。
しかし社会人の教育において、罰だけが唯一の方法ではありません。社会人はすでに一定の判断能力と責任感を備えているため、対話や指導、フィードバックといった方法でも十分改善を促せます。特に、罰と感じる処遇が過度であれば、単にやる気を削ぎ、反発を生むだけです。また近年では、パワーハラスメント防止の観点が強調されるようになりました。業務改善のためと称しつつ、当人にとって過度の負担や精神的圧力となる対応は、パワハラと評価されるリスクがあります。社会人教育においては、罰ではなく、行動の改善を促すための支援や仕組みづくりが中心であるべきです。罰は一見手っ取り早い手法のように思えますが、実際には長期的な組織力向上につながりにくいものです。ミスが生じた背景には、本人だけでなく、業務フローや指導体制など組織全体の問題が存在することも少なくありません。責任追及に終始するよりも、改善と成長を目指す姿勢が求められます。
罰を楽しむ風土は危険
懲戒自転車が批判された背景には、単なる業務手段の変更という以上に、組織内で「ミスをした人が苦労する姿を見るのを面白がる」という風土があったといわれています。このような風潮は、職場における心理的安全性を著しく損ないます。他人の失敗や苦痛を笑う環境では、誰も本音を言えず、困りごとを相談できなくなってしまいます。さらに、ミスを恐れて新しいことに挑戦しなくなり、結果として組織全体の成長が阻害される危険があります。
また、こうした風土は、社内の序列に基づく上下関係を過剰に強化し、権限を持つ側が弱い立場の者に対して不適切な振る舞いを正当化する温床となります。たとえば、ミスをした若手社員に対し、必要以上に厳しい対応を取ることで、自身の優位性を誇示しようとするような行動が生まれかねません。このような組織では、ハラスメントが黙認され、やがて常態化してしまいます。結果として、優秀な人材が離れ、残るのは声の大きい者や強権的な態度を取る者ばかりになるという悪循環に陥ります。
組織の健全な発展のためには、ミスに対する寛容さとともに、改善に向けて協力し合う姿勢が不可欠です。「罰を楽しむ」風土を排除し、互いを尊重し、助け合う文化を育てることこそが、持続的な組織力向上につながります。
生産性の向上を意識せよ
懲戒自転車の最大の問題の一つは、生産性の低下を意図的に引き起こす点です。自転車での配達は、バイクに比べて明らかに効率が悪く、配達の遅延や顧客満足度の低下を招く可能性があります。本来、組織の目的は顧客に迅速で正確なサービスを提供し、信頼を獲得することです。そのために最適な手段や体制を整えるべきなのに、罰として生産性を下げる措置を取るというのは、組織の目的に反しています。結局、そのしわ寄せを受けるのは顧客であり、決して合理的な対応ではありません。
現代では、ほぼすべての業界で生産性向上が求められています。同じ時間でより高い成果を生み出すことは、企業競争力を高める上で欠かせない要素です。そのため、業務効率をあえて下げる懲罰的手法は、時代錯誤と言わざるを得ません。さらにミスに対する処遇は、評価制度を通じて適切に反映することで十分に効果を発揮します。昇進や昇給、業務配置といった仕組みを用いることで、社員は自身の行動が将来にどう影響するかを理解し、改善に取り組む動機づけになります。
罰を与えることで一時的に素行を正したように見えても、根本的な改善にはつながりません。それどころか、反発心や不信感を生む可能性が高く、結果として組織全体のパフォーマンス低下につながります。生産性を重視する時代において、非合理な罰は極力避け、合理的で建設的な改善策を講じることが重要です。
前に向く施策を
ミスをゼロにするという理想は理解できますが、それ自体が目的になってしまうと本末転倒です。企業の使命は顧客に価値を提供し、収益を得て持続的に発展することにあります。その中でミスを最小化することは手段であり、目的ではありません。ミスが発生した場合、最も重要なのは、それをどう挽回し、信頼を回復するかという視点です。この観点が欠け、ミスを責めることに重点が置かれてしまうと、社員は恐怖心から萎縮し、積極的な提案や挑戦が生まれなくなります。
ミスを責め立てるのではなく、ミスをきっかけにして学び、改善につなげる制度が望ましいです。たとえば、ミスの原因をチームで共有し、再発防止策を議論する場を設けることは、建設的な取り組みと言えます。また、ミスをした人に対して過度な批判を行うのではなく、「どう立て直すか」「次にどう活かすか」を考えさせ、行動につなげる支援を行うことが重要です。
企業の中には、反省文や懲罰的業務といった対応を重視する文化が依然として存在します。しかし、これらは短期的には効果があるように見えても、長期的には不信感とストレスを増幅させ、職場環境を悪化させます。後ろ向きなアプローチではなく、社員のポテンシャルを引き出す前向きな制度こそが組織力を高めます。自信を奪うペナルティよりも、再起を促す機会を与える方が、結果として企業の利益につながります。
まとめ
懲戒自転車のような制度は、時代錯誤であり、現代の企業において決して許容されるべきではありません。ミスをした人を罰することで一時的に秩序を保つように見えるかもしれませんが、長期的には組織の健全性を損ない、生産性を低下させる危険性があります。ミスに対する対応は必要ですが、それは罰ではなく、改善と再発防止を目的とした建設的な方法であるべきです。
