Author Archive
応受義務がある場面でのカスハラ対策【弁護士×MBAが解説】

カスハラ対策は難しい
各種ハラスメントの中でも、カスタマーハラスメント(カスハラ)の対策は特に難しいといわれています。商売である以上、事業者は顧客と接点を持ち、商品やサービスを提供して対価を受け取ります。そのため、顧客の要望を把握し、可能な範囲で応じることは、事業を継続するうえで欠かせません。顧客からの苦情や厳しい意見も、サービスの品質を改善するための重要な情報となる場合があります。
しかし、顧客だからといって、どのような要求や言動も許されるわけではありません。従業員の人格を傷つけたり、業務上の必要性を欠く要求を繰り返したりする行為には、毅然とした対応が求められます。
難しいのは、顧客対応の適切な範囲と、許容できない行為との境界が必ずしも明確ではないことです。顧客から厳しい指摘を受けただけで対応を打ち切れば、正当な苦情まで拒絶することになりかねません。一方、顧客の要求を受け入れ続ければ、従業員の負担が増大し、通常の業務にも支障が生じます。
こうした判断を現場の担当者だけに任せると、対応にばらつきが生じたり、従業員が無理な要求を我慢し続けたりするおそれがあります。事業者には、顧客の正当な要望に応える姿勢を維持しながら、従業員を守るための判断基準を整えることが求められます。そこで本稿では、顧客対応を簡単には拒否できない場面におけるカスハラ対策の考え方を解説します。
薬剤師には応需義務がある
カスハラへの対応が難しい職種の一つに、薬剤師があります。薬剤師は医薬品の適正な使用を支える専門職であり、患者の健康や安全に深く関わっています。患者と直接接する機会が多い一方、専門的な判断や制度上の制約について、十分な理解を得られないこともあります。
薬剤師には、法令上、正当な理由がなければ調剤を拒んではならないという応需義務に関わる制約があります。そのため、一般的な接客業のように、顧客との関係を簡単に打ち切るという対応はできません。ただし、応需義務があるからといって、顧客からのあらゆる要求に無条件で応じなければならないわけではありません。調剤に関する法的な義務と、顧客のすべての要望を受け入れることは区別する必要があります。
患者の中には、薬剤師を医師の処方に従って薬を用意するだけの存在と捉える人もいます。しかし、薬剤師には医薬品の適正使用を支える専門的な役割があり、患者の希望に応じられない場合もあります。こうした事情が理解されないと、専門職として必要な説明や判断が、患者の不満につながることがあります。
このような環境で、担当者が個人の判断だけで問題を解決することには限界があります。応需義務がある業務だからこそ、どのような要求に対応すべきか、どのような言動には応じる必要がないのかを事前に整理することが重要です。 さカスハラ対策を従業員の忍耐や交渉力に頼るのではなく、法令上の義務と顧客対応の限界を明確にしておくことが、従業員を守りながら必要な業務を継続するための基盤となります。
業務関連性や迷惑度
カスハラ対策では、顧客の要求が業務に関連するものかどうかを判断することが重要です。事業者は提供するサービスに関する正当な申し出には対応する必要がありますが、業務と関係のない要求まで引き受ける義務があるわけではありません。
薬剤師についても、調剤や医薬品の適正使用に関わる業務と、それ以外の要求を区別して考える必要があります。 もっとも、業務との関連性は、要求の表面的な内容だけで判断できるものではありません。サービスの品質や安全性に関する申し出であれば、事業者として確認すべき場合があります。一方、業務に関連する話題が含まれていても、要求のすべてが正当化されるわけではありません。業務との関連性は、対応の必要性を判断する重要な基準の一つです。
また、顧客の言動が周囲に及ぼす迷惑度も考慮しなければなりません。事業者には、目の前の顧客だけでなく、ほかの顧客にも適切なサービスを提供する責任があります。特定の顧客への対応が長時間に及び、通常の業務やほかの顧客へのサービスに支障を生じさせている場合、その影響を踏まえて対応を検討する必要があります。
