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多様な働き方が発展
どの業界においても人手不足は深刻な課題となっており、経営者や管理職の多くが「どのように人を補充すべきか」という点で頭を悩ませています。単に人数を増やせば解決する問題ではなく、業務内容やコスト、働き手の価値観など、複数の要素が複雑に絡み合っているためです。特に少子高齢化が進む中では、従来のように正規雇用を前提として人員を確保すること自体が難しくなっています。
正規雇用は安定的な労働力を確保できる一方で、採用コストや人件費、教育コストが高く、雇用調整も容易ではありません。そのため、人手不足に直面した企業が「正社員を増やせばよい」と単純に判断できる状況ではなくなっています。加えて、働き手側も必ずしもフルタイムでの正規雇用を望んでいるとは限らず、家庭事情や副業、自己研鑽などを理由に、短時間や柔軟な働き方を希望する人が増えています。
こうした背景のもとで注目されているのが、働き方の多様性です。短時間であっても能力のある人材を適切に配置できれば、業務の停滞を防ぎ、生産性を維持することが可能になります。重要なのは「長く働いてもらうこと」ではなく、「必要な時間に、必要な能力を提供してもらうこと」です。この発想に立つことで、人手不足に対する打ち手は大きく広がります。
そこで本稿では、短時間で働く人材や、従来の正規雇用とは異なる形態で関わる働き手について、類型ごとに特徴を整理し、それぞれのメリットとデメリットを紹介していきます。人手不足を嘆くだけで終わらせず、自社にとって現実的で持続可能な補充方法を考えるための視点を提示することを目的としています。
非正規雇用
人手不足への対応として、従来から最も多く活用されてきたのが非正規雇用です。パートタイム労働者や契約社員などが代表例であり、正規雇用と比べて勤務時間や契約期間に柔軟性を持たせやすい点が特徴です。特に、正規雇用での就労が難しい層を短時間限定で雇用できるため、多くの業界で人員確保の手段として用いられてきました。
非正規雇用は、賃金水準が比較的低く抑えられることから、いわゆるアンダークラスと呼ばれることもあります。しかし、雇用である以上、労働基準法や解雇規制が適用され、一定の条件を満たせば社会保険への加入義務も生じます。表面的には安価な労働力に見えても、実際には採用や管理にそれなりのコストがかかる点は見落とせません。
また、働き手側の手取りが少ないことから、仕事に対する責任感や帰属意識が十分に育たないリスクも存在します。もちろん個人差はありますが、賃金と責任のバランスが取れていない場合、重要な判断を伴う業務や長期的な改善活動を任せるのは難しくなります。その結果、正規社員がフォローに回らざるを得ず、かえって負担が増すケースもあります。
一方で、非正規雇用は一定の業務量を安定的に担ってもらえるという強みがあります。業務内容がある程度固定化されており、継続的な対応が必要な場合には、有効な選択肢となります。ただし、「コストが安いから」という理由だけで導入すると、期待した効果が得られない可能性があるため、役割設計と業務範囲の明確化が不可欠です。
アルバイト・日雇い
非正規雇用よりもさらに短時間での労働を前提とする形態として、アルバイトや日雇いがあります。これらは、必要なときに必要な人数だけ確保しやすい点が最大の特徴であり、繁忙期や一時的な業務量の増加に柔軟に対応できる手段として、多くの企業で活用されています。特に飲食業、小売業、物流業など、業務量の波が激しい業界では不可欠な存在となっています。
アルバイトや日雇いも法的には雇用であるため、労働基準法の適用を受けますが、労働時間が短ければ社会保険への加入義務が発生しない場合があります。この点は、企業側にとって固定的な人件費を抑えやすいという大きなメリットです。また、事前に長期間の教育や研修を行わなくても、業務内容を限定することで即日から戦力として稼働してもらえる点も評価されています。
一方で、アルバイトや日雇いに任せられる業務は、どうしても単純かつ定型的なものに限られます。業務の背景や目的を深く理解してもらうことは難しく、臨機応変な判断や責任ある意思決定を求めることは現実的ではありません。そのため、業務設計を誤ると、正規社員や管理職が常にフォローに回る必要が生じ、結果として現場の負担が増えることになります。