さらに、罰を楽しむ風土は、ハラスメントを助長し、心理的安全性を損ないます。社員が安心して働き、挑戦できる環境を整えることが、持続的な発展の鍵です。ミスを責めるよりも、どう立ち直るかを支援し、前向きな取り組みを促す文化を育てることが求められています。組織の目的は懲罰ではなく、価値創造です。そのためにも、建設的で合理的な人材育成と評価の仕組みを整え、未来志向の職場を築くことが重要です。
当センターではこのようにハラスメントになりがちな組織風土を極力前向きに変化させるべく、様々な観点から御社の課題解決手法を共に考えます。下記よりお気軽にご相談ください。

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新型ハラスメントには社内でこう対応せよ

様々な新型ハラスメント
ハラスメントという言葉が社会で一般化して久しいですが、かつてはセクシュアルハラスメント(セクハラ)やパワーハラスメント(パワハラ)が中心的な議論の対象でした。ところが近年、職場環境や働き方の変化に伴い、その範囲は驚くほど拡大しています。たとえば「フキハラ(不機嫌ハラスメント)」は、上司や同僚がいつも不機嫌な態度で接することで、周囲が気を遣い萎縮してしまう状況を指します。「テレハラ(テレワーク・ハラスメント)」は、リモート勤務中にカメラのオン・オフを強要したり、勤務時間外に私的な連絡を繰り返すなど、テレワーク特有の問題です。また、「オワハラ(就活終われハラスメント)」や「スメハラ(スメルハラスメント)」のように、業務とは直接関係のない領域にまでハラスメントの概念が拡大しています。
このように新型ハラスメントが次々に登場する背景には、働く人々の価値観や感受性の多様化があります。昔は「それくらい我慢するのが社会人」とされていたことでも、現代では精神的な負担として受け止められることが増えています。特にSNSの普及によって、他社で起きた事例が瞬時に広まり、「あれもハラスメントらしい」「これも問題だ」と認識が広がりやすくなりました。
企業としては、こうした社会の変化を無視するわけにはいきません。ハラスメントの放置は、従業員の離職、職場の士気低下、ひいては企業の評判悪化につながるリスクがあります。一方で、全ての行為をハラスメントとして取り締まるのも現実的ではありません。何を「問題行為」として定義し、どこまで対応するかという線引きは、企業ごとに異なる慎重な判断が必要です。本稿では、この複雑な問題に対して、企業がどのように現実的かつ誠実に社内対応を進めるべきかを、段階的に考えていきます。
程度や受け止め方の問題も
企業の中では、しばしば「誰が成果を上げているか」「どの部下が成長していないか」といった話題が自然に出ます。チームの成績を上げるための意見交換が、気づけば特定の社員への陰口や批判に発展してしまうことがあります。そして、それを耳にした本人や第三者が「これはハラスメントだ」と感じるケースは少なくありません。
ここで難しいのは、「悪口」と「正当な指摘」の線引きが非常に曖昧なことです。たとえば「彼は仕事が遅い」という一言も、指導の一環であれば問題ありませんが、場の空気や言い方次第では侮辱的に受け取られます。相手の表情、声のトーン、発言の頻度、文脈など、細かい要素によって印象は大きく変わるのです。しかも、人によって耐性や感じ方も違います。同じ言葉でも笑って受け流せる人もいれば、深く傷ついてしまう人もいます。つまり、ハラスメントの判断は、客観的な基準よりも主観の要素が強く、非常に繊細です。
ただし、こうした問題に対し、企業が「一切の悪口を禁止する」「会話を録音して監視する」といった過剰な対応をとれば、今度は社員が萎縮し、職場の活気を失う恐れがあります。職場とは、人が集まり、時には愚痴も交わしながら仕事を進める場所です。すべてを制限してしまえば、自由な発想や人間的な交流が失われてしまいます。
重要なのは、「程度」と「頻度」、そして「対象の限定性」です。特定の人を繰り返し名指しで批判したり、会話の大半が誰かの否定ばかりになっているようであれば、それはもはや健全な職場とは言えません。そうした空気を察知した時点で、管理職は介入し、コミュニケーションの健全化を図る必要があります。このように、悪口に関する問題は、単なる言葉の問題にとどまらず、職場全体の雰囲気づくりと密接に関わる課題です。
何が嫌なのか
ハラスメント対応の基本は、被害者の「嫌だ」という感情を出発点とすることです。たとえ加害者に悪意がなくても、受け手が苦痛を感じた時点で、ハラスメントと認定される可能性があります。これはセクシュアルハラスメントの基本的な考え方であり、現代のハラスメント全般に共通する視点です。
ただし、職場で働くということは、ある程度の精神的負担を伴うものでもあります。仕事上の叱責、プレッシャー、ミスの指摘など、誰もが少なからず嫌な思いを経験します。ここで大切なのは、「その嫌なことが、業務上避けられない指導か、それとも不要な精神的圧迫か」を冷静に見極めることです。つまり、嫌という感情があっても、それが全てハラスメントに該当するわけではありません。