こうした判断を担当者任せにしないためには、事前に業務の範囲を整理しておくことが有効です。何に対応すべきかが明確になれば、対応する必要のない要求も区別しやすくなります。業務上の必要性が認められない要求については、組織の基準に基づいて毅然と断ることができます。顧客の意見に丁寧に対応することは、サービスの品質向上や信頼の獲得につながります。カスハラ対策は顧客対応を減らすためではなく、必要な対応に適切な労力をかけ、不当な要求によって業務が圧迫されることを防ぐためのものです。
まずは説得
顧客の言動がカスハラに該当する可能性がある場合、まずは相手に行為を改めるよう説得することが基本です。要求に応じられないときには、その理由を冷静に説明し、どのような対応が可能なのかを伝えます。顧客の話を聞くことと、要求を受け入れることは別です。相手の主張を確認したうえで、受け入れられない要求には明確に応じられないと伝える必要があります。
説得を行うのは、顧客の要求を無条件に受け入れるためではありません。相手が自分の言動の問題点を理解し、行為を改める可能性があるからです。事業者が一方的に拒絶すれば、顧客の不満がさらに強まり、対立が深まることもあります。冷静な説明を尽くし、改善の機会を設けることが、適切な顧客対応につながります。
以前から迷惑行為を繰り返している顧客であっても、基本的には説得を試みることが必要です。ただし、これは危険な状況でも対話を続けなければならないという意味ではありません。暴力や脅迫などの危険がある場合には、従業員の安全を優先し、必要に応じて警察などの外部機関への相談を検討すべきです。
説得を行っても迷惑行為が続き、適切な顧客対応を維持することが困難になった場合には、接客を断ることを検討します。重要なのは、顧客との信頼関係です。事業者が誠実に説明し、対応を改善するための努力を尽くしても、相手が不当な要求を続けるのであれば、通常の接客関係を維持することは難しくなります。ただし、事業者側も冷静な説明と誠実な対応を心がけ、信頼関係を維持するために努力することが大切です。
断るありきでは解決しない
カスハラ対策では、最終的に顧客対応を断ることが必要になる場合があります。しかし、最初から接客拒否を前提にすると、問題の根本的な解決につながらないおそれがあります。顧客から不当と思われる要求があった場合でも、まずは内容を確認し、話し合いによって解決できる余地があるかを見極める必要があります。
話し合いは、顧客の要求を受け入れるためだけに行うものではありません。事業者が対応できる範囲と、対応できない範囲を説明し、相手に理解を求めるためにも必要です。顧客の不満に合理的な理由があれば、事業者側が改善すべき点を把握できます。一方、要求が不合理であれば、その理由を説明して修正を求めることができます。
ただし、説明を尽くしても相手が要求を改めず、威圧的な言動や執拗な対応を続ける場合には、話し合いによる解決が難しくなっていると判断する必要があります。対応に過度な時間や人員を費やせば、ほかの顧客へのサービスや通常業務に支障が生じ、従業員の負担も増大します。
そこで重要なのが、話し合いを続ける段階と、対応からの撤退を検討する段階を明確に区別することです。ルールを設ける際にも、接客拒否の条件だけを定めるのではなく、どの時点で話し合いを打ち切り、責任者への引き継ぎや対応終了を検討するのかを明確にすることが望まれます。
判断基準には、説明を尽くしたか、相手が改善の求めに応じているか、業務への支障がどの程度生じているかなどを含めます。また、撤退の判断を現場の担当者だけに背負わせず、責任者が組織として判断できる体制を整えることも重要です。法令上の義務を確認しながら、対話と撤退を適切に切り替えられる仕組みを整えることが、顧客への責任と従業員の保護を両立させるカスハラ対策となります。
まとめ
応受義務がある場面でのカスハラ対策では、顧客に対する責任を果たしながら、従業員を不当な要求や迷惑行為から守る必要があります。薬剤師のように法令上の応需義務が問題となる職種では、顧客対応を簡単に拒否できません。しかし、応需義務があるからといって、あらゆる要求を受け入れなければならないわけではありません。
対応の判断では、要求が業務に関連するものか、ほかの顧客や従業員に迷惑を及ぼしていないかを確認することが重要です。業務の範囲を事前に整理しておけば、対応すべき要求と、断るべき要求を区別しやすくなります。一方、正当な要望には丁寧に応じ、サービス向上につなげる姿勢も必要です。 カスハラが疑われる場合には、まず相手に言動を改めるよう説得し、話し合いによる解決を目指します。
