労働審判への対応

1 労働審判とは

労働審判制度は、労働者と企業(使用者)の間で発生したトラブルを、通常の裁判よりも迅速かつ柔軟に解決することを目的とした制度で、2006年に導入されました。

目的

労働者と使用者の間の個別労働紛争(たとえば、解雇や賃金未払いなど)を、スピーディーに解決する。

担当する機関

地方裁判所(各地の「本庁」のみで取り扱い)

通常の裁判との違い

  • 裁判官1名と労働関係の専門家(労働審判員)2名が関与
  • 原則として3回以内の審理で解決を目指す
  • 柔軟な解決(調停)を重視
  • 調停が成立しない場合、裁判所が「審判(判断)」を下す
  • 審判の内容に不服がある場合は2週間以内に「異議申立て」が可能

2 令和5年の労働審判・訴訟の件数と傾向

  • 新規受付件数:​3,473件(前年より265件増加)
  • 調停成立率:​68.8%(4年連続で7割を下回る)
  • 第一審通常訴訟の新規受付件数:​3,763件(前年より464件増加、平成4年以降で2番目の多さ)
  • 訴訟の和解率:​60.5%(前年の52.8%から大幅に増加)​
引用:令和5年の司法統計(最高裁判所事務総局)

3 労働審判で争われがちなケース

  • 労働者の地位の確認
  • 残業代や退職金の未払い
  • パワハラ・セクハラ
  • 労働条件の不利益変更
  • 出勤停止や降格などの処分に関する紛争

4 労働審判の件数増加の背景事情

(1)労働者の権利意識の高まり

近年、労働者が自身の権利や労働条件に対する意識を高めており、不当な扱いや労働条件の変更に対して声を上げるケースが増えています。​これにより、労働審判を通じて解決を求める動きが活発化しています。​

(2)非正規雇用の増加と雇用形態の多様化

非正規労働者の増加や多様な雇用形態の導入により、労働条件や雇用契約に関するトラブルが増加しています。​特に、契約更新の拒否や雇止めなどが争点となるケースが多く見られます。​

(3)企業の人事労務管理の個別化

企業の組織再編や人事制度の見直しにより、個別の労働契約や処遇が増えています。​これに伴い、労働者と企業間での認識のズレやトラブルが発生しやすくなっています。​

(4)労働審判制度の認知度向上

労働審判制度が導入されてから時間が経過し、労働者や企業の間でその存在や利用方法が広く知られるようになりました。​これにより、労働審判を利用するケースが増加しています。​

労働環境の変化や働き方の多様化が進む中で、労働審判制度の役割はますます重要になっています。​労働者と企業の双方が制度を正しく理解し、適切に活用することで、労働トラブルの迅速な解決が期待されます。

5 調停成立率は向上せず、訴訟上の和解率が増加傾向

上記2のデータに示される通り、労働審判の申立が増加していますが、審判手続内での調停成立率はあまり高くなく、逆に訴訟における和解成立率が上昇している傾向があります。

これはあくまで推測ですが、労働審判における調停成立率が上がらないのは、3回という限られた期日の中では、当事者が十分な攻撃防御を尽くせていない可能性があり、訴訟の中で主張のやりとりをしていく中で事件の全体像が明らかになり、当事者の言い分も全て言い尽くせることが1つ理由であると考えられます。

6 労働審判の対応において顧問弁護士を活用するメリット

(1)法律の観点で効果的な主張を的確にまとめ、証拠も整理できる

労働審判では、労働法規に関する高度の理解を前提に、短い期間で自らの主張を漏れなく、それでいて簡潔にわかりやすくまとめる必要があります。また、自らの主張を裏付ける証拠を漏れなく提出する必要があります。

こうした主張・立証は労働法規に詳しい弁護士の得意とする活動であり、労働審判を有利に進めるためには、顧問弁護士を積極活用することが有効です。

(2)限られた回数の期日において、企業側がなすべき主張・立証を網羅できる

労働審判においては、期日の回数が少ない分、訴訟に比べてスピード感が求められます。訴訟であれば、毎回の期日で裁判官と言葉を交わす中で、裁判官の顔色を伺いながら戦略を考えることもできますが、労働審判では最初に戦略を立てたうえで、各期日までに何をすべきかスケジューリングをしてしまう必要があります。

これも、労働法規に詳しい顧問弁護士が得意とする活動であり、その活用が有効です。

(3)今後の審判申立件数の増加の可能性

「退職代行業者」の利用が急速に広まっている通り、最近では従業員がちょっとしたことですぐに辞めてしまいます。そして、ただ辞めるだけでなく、未払残業代やハラスメント行為に対する慰謝料請求などを主張するケースが増加傾向にあり、退職者側から労働審判を申し立てるケースが増加傾向にあり、今後さらに増加しそうです。

こうして労働審判を申し立てられる件数が増加すると、とても社内の人材だけでは対処できず、外部専門家を頼らざるをえません。労働法規に詳しい顧問弁護士と契約しておくと、この問題は解決することができます。

7 当センターの活用をお勧めする3つの強み

(1)労働法規に対する高度の理解を駆使して御社のリスク低減を試みます

退職した社員の労働問題は、正社員のそれよりも各段に難しいです。しかし、退職した社員を軽視しがちの企業風土があったり、リスクは高くないと判断してしまうと、どうしても退職社員とのトラブル対応が後手に回りがちです。

そこで、退職社員とのトラブル対応は労働法に詳しい顧問弁護士に任せるのが得策です。当センターでは労働法規に対する高度の知見を活かして御社の課題を解決します。

(2)人手不足の解消と、法務リスクの調和点を探し出します。

昨今、どこの業界でも人手不足です。さらに、賃上げの傾向も強まっていますが、ここがおざなりになっているため、労働審判で金銭請求される企業は増加しています。しかし、企業への貢献度の高い人材なら賃上げや残業代の満額支払を拒む理由はありませんし、貢献度の低い人材が賃上げするなら喧嘩別れもやむなしでしょう。

当センターでは、人手不足や賃上げのお悩みにも配慮しつつ、その中でどのように法務リスクを低減するかを多角的に検証し、御社に最適な解決策を探し出します。

(3)人財マネジメント全般の観点からより良い解決策を提案します

当センター長は、京都大学経営管理大学院で人財マネジメントを副専攻し、当該分野に深い知見を有しています。また、官公庁の内部弁護士として面倒くさい方たちとの折衝を数多く行ってきました。

さらに、当センター長はフットワークが軽く、全体戦略の策定にも定評があります。スピード感の求められる労働審判において、早い段階で全体的な戦略を設計の上、各期日において効果的な主張・立証を行い、御社の利益を確保し、リスクを最小限に抑えます。

労働審判を任せる顧問弁護士をお探しの企業様は是非、当センターにお気軽にご相談ください。

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