また、新型ハラスメントの多くは、他社で起きたトラブルから命名されたものであり、必ずしも自社でも同じ構造が当てはまるとは限りません。企業が取るべき姿勢は、「他社が問題にしたから自社も同じ対応を」と安易に追随することではなく、自社の職場文化と人間関係の中で何が問題なのかを独自に見極めることです。
従業員の中には、自分がなぜ不快に感じているのかを言葉にできない人もいます。そのため、企業側が「どんな場面で、どんな気持ちになったのか」を丁寧に聞き取ることが必要です。「あいつは神経質だ」「一人だけ文句が多い」といった決めつけで片づけてしまえば、問題の根が見えないまま不満だけが蓄積します。人が何に苦痛を感じるかは千差万別です。その多様性を理解し、苦痛の原因をきちんと把握することが、ハラスメント対応の第一歩です。
苦痛があるなら解消を試みる
従業員の苦痛がどこにあるのかを把握したら、次はその苦痛をどうすれば減らせるかを検討する段階に入ります。このときに大切なのは、「すぐに完璧な解決を求めない」姿勢です。ハラスメント対策の本質は、問題を根絶することではなく、現実的に軽減する工夫を重ねることにあります。
たとえばフキハラ(不機嫌ハラスメント)を例にとると、「上司に不機嫌な態度をやめさせる」というのは容易ではありません。感情の制御は誰にとっても難しいものです。しかし、上司が不機嫌になるタイミングや要因を把握すれば、その時期に部下と接触させない、業務連絡を減らす、代替の報告ルートを設けるといった現実的な対応が可能です。つまり、行動を直接変えるのではなく、「接触機会」や「環境」を工夫することで、摩擦を減らす方向に持っていくわけです。
また、悪口ハラスメントのように会話内容を統制するのは現実的に難しく、監視社会のような職場を作ってしまえば逆効果です。そのため、社員同士が互いに配慮しあえる文化を育てる方が長期的には効果的です。具体的には、定期的な意見交換会や心理的安全性に関する研修を設けることで、職場の空気を少しずつ変えていくことができます。
さらに、対策を講じる際には「費用対効果」も無視できません。莫大なコストをかけて監視システムを導入するよりも、小さな調整で職場の雰囲気が改善することも多いのです。ハラスメント対策は決して無理をするものではなく、「実行可能な範囲で苦痛を減らす工夫」を積み重ねることに意味があります。小さな変化でも従業員が「会社は自分の声を聞いてくれている」と感じれば、それだけで信頼関係は大きく前進します。
申告に対してゼロ回答しない
従業員からの不満やハラスメント申告は、経営層が普段気づけない組織の問題を知る絶好の機会です。にもかかわらず、上司が「そんなの気にするな」「大したことない」と取り合わず放置してしまうケースが後を絶ちません。このような対応、いわゆる「ゼロ回答」は最悪の結果を招きます。申告をした本人は、「会社に言っても無駄だ」と感じ、今後は黙って我慢するようになります。その沈黙が積み重なると、自然退職やサイレント退職(働いてはいるが意欲を失う状態)が増え、組織の活力が失われていきます。
対照的に、企業が申告を真摯に受け止める姿勢を示せば、従業員の信頼は大きく高まります。仮にすぐに解決できない問題であっても、「今後の対応を検討する」「調査を行う」「改善策を探している」といったリアクションを明示するだけで、安心感は格段に違います。社員は「自分の声が届いた」と実感できることが最も重要です。
また、対応を担当する人材にも配慮が必要です。相談担当者が加害者と近い立場にあったり、感情的な対応をすれば、公正性が疑われてしまいます。第三者的な視点を持つ総務部や外部カウンセラーを窓口にするなど、制度設計そのものも信頼性の鍵を握ります。
さらに、申告後に報復や人間関係の悪化が起きないよう、情報管理の徹底も不可欠です。相談したこと自体が不利益につながるようでは、誰も声を上げなくなります。企業がこの点にまで注意を払い、誠実な姿勢を見せることが、長期的な職場安定につながります。
まとめ
新型ハラスメントは、社会の変化とともに次々と形を変えています。企業はそのすべてに一律の対応をとることはできませんが、少なくとも「従業員が何に苦痛を感じているのか」を丁寧に把握する努力は怠ってはなりません。表面的なルール整備よりも、現場で実際に起きている不満や違和感を拾い上げる姿勢こそが、真のハラスメント対策の基礎です。
そして、把握した苦痛には、可能な限り現実的な方法で解消を試みることが求められます。完璧な制度を作ろうとするよりも、現場の知恵と柔軟な工夫を積み上げていくほうが、結果として大きな効果を生みます。何より大切なのは、従業員からの声に「ゼロ回答」をしないこと。どんなに些細な意見でも軽視せず、誠実に対応する企業姿勢が、信頼と安心を築く基礎となります。
新型ハラスメント対策とは、単にリスクを避けるための防衛策ではありません。むしろ、従業員一人ひとりの感情に耳を傾け、誰もが安心して意見を述べられる職場文化を育てる取り組みです。これを通じて企業は、健全で風通しのよい組織へと進化していくことができます。
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仕事のミスと納期遵守の調整方法

対外納期は絶対。ここでミスが発生した際どうする?