事業者側も冷静な説明を尽くし、信頼関係を維持するために努力することが大切です。ただし、危険がある場合には安全を優先しなければなりません。 話し合いを続けても改善が見られず、業務や従業員に深刻な支障が生じる場合には、対応からの撤退を検討します。そのためには、話し合いを続ける段階と撤退を検討する段階の判断基準を設け、責任者が組織として判断できる体制を整えることが重要です。
接客拒否を前提とするのでも、無制限に要求を受け入れるのでもなく、法令上の義務を踏まえながら、対話と毅然とした対応を適切に切り替えることが実効性のあるカスハラ対策につながります。
当センターではカスハラ対策のご相談対応経験が豊富です。下記よりお気軽にご相談ください。

当センターは、弁護士・公認会計士・中小企業診断士・CFP®・ITストラテジストなどの資格を持つセンター長・杉本智則が所属する法律事務所を中心に運営しています。他の事務所との連携ではなく、ひとつの窓口で対応できる体制を整えており、複雑な問題でも丁寧に整理しながら対応いたします。
窓口を一本化しているため、複数の専門家に繰り返し説明する必要がなく、手間や時間を省きながら、無駄のないスムーズなサポートをご提供できるのが特長です。
大阪府を拠点に、東京、神奈川、愛知、福岡など幅広い地域のご相談に対応しており、オンラインでのご相談(全世界対応)も可能です。地域に根ざした対応と、柔軟なサポート体制で、皆さまのお悩みに親身にお応えいたします。
初回相談は無料、事前予約で夜間休日の相談にも対応可能です。どうぞお気軽にご相談ください。
債権回収で追うべき相手と追ってはならない相手【弁護士×公認会計士が解説】

債権回収でどこまで追うかは相手次第
債権回収では、「債権が存在する以上、最後まで徹底的に回収を目指すべきだ」と考えがちです。しかし、実際の回収業務では、すべての債務者に対して同じ方法、同じ時間、同じ費用をかければよいわけではありません。債権回収の成否は、債務者がどのような状況に置かれているかによって大きく左右されるからです。
債権回収には、請求書の送付、電話や書面による督促、分割払いの交渉、内容証明郵便の送付、訴訟、強制執行など、さまざまな手段があります。しかし、どの手段をどの段階で使うかについて、すべての債務者に共通するマニュアルがあるわけではありません。同じ金額の債権であっても、債務者の収入や資産、事業状況、支払意思などによって、採るべき対応は変わります。
特に重要なのは、「回収できる可能性がある相手」と「回収できる可能性が極めて低い相手」を区別することです。前者に対しては、必要な手続きを速やかに進めなければ、時間の経過によって回収の機会を失うことがあります。一方で、後者に対して同じような対応を続ければ、回収額以上の費用や担当者の時間を消費することにもなりかねません。
債権回収では、回収可能性を見極めたうえで、どこまで費用と労力を投入するのかを判断することが重要です。債務者の状況を確認し、回収の可能性に応じて対応を変えることが、効率的な債権管理につながります。そこで本稿では、債権回収におけるこのメリハリの重要性を解説することで、追うべき相手と追ってはならない相手を見極めるための考え方を整理します。
2.収入源が十分な債務者は速やかにその源を抑えよ
十分な給与所得などの収入があるにもかかわらず、債務の支払いを怠っている債務者については、早期に法的手続を検討することが重要です。支払能力が存在するにもかかわらず任意の支払いをしないのであれば、督促を繰り返すだけでは状況が変わらない可能性があります。
その代表的な手段が訴訟です。訴訟によって請求が認められ、判決などの債務名義を取得すれば、一定の要件のもとで強制執行を行うことが可能になります。給与などの継続的な収入がある場合には、その収入源に対する差押えを検討できます。
債務者にとっても、差押えを受ければ、自由に利用できる収入が減少するなど、任意に支払っている場合よりも不利な状況になることがあります。そのため、強制執行が可能な状態まで手続を進めること自体が、任意の支払いを促す圧力として機能する場合があります。もちろん、債権者としても必要以上に債務者を追いつめることは避ける必要がありますが、支払能力があるにもかかわらず支払いをしない相手に対して、適切な法的圧力をかけることは債権管理上重要です。
