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1 債権回収における継続的なモニタリングの意義
債権回収における継続モニタリングの重要性は、債務者の状況をリアルタイムで把握し、早期に対応を取ることで回収リスクを最小限に抑えることにあります。
以下に、具体例とともにその意義を紹介します。
(1)債務者の財務状況の変化を早期に把握できる
ある中小企業に売掛金がある取引先が、突然売上不振で資金繰りが悪化し始めた際に、継続的に決算情報や信用調査レポートをモニタリングしていたことで、赤字転落の兆候を早期に察知し、支払いサイトの短縮や担保の要求といった予防措置を講じることができたケースがあります。
(2)支払い遅延の兆候を見逃さず、迅速にアクションを取れる
債務者が毎月の支払い日に遅れがちになっていた。モニタリングで支払い遅延の傾向が把握され、すぐに督促を強化し、さらに、分割払いへの変更など柔軟な対応を検討することで、回収不能リスクを回避できたケースがあります。
(3) 業界・市場全体の変動に応じてリスクを評価し直せる
建設業界全体が原材料高騰の影響で収益悪化傾向にあることを業界ニュースや市場レポートから継続的に把握していたため、取引先の与信枠を見直し、回収不能となる前に回収強化策を講じることができたケースがあります。
(4)法的手段のタイミング判断に役立つ
継続モニタリングの中で、債務者が複数の債権者に対して支払い遅延を起こしている情報を入手し、破産リスクが高まっていると判断して、他の債権者よりも早く法的手段に出ることで、優先的に回収を実現できたケースがあります。
(5)信用情報や取引履歴からのパターン分析で予測が可能
AIを活用した信用スコアのモニタリングで、過去のデータから「〇〇という行動を取った後にデフォルトした債務者が多い」といったパターンを検出したため、早期警告のサインとして活用し、リスク管理を強化したケースがあります。
(6)まとめ
継続モニタリングは、債権回収において、早期警戒と迅速な対応、情報に基づいた判断と柔軟な対応策、回収可能性を高める優先順位付けなどの面において大きな意義があります。特に、長期にわたる取引や分割払いの契約などでは、債務者の変化を常に把握しておくことが、債権回収成功のカギとなります。
2 債権回収において顧問弁護士を活用するためのポイント
継続モニタリングの結果は、顧問弁護士による債権回収手続において、以下のようなかたちで活用されます。
(1)法的措置のタイミングを判断する
債務者の支払い遅延や財務悪化の兆候をモニタリングで把握し、任意回収と法的回収の境界を弁護士が判断するのが有効です。
例えば、「債務者が複数の支払いを止めている」「信用格付けが急落」といった情報をもとに、仮差押えや訴訟の準備に入るタイミングを顧問弁護士がアドバイスすることができます。
(2)法的リスクの評価と契約条件の見直し提案
モニタリング結果から見える債務者の経営不安や業界リスクを踏まえて、今後の契約条件の見直しなどの提案を顧問弁護士が行うのが有効です。
例えば、継続的なモニタリングで「債務者の資産が減少傾向」にあると判明した場合、今後の取引について、担保設定や保証人の追加を契約書に盛り込むよう顧問弁護士が助言することができます。
(3)債権保全の提案(担保・保証・債権譲渡など)
債権の不良化リスクが見えてきた段階で、債権保全策の実行を顧問弁護士提案する(たとえば、動産譲渡登記、債権譲渡登記、連帯保証契約の締結など)のが有効です。
例えば、モニタリングで判明した資金繰り悪化情報をもとに、「この債権は保全しておくべき」と判断し、 債権譲渡契約のドラフト作成を顧問弁護士が行うことができます。
(4)交渉材料としての活用
顧問弁護士が債務者側と交渉する際に、モニタリング結果(遅延履歴、支払い能力など)を交渉材料として提示し、支払条件の合意を有利に導く。
例えば、「御社が他社にも同様の未払いをしていることは把握しております」など、客観的な情報をもとに、一括返済または和解案を引き出す交渉を展開することができます。
(5)破産や民事再生など法的手続きの予測と準備
モニタリングによって、債務者が破産・再生などの手続きを検討している兆候を握し、債権届出や債権回収戦略の事前準備を行うこともあります。
例えば、「従業員給与の支払いが遅れている」「訴訟件数が増えている」といった兆候から、破産申立ての可能性を予測し、配当請求に備えることができます。
(6)顧問弁護士との連携でモニタリングの価値が倍増
企業が独自にモニタリングをしていても、それを法的にどう活かすかは専門家の知見が必要です。顧問弁護士に早期共有することで、専門家の知見でその情報を解析し、手遅れになる前に回収策を実行する、契約レベルで予防策を講じる、トラブル時の対がスムーズになるなどの効果が得られます。
3 当センターを活用するメリット
当センター長は、債権回収や倒産手続について20年以上のキャリアを有し、かつ、公認会計士として財務状況の把握や分析が得意です。そのため、取引先の継続モニタリング情報を正確に読み取り、取引先の実情に応じて最適な対応策を提案することにより、貸倒リスクと回収コストを同時に最小化することを試みます。
債権回収の見込みがないにも関わらず無駄に裁判したり、債権回収リスクが高いため早期に訴訟提起すべきであるにも関わらず話し合いを継続するなど、的外れな債権回収を行わないよう常に多角的に分析して最善策を模索しております。
債権回収のために弁護士との顧問契約の締結を検討されている企業様におかれましては、ぜひ、お気軽に当センターにご相談ください。