企業活動において、対外的な納期は取引先との信頼関係を支える最重要の要素です。どれほど素晴らしい商品やサービスを提供していても、約束の期日を守れないとなれば、その信用は一瞬で崩れてしまいます。納期遵守は、取引を継続する上での最低限のルールであり、企業の競争力の基盤でもあります。特に現代は、納品遅れがすぐにSNSや口コミで拡散し、信用失墜が大きな損失へ直結する時代であるため、納期を「絶対」として意識することは欠かせません。
しかし、人間が行う業務において、ミスが一切発生しない状況を作ることは不可能です。注意を重ねても、計算や入力の誤り、確認漏れ、あるいは体調不良や想定外のトラブルによってミスは起き得ます。問題は、そのミスが納期遵守に直結する場合です。たとえば、必要なデータを誤って削除してしまったり、重要な工程を見落としたりすることで、完成品の提出が危ぶまれることもあります。
このような状況下で最も避けるべきは、納期を守ることだけを優先するあまり、対応が歪んでしまうことです。具体的には、責任追及が先立ち、部下や同僚に過大な業務を押し付けたり、残業や休日出勤を強要したりする行為が見られます。これは一時的に納期を間に合わせたとしても、職場の信頼関係や従業員の健康を損なうことにつながり、長期的には組織全体のパフォーマンスを低下させます。さらに、度を越えればパワハラとして法的な問題に発展しかねません。
したがって、納期遵守とミスへの対応をどのように調整するかは、現場のマネジメント力が試される部分です。単なる精神論で「頑張れ」と押し切るのではなく、発生したミスを冷静に把握し、影響の範囲を明確化し、どのように納期と折り合いをつけるかを判断しなければなりません。そこで本稿では、この調整のあり方を、上司や部下がミスをした場合など具体的な場面に即して検討していきます。
上司がミスをした場合の対応
組織の中で上司がミスを犯すことは、決して珍しいことではありません。特に期限管理の誤りや、優先順位の見誤りといったケースは多く、これが納期に影響を及ぼすことがあります。問題なのは、上司という立場にあるため、部下からは指摘しにくく、責任の所在も曖昧になりやすい点です。さらに悪い場合には、上司自身がミスを隠そうとし、部下に無理な業務を押し付けて帳尻を合わせようとする行動に出ることがあります。これは明確なパワハラであり、組織に深刻な悪影響を及ぼします。
正しい対応は、まず上司が自らミスを認めることです。ミスを認めることは勇気を要しますが、これを怠れば状況はさらに悪化します。上司が責任を回避したり、部下にしわ寄せをしたりすると、職場の信頼関係は壊れ、離職やモチベーション低下といった長期的な損失を招きます。したがって、誠実に現状を開示し、どうリカバーするかを組織として考えることが重要です。
次に行うべきは、上位者や関係部署への速やかな報告です。上司一人で抱え込むのではなく、組織のリソースを活用して解決を図ることが欠かせません。場合によっては、取引先に対して納期延長を依頼する必要も出てきます。もちろん、納期延長の依頼は信用低下につながる可能性がありますが、隠蔽して無理に間に合わせようとするよりも誠実さが伝わりやすいものです。むしろ、事情を正直に説明し、再発防止策を提示することは、信頼を取り戻すきっかけとなることもあります。
つまり、上司がミスをした場合には、個人で解決を図るのではなく、組織としてオープンに対応する姿勢が求められます。責任ある立場だからこそ、透明性を確保し、部下を守る行動を取ることがリーダーシップの本質であるといえるでしょう。
部下がミスをした場合の対応
部下が業務の中でミスを犯すことも日常的に起こり得ます。例えば、データの入力ミス、提出書類の誤記、あるいは顧客への伝達忘れなど、些細なものから大きな影響を与えるものまで幅広い形で発生します。この場合、上司のミスとは異なり、責任の所在が比較的明確であるため、部下に対して挽回を強く求めがちです。しかし、この「挽回の強要」は危険であり、パワハラにつながりやすい行為です。
部下個人にミスの責任を押し付け、残業や休日出勤でリカバーさせようとする対応は、一見合理的に見えるかもしれません。しかし、それはあくまで短期的な効果に過ぎず、本人の心身への負担が蓄積し、離職や生産性低下を招くリスクがあります。そもそも、ミスは組織全体の業務プロセスの中で発生するものであり、必ずしも個人だけに責任を帰することは正しくありません。
重要なのは、まず組織全体でどのようにミスをカバーできるかを考えることです。業務の分担を調整し、他のメンバーがサポートに入ることで、納期遵守を図ることが可能な場合は少なくありません。責任の追及は後回しにし、まずは取引先との約束を守るために最適な対応を検討することが肝心です。
もちろん、部下のミスをそのまま放置するのは適切ではありません。責任は最終的に評価の中に組み込み、適切に反映させる必要があります。つまり、業務の場で感情的に責め立てるのではなく、冷静に事実を評価のプロセスに持ち込むことが正しい対応です。これにより、本人に改善を促しつつも組織としての健全性を維持できます。
部下のミスは、個人攻撃の対象ではなく、組織がどう成長できるかを考える契機となります。その観点を持つことが、健全な職場づくりの第一歩といえるでしょう。
ミスをするな!はパワハラ
納期遵守が強く求められる現場では、「ミスをするな」という言葉が飛び交うことがあります。確かに、ミスによって納期が遅延すれば信用失墜につながるため、指導者や管理者として強い口調になるのも理解できます。しかし、「ミスをするな」と一方的に叱責するのはパワハラに該当する可能性が高い行為です。
人間が業務を行う以上、ミスを完全にゼロにすることは不可能です。ミスをなくすことを前提とした要求は、実現不可能な命令であり、心理的な圧力をかける行為にあたります。このような環境では、従業員は萎縮し、報告や相談を避けるようになり、結果としてミスが隠蔽される方向に進んでしまいます。つまり、表面的には厳しく管理しているようでいて、実際にはリスクを増大させています。