ここで大切なのは、収入があることを把握しただけで満足しないことです。実際に回収へ結び付けるためには、法的に請求可能な状態を整え、債務名義を取得し、必要に応じて差押えへ進めるという一連の対応が必要になります。回収可能性が高い相手については、漫然と督促を続けるよりも、早期に法的手続を活用することが有効です。
支払能力のない人は追っても無駄
債権回収において、最も重要な判断の一つが、債務者に実際の支払能力があるかどうかを見極めることです。債務者に財産や継続的な収入がなく、現実に支払いへ充てられる資力が存在しないのであれば、法的手続を進めても回収につながらないことがあります。権利として請求できることと、現実にお金を回収できることは別の問題だからです。
たとえば、生活保護を受けているなど、生活を維持するための最低限の資力しかない債務者については、一般的な債権者が自由に回収できる財産や収入が存在しない場合があります。このような相手に対して、督促を繰り返したり、訴訟を提起したり、さらに強制執行を検討したりしても、回収できる金額が増えるとは限りません。
それどころか、債権回収には相応の費用と手間がかかります。弁護士への依頼費用、裁判手続に要する費用、担当者が対応する時間などを考慮すれば、回収可能性が極めて低い債権に継続的な資源を投入することは、会社全体の経営という観点から合理的とはいえない場合があります。
そのため、支払能力がないことを十分に確認できた場合には、それ以上追わないという判断も債権管理の重要な選択肢になります。回収可能性とコストを冷静に比較し、経済合理性のない行動を続けないということです。
さらに、債務が時効によって消滅し、適切な時効援用などの手続が行われれば、税務上、一定の要件のもとで貸倒損失として処理できる場合があります。回収不能な債権をいつまでも追い続けるのではなく、法務と会計の両面から適切な処理を検討することが重要です。
債権回収は相手の嫌がることを素早くすることが鉄則
債権回収は、単純な事務処理ではありません。請求書を発行し、支払期限を確認し、未払いであれば再度請求するという作業だけで終わるものではなく、必要に応じて法的手続を利用し、債権を実際の回収につなげることが求められます。その意味で、債権回収は自社の資金を守るための重要な経営活動です。
債務者が支払いを避けているにもかかわらず、債権者側が遠慮して対応を遅らせれば、回収の可能性が低下することがあります。正当な権利に基づいて請求し、必要な手続きを適切なタイミングで進めることが、自社を守るために必要となります。
もちろん、「相手の嫌がることをする」という表現は、違法な嫌がらせや過度な圧力を意味するものではありません。債権者として認められた法的手段を適切に利用するという意味で捉える必要があります。督促、内容証明郵便、訴訟、強制執行など、法律上認められた手段を適切に選択し、必要な場面ではためらわず実行することが重要です。
特に、収入源や差し押さえることのできる財産が存在する債務者については、債務名義を取得し、差押えが可能な状態に持ち込むことによって、債権者側の交渉上の立場も変わります。任意の支払いを待つだけではなく、法的手続によって回収を現実化できる状態を整えることが重要です。
債権回収で重要なのは、回収可能性を踏まえ、必要な手段を必要な時期に実行することです。迅速かつ適切な対応こそが、自社の資金繰りと財務基盤を守ることにつながります。
支払能力のない人はできる限り門前払いせよ
支払能力のない債務者に対して、発生した債権をいつまでも追い続けるべきではありません。回収可能性がないことが明らかになっているのであれば、そこにさらに費用や人員を投入することは、損失を拡大させる結果にもなります。債権回収では、回収する努力だけでなく、回収できない債権を生み出さないことも同じくらい重要です。
すでに発生してしまった債権については、回収可能性を冷静に見極め、必要に応じて損失として処理するという割り切りが必要です。支払能力がないことが明確であれば、無制限に回収活動を続ける合理性はありません。
むしろ重要なのは、同じような債権を将来にわたって発生させない仕組みを整えることです。債権が発生してから回収するという発想だけでは、どうしても後手に回ります。取引開始時点で相手方の信用力や支払能力を確認し、取引条件を適切に設定することによって、回収困難な債権の発生そのものを抑える必要があります。