また、人の入れ替わりが激しいことから、業務指示やルールの徹底が難しくなる傾向もあります。毎回同じ説明を繰り返す必要が生じたり、品質にばらつきが出たりする点は、アルバイトや日雇いを多用する際に避けて通れない課題です。そのため、これらの働き方は「割り切って使う」ことが重要であり、業務内容を明確に限定したうえで活用することが求められます。
ギグワーカー・フリーランス
近年、人手不足対策として急速に存在感を高めているのが、ギグワーカーやフリーランスの活用です。これらは雇用関係ではなく、業務委託契約などに基づいて一定の成果物や役務を提供してもらう形態であり、従来の人材活用とは異なる柔軟性を持っています。IT、デザイン、広報、経理、法務補助など、その活用領域は年々広がっています。
最大の利点は、社内に存在しない専門性を外部から調達できる点にあります。正規雇用で採用するにはコストやリスクが大きい高度人材であっても、必要な期間や業務範囲に限定して依頼することで、効率的に業務を進めることが可能になります。また、成果物ベースで評価しやすく、業務の進捗管理が比較的明確である点も、企業側にとって扱いやすい要素です。
一方で、雇用ではないため、指揮命令権の行使には注意が必要です。業務の進め方や優先順位について、企業側の意図が十分に共有されないと、期待していた成果とズレが生じることもあります。また、契約終了と同時に関係が途切れるケースも多く、業務を通じて得られた知見やノウハウが社内に残りにくいという問題もあります。
さらに、情報管理の観点からは、情報漏洩リスクへの対応が不可欠です。社外の人材が業務に関与する以上、秘密情報や個人情報をどこまで共有するか、契約や運用ルールを明確にしておく必要があります。利便性の高さだけで判断するのではなく、管理体制を含めた総合的な視点で活用することが重要です。
任せたい業務内容から必要な人材をあてはめる
人手不足を感じた際に、真っ先に「人を増やさなければならない」と考えてしまう企業は少なくありません。しかし、その前に行うべきなのは、自社の業務内容と人員配置の見直しです。現在の社員がどの業務にどれだけの時間と労力を割いているのかを整理することで、本当に不足しているのが人材なのか、それとも業務設計なのかが見えてきます。
業務を細分化していくと、専門性が高く、社内に十分な知識や経験がない業務と、一定の手順に従って処理できる定型業務とに分かれていきます。専門性が高い業務については、無理に社内で抱え込むよりも、ギグワーカーやフリーランスを活用することで、質の高い成果を短期間で得られる可能性があります。
一方で、業務量がある程度安定しており、継続的に発生する定型業務については、非正規雇用を検討することが合理的です。業務に慣れてもらうことで処理速度と正確性が向上し、正規社員の負担軽減にもつながります。さらに、短期間・突発的な業務については、アルバイトや日雇いを組み合わせることで、柔軟な対応が可能になります。
このように、人手不足対策では「どの人材を使うか」ではなく、「どの業務を誰に任せるか」を起点に考えることが重要です。業務内容と人材類型を丁寧に照らし合わせることで、コストを抑えつつ、組織全体の生産性を高めることができます。
まとめ
人手不足への対応は、単なる採用活動の延長ではなく、業務設計や働き方そのものを見直す経営課題です。正規雇用に固執するのではなく、非正規雇用、アルバイト・日雇い、ギグワーカーやフリーランスといった多様な働き方を理解し、適切に組み合わせる視点が求められます。
それぞれの人材類型には明確な特徴と限界があります。非正規雇用は一定の業務を安定的に担ってもらえる反面、コストや責任範囲の設計が難しくなります。アルバイトや日雇いは柔軟性が高く即応性に優れますが、任せられる業務は限定的です。ギグワーカーやフリーランスは専門性の補完に適していますが、ノウハウの蓄積や情報管理といった課題を伴います。
これらを踏まえたうえで、自社の業務内容に最も適した人材を選び、適切に配置することが重要です。人を増やすこと自体を目的にするのではなく、業務を円滑に回し、組織全体の生産性を高めることを最終目標とする姿勢が、人手不足時代の企業経営には欠かせません。
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