正しいアプローチは、「ミスをするな」と脅すのではなく、ミスをできる限り減らす仕組みを作ることです。例えば、相互チェック体制を整え、二重の確認を徹底すること、あるいは定期的な研修を通じてスキルを底上げすることが考えられます。また、ミスの発生状況を数値で把握し、組織全体で改善策を検討することも有効です。こうした取り組みは従業員に安心感を与え、前向きな改善につながります。
さらに、ミスは相対的なものである点も忘れてはいけません。全くミスをしない人はいませんが、頻度や影響の大きさには個人差があります。したがって、叱責や罰で処理するのではなく、評価制度の中で公平に扱うことが重要です。努力や成果と同様に、ミスの有無や対応の仕方を評価に組み込むことで、自然と改善への意識が高まります。
結局のところ、「ミスをするな」という言葉は問題解決を妨げるだけでなく、組織を弱体化させるリスクを孕んでいます。必要なのは脅しではなく、建設的な仕組みづくりです。
ミスを少なくし、サポートする組織体制作り
ミスによって納期を守れない場合、その損害は非常に大きなものになります。顧客からの信頼を失うだけでなく、違約金や追加コストの発生など、金銭的な負担も伴います。そのため、組織としてはミスをゼロにすることを理想としつつ、現実的には「いかに減らすか」「いかにカバーするか」を両立させる体制が求められます。
まず必要なのは、ミスを責める風土を改め、チーム全体でサポートする文化を作ることです。誰かがミスをしたときに「なぜやったのか」と責任追及をするよりも、「どうすれば納期を守れるか」を考える方向に意識を切り替えることが重要です。これにより、従業員は安心して報告でき、早期にリカバー策を講じられるようになります。ミスを隠す文化が根付けば、問題はさらに深刻化するだけです。
次に、ミスを減らすための具体的な取り組みが必要です。チェックリストやフローの明確化、ITシステムの導入による自動化など、仕組みでヒューマンエラーを減らす工夫が有効です。さらに、教育や研修を継続的に行い、従業員のスキルを底上げすることも大切です。
ただし、ミスを防ぐ取り組みだけに偏ってはいけません。実際にミスが発生した場合に備え、チームで迅速にフォローできる仕組みを用意することが欠かせません。誰かが欠けても業務が回るようにマルチスキルを養成したり、情報共有を徹底したりすることが、納期遵守を実現する大きな力となります。
最後に、ミスに対して適切に評価を行うことを忘れてはなりません。ミスを繰り返す人とそうでない人を区別せずに扱えば、不公平感が生まれ、組織の士気が下がります。逆に、責め立てるだけでも改善は望めません。冷静に記録を残し、評価制度の中で適切に差を設けることで、個々人の成長と組織全体の健全性を両立できます。
まとめ
仕事における対外納期は、企業の信用を左右する絶対的な要素です。その一方で、人間が関わる以上、ミスを完全に排除することは不可能であり、現実には常に「納期」と「ミス」の間で調整が必要になります。重要なのは、納期遵守を最優先としつつも、その過程で不適切な対応を取らないことです。
上司がミスをした場合には隠蔽や責任逃れを避け、組織全体でオープンに対応することが求められます。部下がミスをした場合には個人に過度な負担を強いるのではなく、チームで支え合う仕組みを整えることが大切です。そして、「ミスをするな」といった実現不可能な要求で圧力をかけるのではなく、チェック体制や教育を通じて現実的にミスを減らす工夫が必要です。
最終的には、ミスをした人を責め立てるのではなく、早期報告とチーム全体でのリカバーを可能にする組織風土が鍵となります。さらに、ミスを適切に評価制度に反映させ、公平性を確保することで、従業員は安心感と改善意欲を持ちながら働くことができます。
納期とミスの調整は、単なる効率性の問題ではなく、組織文化や人材育成の課題でもあります。長期的な視点を持ち、誠実で健全な仕組みを築くことこそが、企業の持続的な成長につながるといえるでしょう。
当センターでは人財マネジメントの観点から従業員のミスを減らす取り組みと納期管理体制の構築を両立させるための方策をご提案させていただきます。下記よりお気軽にご相談ください。

当センターは、弁護士・公認会計士・中小企業診断士・CFP®・ITストラテジストなどの資格を持つセンター長・杉本智則が所属する法律事務所を中心に運営しています。他の事務所との連携ではなく、ひとつの窓口で対応できる体制を整えており、複雑な問題でも丁寧に整理しながら対応いたします。
窓口を一本化しているため、複数の専門家に繰り返し説明する必要がなく、手間や時間を省きながら、無駄のないスムーズなサポートをご提供できるのが特長です。
大阪府を拠点に、東京、神奈川、愛知、福岡など幅広い地域のご相談に対応しており、オンラインでのご相談(全世界対応)も可能です。地域に根ざした対応と、柔軟なサポート体制で、皆さまのお悩みに親身にお応えいたします。
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カスハラ対応の指示がパワハラになっていませんか

ミスをした本人に顧客対応させるのは場合によってはパワハラ
近年、顧客から従業員に対する不当な要求や過剰な叱責が社会問題化しており、「カスタマーハラスメント(カスハラ)」という言葉も一般的に使われるようになりました。カスハラは大きなトラブルや契約違反だけでなく、ちょっとしたミスが発端となることも少なくありません。たとえば商品に軽微な不具合があった、納期の説明が一部不足していたといった些細な出来事が、顧客の強い不満や攻撃的な態度を引き出してしまうこともあります。