そのためには、与信管理を単なる形式的な確認作業にしないことが重要です。取引先の信用状況、支払実績、取引規模、契約条件などを確認し、自社が許容できる信用リスクを明確にしておく必要があります。一定の基準を満たさない相手については、取引を開始しない、前払いを求める、担保や保証を求めるなど、債権化する前の段階でリスクを抑える方法も検討できます。
債権回収の強さは、回収手続だけで決まるものではありません。そもそも回収が難しい相手に債権を持たないことが、最も確実な回収対策になる場合があります。入口で適切に判断し、回収困難な取引をできる限り避ける仕組みを構築することが、長期的に安定した経営を支えます。
まとめ
債権回収では、すべての債務者を同じように追うのではなく、相手の支払能力を見極めて対応を変えることが重要です。十分な収入や財産がありながら支払いを怠っている相手については、督促だけで長期間様子を見るのではなく、必要に応じて訴訟などの法的手続を速やかに進め、債務名義を取得して差押えが可能な状態を整えることが有効です。法的手続を進めることは、強制執行だけでなく、任意の支払いを促す手段にもなります。
一方、現実に支払能力がない相手については、回収活動そのものが新たなコストになる可能性があります。回収できる見込みと、回収に必要となる費用や時間を比較し、経済合理性がなければ追い続けない判断も必要です。法務だけでなく会計面から債権を整理することも、経営上重要な対応となります。
また、債権回収を強化するだけでは十分ではありません。将来的な貸倒れを減らすためには、取引開始前の与信管理を徹底し、支払能力に問題のある相手と安易に取引しない仕組みを整えることが必要です。回収困難な債権を発生させないことが、最も効率的な債権管理につながるからです。
つまり、債権回収では「追うべき相手を迅速に追い、追っても回収できない相手には資源を使いすぎない」というメリハリが欠かせません。個々の債務者の状況を踏まえ、法的手段、回収コスト、会計処理、そして取引前の与信管理まで含めて判断することが、自社の資金を守るための基本となります。
当センターでは、法的な観点だけでなく会計的な観点もふまえ、御社の迅速かつ最も適切な債権回収体制を支援いたします。下記よりお気軽にご相談ください。

当センターは、弁護士・公認会計士・中小企業診断士・CFP®・ITストラテジストなどの資格を持つセンター長・杉本智則が所属する法律事務所を中心に運営しています。他の事務所との連携ではなく、ひとつの窓口で対応できる体制を整えており、複雑な問題でも丁寧に整理しながら対応いたします。
窓口を一本化しているため、複数の専門家に繰り返し説明する必要がなく、手間や時間を省きながら、無駄のないスムーズなサポートをご提供できるのが特長です。
大阪府を拠点に、東京、神奈川、愛知、福岡など幅広い地域のご相談に対応しており、オンラインでのご相談(全世界対応)も可能です。地域に根ざした対応と、柔軟なサポート体制で、皆さまのお悩みに親身にお応えいたします。
初回相談は無料、事前予約で夜間休日の相談にも対応可能です。どうぞお気軽にご相談ください。
リーダー職を増やすために必要な社内改善ポイント【弁護士×MBAが解説】

仕事はできるが昇進したくない社員の増加
企業にとって、仕事のできる社員は非常に重要な存在です。与えられた仕事を正確に処理するだけでなく、自ら課題を見つけ、改善し、より大きな成果につなげられる人材は、会社に長く貢献してもらいたいと考えるのが自然です。しかし、こうした社員ほど、必ずしもリーダー職への昇進を望んでいるとは限りません。
仕事の能力が高い社員に対して、会社が次の段階として管理職やリーダー職を提示することは珍しくありません。ところが本人からすると、昇進によって自分が望んでいた仕事から離れたり、専門性を高める機会が減ったりする可能性があります。責任や会議、部下の管理などが増える一方で、自分自身の能力を伸ばす時間が減ると感じれば、昇進を魅力的なものとして受け止められないこともあります。
その結果、優秀な社員ほど昇進を断り、一定の段階で会社を離れるという状況が生じます。企業側は「能力が高いのだから会社の中心人物になってほしい」と考えますが、社員側は「能力が高いからこそ、自分の専門性をさらに伸ばしたい」と考えることがあります。この違いを放置すれば、会社が期待する人材ほど定着しないという逆転現象が起こります。
つまり、リーダー職が不足している問題は、単純に昇進を希望する社員が少ないという話ではありません。会社が用意しているキャリアと、社員が望む成長の方向が一致しているかを考える必要があります。優秀な社員を長期的に組織へつなぎ止めるには、会社側が社員の成長と組織への貢献を両立できる仕組みを考えなければなりません。そこで本稿では、リーダー職を増やすために企業が変えるべき社内改善のポイントを解説します。
貢献スキルは汎用性が高い
給料は、基本的には社会や組織に対して価値を提供したことの対価です。そのため、仕事のできる人ほど、自分がどのような能力によって価値を生み出せるのかを意識し、その能力を高めようとします。ここで重要になるのが、特定の会社だけで通用する能力ではなく、さまざまな仕事に応用できる「貢献スキル」です。
貢献スキルの汎用性が高ければ、所属する部署や担当する仕事が変わっても、その能力を使って成果を出すことができます。専門知識、問題解決力、営業力、企画力、交渉力、分析力など、仕事を通じて身につけた能力が別の場面でも役立つのであれば、社員自身にとって成長する意味は大きくなります。
優秀な人材は、こうした能力を会社から言われなくても磨こうとする傾向があります。自分の能力が高まれば、任される仕事の幅が広がり、より難しい課題にも対応できるようになるからです。新しい仕事を任されることでさらに経験が積み重なり、その経験によってまた新しい能力が身につくという循環も生まれます。
この循環が続いている間は、社員にとって会社は成長できる場所になります。会社側にとっても、能力の高い社員がより高度な仕事を担えるようになるため、組織全体の生産性を高めることにつながります。社員が成長し、その成長によって会社の成果も高まるのであれば、両者の関係は自然にウィンウィンになります。
したがって、優秀な社員を定着させるうえでは、単に待遇を良くするだけでは十分とは限りません。本人が仕事を通じて能力を伸ばし続けられる状態を維持することが重要です。成長の実感があり、自分の能力が仕事上の成果につながっていると感じられる限り、社員は現在の環境に価値を見いだしやすくなります。
総務やリーダー職は無駄?
順調に能力を伸ばしている優秀な社員が、転職を考えるきっかけになりやすいのが、総務やリーダー職などへの配置や打診です。もちろん、これらの仕事が企業にとって不要という意味ではありません。組織を維持し、円滑に運営するためには、管理や調整を担う仕事が必要です。しかし、会社に必要な仕事であることと、優秀な社員がその仕事を自身のキャリアとして望むことは別問題です。
総務やリーダー職では、個人が持っている貢献スキルを直接活用する機会が減る場合があります。担当業務の遂行よりも、社内調整、進捗管理、会議、部下への対応、組織上の手続などに時間を使う場面が増えるからです。これまで専門性を高めることで成果を上げてきた社員にとっては、自分の能力をさらに伸ばす機会が少なくなったと感じる可能性があります。
特に、仕事そのものに強い関心を持ち、専門能力を高めることにやりがいを感じている社員ほど、この変化を大きく受け止めます。会社から見れば責任あるポジションへの昇進でも、本人から見れば、それまで積み上げてきたキャリアから離れることになる場合があります。
ここで問題になるのは、総務や管理職という仕事そのものではなく、それをキャリア上の当然の昇進ルートとして扱うことです。社員が望んでいる方向と異なる仕事を一律に「昇進」と位置づければ、能力の高い人ほど違和感を覚えます。そして、自分が身につけてきた能力を活かせる環境を求めて、社外に目を向けることになります。
企業に必要な役割を誰が担うのかという問題と、社員がどのようなキャリアを歩みたいのかという問題は、分けて考える必要があります。会社にとって重要な仕事だからという理由だけで、本人の希望を無視して配置すれば、優秀な人材の定着を難しくすることがあります。
優秀な人ほどキャリアを選ぶ
一定の貢献スキルを身につけ、継続的に成果を上げられる人は、転職市場において自分の能力を活かせる選択肢を持ちやすくなります。どの会社でも同じように評価されるとは限りませんが、汎用性の高い能力を持っていれば、自分がどのような仕事をしたいのかを基準にしてキャリアを考えやすくなります。
このような社員にとって重要なのは、単に現在の会社に在籍していることではありません。自分がやりたい仕事を続けられるか、能力をさらに高められるか、仕事を通じて新しい価値を生み出せるかという点が、勤務先を選ぶ際の重要な要素になります。会社への在籍そのものが目的になっていなければ、キャリア上の合理性を考えて環境を変えることも十分にあり得ます。