こうした場面で多くの職場では、「ミスをした本人が責任をもって最後まで顧客対応をするべきだ」という考えが根強くあります。実際、他の従業員も自らの業務で手一杯であり、対応に割く余裕がないことも多いため、このような方針は一見合理的に見えます。しかし、顧客にとっては「自分にミスをした張本人」が相手にいることで、好き勝手に言いやすい状況が生まれてしまうのも事実です。つまり、顧客側の苛立ちや攻撃性がさらに高まりやすく、本人にとっては大きな精神的負担となりかねません。
このような状態で本人に延々と対応をさせ続けることは、実質的に「見せしめ」となり、本人を追い詰める結果を招く危険があります。指導者や上司が「お前が悪いのだから自分でやりきれ」という指示を繰り返すと、それは本人の尊厳を損ない、組織的なパワハラに該当する可能性すらあります。もちろん、最初に顧客へ謝罪や説明をする場面では本人が関与する必要があるかもしれません。しかし、それを超えて延々と責任を押し付けることは妥当ではありません。カスハラの場面では、いかに本人の責任と組織としての対応を切り分けるかが重要であり、この判断を誤ると、内部で新たなハラスメントが生じるリスクが高まってしまいます。
そこで本稿では本人以外が対応して合理的にカスハラをおさめる方法を紹介します。
別の人が対応する合理性
カスハラ対応の現場では、状況に応じてミスをした本人から別の従業員へバトンタッチすることが有効です。特に同じ部署の同僚や上司が代わりに対応すると、顧客にとっては「別の立場の人」が出てきたという安心感や冷静さが生まれやすくなります。顧客も「ミスをした張本人」に対しては強い態度に出やすい一方で、別の人に対しては過度な非難をしにくい心理が働くためです。これは人間関係の基本的な心理作用であり、対応者を替えるだけでも大きな効果があります。
ただし、別の従業員が対応に入るということは、その人の本来の業務を一時的に止めることを意味します。結果的に労働生産性が低下するリスクは避けられません。組織としては、この「生産性の犠牲」と「顧客トラブルを適切に収束させる価値」とを天秤にかける必要があります。トラブル対応は目に見えにくい成果であるため、従業員自身も「本来の仕事をしていない」と感じてしまいがちですが、実際には会社にとって大切なリスクマネジメントの一部です。したがって、こうした代理対応の役割を果たした従業員に対しては、正当に評価へ反映させることが欠かせません。
さらに、この対応体制をあらかじめ部署内で共有し、誰がどのような場合に対応を引き継ぐのかを決めておくことも重要です。行き当たりばったりで人を割り当てると、不公平感が生まれ、組織全体の士気が低下する恐れがあります。合理的に代理対応を行うには、負担の分散と評価制度の整備を両立させることが求められます。
電話対応で対応の効率性を確保
カスハラを含む顧客対応を効率化する方法の一つとして、コールセンターを活用した電話対応があります。顧客の窓口を一元化することで、現場担当者が業務に集中でき、労働生産性を損なわずに済むという利点があります。現場で発生した小さなミスや誤解に基づくクレームも、まずは電話窓口で吸収する仕組みにすれば、業務全体の流れが止まることを防げます。
電話という間接的なコミュニケーション手段にも効果があります。顧客が直接対面している場合には感情が高ぶりやすく、強い言葉を投げつけてしまうこともありますが、電話越しであれば過剰な要求をするハードルが下がるといわれています。距離感を適度に保つことが、顧客と従業員双方にとって精神的な安全を確保する要素となります。
もっとも、電話対応は単純作業に見えて実際には大きな精神的負担を伴います。理不尽な要求を受けながら冷静に対応し続けるためには、相応のスキルや忍耐力が求められます。そのため、電話窓口のスタッフを「誰でもできる簡単な仕事」とみなして低賃金で雇用することは適切ではありません。むしろ、質の高い人材を確保するためには相応の処遇を与え、教育を行い、メンタルケアにも配慮することが不可欠です。電話対応の品質は企業全体の信頼を左右するため、その重要性を軽視せず、適切な投資を行う姿勢が求められます。
顧問弁護士に外注
カスハラの中には、単なる苦情や不満の表明にとどまらず、会社に深刻な損害を与える可能性がある案件も存在します。特に、暴言や脅迫を伴うケース、金銭的請求が法的な争いに発展しそうな場合、あるいは刑事事件に関わる恐れがある場合には、社内対応だけでは限界があります。このようなケースでは、顧問弁護士に対応を依頼することが極めて有効です。
弁護士は法律の専門家として、冷静に事実を整理し、証拠を確保しながら適切に対応を進めることができます。従業員が感情的に巻き込まれるリスクを排除できる点も大きなメリットです。また、顧客に対しても「弁護士が介入している」という事実が心理的抑止力となり、過剰な要求を控えさせる効果が期待できます。
もっとも、顧問弁護士は万能ではありません。すべての案件を外部の専門家に任せてしまえば、コストは膨大になります。したがって、どのような案件を弁護士に委ねるのかについて、あらかじめ社内で基準を策定しておく必要があります。基準が不明確なままでは、対応の一貫性を欠き、社内外に混乱を招く可能性があります。
顧問料は決して安価ではありませんが、企業に重大なリスクが生じる場面においては、その費用以上の価値をもたらすものです。経営者や管理職は「顧問料を節約する」という発想ではなく、「適切に弁護士を活用して企業を守る」という視点を持ち、必要な場合には積極的に外注する姿勢が求められます。
ノウハウを蓄積して社内にフィードバックを
カスハラ対応は、単にその場をしのぐだけでは不十分です。顧客からの不当な要求を退けたり、トラブルを収束させたりした後こそ、企業は次の一手を考える必要があります。カスハラが生じた原因を分析し、再発を防ぐ仕組みを整えることが欠かせません。
たとえば、ハラスメントのきっかけとなった「説明不足」や「小さな手違い」がなぜ起きたのかを検証し、業務品質を改善していくことが重要です。また、従業員がどのように対応すれば顧客の怒りをエスカレートさせずに済んだのか、逆にどのような言動が事態を悪化させたのかを整理し、マニュアル化して社内で共有する取り組みも有効です。成功事例や失敗事例を蓄積することで、従業員一人ひとりが経験を共有し、次の対応に活かすことができます。
さらに、このような情報をただ集めるだけでなく、研修や勉強会の形で従業員にフィードバックすることが大切です。現場でのリアルな事例をもとにした学びは、机上の理論よりも実践的であり、従業員の安心感にもつながります。組織全体として「カスハラを受けても孤立しない」「会社が一丸となって対応する」という文化を醸成することができれば、従業員の定着率や職場の士気も向上するでしょう。
つまり、カスハラ対応は一過性の防御策ではなく、組織の学習サイクルに組み込むべき課題なのです。そうすることで、ハラスメントが起きにくい環境づくりと従業員のメンタルヘルス維持の両立が可能となります。
まとめ
カスタマーハラスメントは、企業にとって避けがたい課題であり、その対応を誤れば従業員が二重に苦しむ事態を招きかねません。特に「ミスをした本人に最後まで対応させる」という方針は、一見合理的に思えても、本人を顧客からの攻撃にさらし続けることになり、パワハラの温床となる恐れがあります。状況に応じて別の人が対応したり、電話窓口を活用したり、さらには弁護士へ外注するなど、複数の手段を柔軟に組み合わせることが大切です。
また、対応の負担を担った従業員への正当な評価や、電話応対スタッフの処遇改善といった社内制度面での支援も欠かせません。そして何より、対応を通じて得た知見を組織に蓄積し、業務品質の改善や再発防止に役立てることが求められます。企業が従業員を守りつつ顧客との関係を適切に維持するためには、単なる場当たり的な対応ではなく、体系的かつ長期的な視点が必要です。
当センターでは、顧問弁護士と現場の最適な役割分担を通じたカスタマーハラスメントによる被害を最小化する組織体制の構築を提案させていただきます。下記よりお気軽にご相談ください。

当センターは、弁護士・公認会計士・中小企業診断士・CFP®・ITストラテジストなどの資格を持つセンター長・杉本智則が所属する法律事務所を中心に運営しています。他の事務所との連携ではなく、ひとつの窓口で対応できる体制を整えており、複雑な問題でも丁寧に整理しながら対応いたします。
窓口を一本化しているため、複数の専門家に繰り返し説明する必要がなく、手間や時間を省きながら、無駄のないスムーズなサポートをご提供できるのが特長です。
大阪府を拠点に、東京、神奈川、愛知、福岡など幅広い地域のご相談に対応しており、オンラインでのご相談(全世界対応)も可能です。地域に根ざした対応と、柔軟なサポート体制で、皆さまのお悩みに親身にお応えいたします。
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パワハラ研修はセクハラ研修と同じではない。では、どこが違う?

パワハラ研修を実施する企業が増加傾向。しかしその効果は?
近年、職場におけるハラスメント問題が広く注目される中で、特に「パワハラ(パワーハラスメント)」への関心が高まっています。部下が上司からの言動に対して「これはパワハラだ」と声を上げるケースは年々増加しており、それに伴って、パワハラ研修を導入・強化する企業も増えています。中には毎年定期的にパワハラ研修を行うことを社内ルールとし、全社員参加を義務付ける企業も少なくありません。
一方で、これまでにセクハラ対策を先行して導入していた企業では、「ハラスメント全般の研修」として、セクハラとパワハラをひとまとめに扱う形式を取ることも見受けられます。時間とコストの節約を図る合理的な措置と思われるかもしれませんが、実際には効果が限定的となる可能性があります。というのも、セクハラとパワハラでは性質が大きく異なり、研修の狙いや受講者に求められる行動変容も大きく異なるためです。
特に、パワハラは業務上の指導と密接に関係しており、単なる「禁止事項の列挙」では理解や改善につながりません。そのため、パワハラ研修を有効なものにするには、セクハラ研修とは異なる観点と構成が必要です。そこで本稿ではその違いを明確にしながら、パワハラ研修のあるべき姿について詳しく検討していきます。
セクハラは完全撲滅一択
セクハラ(セクシャルハラスメント)に関しては、企業としてのスタンスは非常に明快です。セクハラは一切容認されない行為であり、「ゼロ容認」が前提となります。理由は明白で、セクハラは個人の尊厳を傷つける行為であると同時に、刑事事件や民事訴訟に発展する重大なリスクを内包しているからです。実際、企業が関与したセクハラ事案が報道されると、信頼の失墜は避けられず、ブランド価値や株価にも影響を及ぼしかねません。
セクハラ研修では、「加害者に悪意があったかどうか」よりも、「相手がどう受け止めたか」が重視されることが強調されます。つまり、「冗談のつもりだった」「親しみを込めたつもりだった」といった言い訳は一切通用しないのです。だからこそ、研修では「セクハラと受け取られかねない言動すら慎もう」という、予防の視点に立った教育が重視されます。
また、セクハラには客観的な基準がある程度成立しており、具体例を示しやすいことから、研修プログラムとしても構築しやすい特徴があります。「飲み会での身体接触」「外見への不用意なコメント」など、明確なNG行為を列挙し、それを避けるよう指導すれば一定の効果が見込めるのです。つまり、セクハラについては完全撲滅という方針で問題なく研修を進めることが可能です。
パワハラは撲滅すればよいわけではない
パワハラ(パワーハラスメント)は、その名の通り「職権を背景にした不適切な言動」とされますが、その線引きはセクハラに比べて非常に曖昧です。なぜなら、業務上の指導や管理という行為が本質的に「相手にとって厳しいと感じられる可能性のあるもの」だからです。つまり、すべての叱責や注意がパワハラに該当するわけではなく、むしろ業務達成のためにはある程度の厳しさが求められることもあります。
そのため、パワハラを「完全に撲滅すべき行為」として一律に扱うことは現実的ではありません。極端な話になりますが、「部下に嫌な思いをさせないように」と過剰に配慮し、注意を一切行わない状態が続けば、業務の質は確実に低下します。納期の遅延、成果物の品質低下、チームの士気低下など、上司の役割放棄により組織全体が機能不全に陥るおそれすらあります。
もちろん、暴言や人格否定、継続的な無視などは明確にパワハラであり、許されるべきではありません。しかし、問題はグレーゾーンにあるのです。たとえば「早く終わらせろ」といった業務指示が、ある部下にはモチベーションになる一方で、別の部下には心理的負担と感じられることもあります。このように、パワハラの定義は一律ではないことに配慮が必要です。
パワハラは様々な要素のバランスをとって考える必要がある
パワハラ研修を効果的なものにするには、「禁止事項を覚える」形式では不十分です。むしろ、上司が適切なマネジメントを行うために、どのような言動が望ましいのか、具体的な状況ごとに考える「判断力の育成」が中心であるべきです。これはセクハラ研修とは大きく異なる点です。
たとえば、プロジェクトの納期が迫る中で、部下に対して厳しいトーンで指示を出す必要がある場合、表面的にはパワハラに見えるかもしれません。しかし、それが業務遂行のためにやむを得ない対応であり、人格否定を含まないものであれば、必ずしも不適切とは言えません。一方で、同じ言葉でも頻度や背景によってはパワハラと受け取られる可能性もあるため、研修ではその見極めを養う必要があります。
そのためには、ケーススタディの活用が有効です。「この言動はパワハラか否か」「代わりにどんな表現が適切か」といった問いを実際に考えることにより、抽象的な判断ではなく、実務に根ざした行動のあり方を学べます。
さらに、研修の中では「部下への配慮」と「業務上の責任」の両立が求められるという現実を正しく理解させる必要があります。このバランス感覚こそが、パワハラを防ぎながらも適切なマネジメントを実現する鍵となります。
様々な階層を混在させたグループワークが有効
パワハラ研修の効果を高めるためには、単なる座学や映像視聴といった受動的な学習では不十分です。特に効果が高いとされるのが、「様々な階層の従業員を混在させたグループワーク形式」の研修です。というのも、パワハラの問題は、立場や視点の違いによって受け取り方が大きく異なるからです。
たとえば、管理職の多くは「部下の成長を思って厳しく接している」と考えているかもしれません。しかし、部下の立場からすれば、その厳しさが威圧や恐怖と感じられていることもあります。自分の言動が他者にどう映っているのか、本人には見えにくいものです。だからこそ、立場の異なる者同士が意見を交換し合う場を設けることが、相互理解を深める鍵となります。
このようなグループワークでは、ある事例について「これはパワハラかどうか」をテーマにディスカッションを行うのが一般的です。すると、同じ言動に対して「当然の指導」と捉える人と、「これは萎縮してしまう」と感じる人が出てきます。この意見の違いこそが、研修における最も貴重な学びの材料なのです。
さらに、グループに階層的な多様性を持たせることで、業務上の責任や期待、部下の感じる不安や困惑といった現場のリアルが浮き彫りになります。結果として、「パワハラとは何か」という定義を表面的に学ぶのではなく、自社の組織文化や職場環境に即した理解が進むのわけです。
このような形式は、受講者の主体的な関与を促し、記憶への定着も促進します。職場で実際にパワハラの兆候を見かけた際、自分の行動や発言をふと振り返るきっかけとなることも少なくありません。パワハラ防止は一人ひとりの意識の積み重ねによって初めて実現するものであり、他者との対話を通じてその意識を高めていくことが研修の本質的な目的となります。
まとめ
セクハラとパワハラは、どちらも職場における重大な問題であり、企業として対応が求められる点では共通しています。しかし、それぞれの性質や対処のアプローチには明確な違いがあります。セクハラは「一切許容しない」という方針が基本であり、明確な禁止行為を定め、予防に徹する研修が効果的です。
一方で、パワハラには業務上必要な指導との線引きが常に問われます。すべての厳しい言動を禁止してしまえば、上司のマネジメント力が著しく損なわれ、組織としての生産性が低下してしまうおそれがあります。そのため、パワハラ研修では「禁止一択」ではなく、ケースバイケースでの判断力やバランス感覚を養うことが重視されるのです。
また、職場でのパワハラに関する認識は、立場によって大きく異なります。このため、研修では異なる階層の社員が意見を交わす場を設け、立場を超えた相互理解を深めることが不可欠です。グループワークやディスカッションはそのための有効な手段となります。
結局のところ、パワハラ防止とは、相手の気持ちを尊重しつつも、業務の質を落とさずに成果を出すという、難しいバランスを実現する努力にほかなりません。画一的な対応ではなく、企業ごとの風土や文化に応じた柔軟なアプローチこそが、持続可能で実効性のあるパワハラ対策につながっていきます。
当センターではこうしたハラスメント対策について組織風土やパワーバランスなどをふまえて最適な効果を発揮できるよう各社毎にカスタマイズした対応をご提供しております。下記よりお気軽にご相談ください。

当センターは、弁護士・公認会計士・中小企業診断士・CFP®・ITストラテジストなどの資格を持つセンター長・杉本智則が所属する法律事務所を中心に運営しています。他の事務所との連携ではなく、ひとつの窓口で対応できる体制を整えており、複雑な問題でも丁寧に整理しながら対応いたします。
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初回相談は無料、事前予約で夜間休日の相談にも対応可能です。どうぞお気軽にご相談ください。