反対に、自分が積み上げてきた能力を十分に活かせない仕事が増えると、現在の会社にとどまる理由は弱くなります。特に、管理業務や社内調整が中心となり、自分が得たい専門性や経験から遠ざかると感じれば、昇進そのものが魅力ではなく負担になることがあります。
ここには企業と個人の考え方の違いがあります。企業は、優秀な社員ほど組織のために重要な仕事を担ってほしいと考えます。一方、社員は、自分の能力を社会の中でより広く活用しながら成長したいと考えることがあります。会社のために貢献することと、自分の能力を社会で活かすことが一致していれば問題はありません。しかし両者が離れてしまえば、優秀な社員ほど会社を離れる判断をしやすくなります。
したがって、社員が自らの能力を活かしたいと考えることを前提として、その能力を組織の中でも活かせる状態を作ることが、長期的な人材確保において重要になります。
企業への忠誠心を醸成する
リーダー職を担う社員を増やすためには、企業への忠誠心を育てることが重要です。ただし、ここでいう忠誠心は、会社の指示に無条件で従うという意味ではありません。自分が所属する企業のために力を使いたい、この組織の成長に関わりたいと思える状態をつくることが重要です。
そのためには、社員がどのような能力を持ち、どのような方向に成長したいのかを理解したうえで、その能力を企業の活動に結びつける必要があります。会社から一方的に役割を与えるのではなく、本人の成長と組織への貢献が両立する関係を構築することが大切です。
また、自分の仕事が会社の利益だけでなく、社会に対する価値の提供につながっていると実感できる環境も重要です。企業の活動を通じて社会に貢献できていると感じられれば、社員は会社という組織を単なる雇用主としてではなく、自分が価値を提供するための重要な基盤として捉えやすくなります。逆に、社員が会社の中で単なる駒として扱われていると感じれば、組織への愛着を持つことは難しくなります。能力の高い社員ほど、自分の力をどこで、どのように使うのが有効なのかを考えるため、会社側の扱い方は定着に大きく影響します。
リーダー職を増やすためには、役職を用意して昇進を促すだけでは足りません。社員が「この会社のために貢献したい」と自然に思える環境をつくることが必要です。そのためには、社員を大切な経営資源として認識し、能力を正しく見極め、成長できる仕事を与え、組織への貢献が本人の成長にもつながる状態を作ることが求められます。企業と社員の双方が価値を感じられる関係があってこそ、リーダーを担う人材は継続的に育っていきます。
まとめ
リーダー職を増やすためには、単純に優秀な社員へ昇進を勧めるだけでは十分ではありません。仕事のできる社員ほど、自分の能力を高め、それを幅広い仕事で活用することに価値を感じています。そのため、会社が必要としている役職と本人が望むキャリアが一致しなければ、昇進が魅力ではなくなり、転職を考えるきっかけにもなります。
企業に必要な総務や管理業務を否定する必要はありません。しかし、それらを全社員にとって当然のキャリア上の到達点と考えることには注意が必要です。社員がどのような能力を伸ばしたいのかを踏まえ、その能力を組織の中でも発揮できる仕事を設計することが重要です。
また、長期的な定着には、待遇だけでなく「この会社のために貢献したい」と思える関係づくりが欠かせません。社員を単なる人手として扱うのではなく、企業の価値を生み出す重要な存在として捉え、成長と貢献を両立させる必要があります。リーダー職を増やすという課題は、役職者の人数を増やすだけの問題ではなく、社員が会社に残りながら能力を発揮できる組織をつくる問題として考えることが重要です。
当センターでは人財育成の視点をふまえて労働環境の整備や労働問題対応に取り組んでいます。下記よりお気軽にご相談ください。

当センターは、弁護士・公認会計士・中小企業診断士・CFP®・ITストラテジストなどの資格を持つセンター長・杉本智則が所属する法律事務所を中心に運営しています。他の事務所との連携ではなく、ひとつの窓口で対応できる体制を整えており、複雑な問題でも丁寧に整理しながら対応いたします。
窓口を一本化しているため、複数の専門家に繰り返し説明する必要がなく、手間や時間を省きながら、無駄のないスムーズなサポートをご提供できるのが特長です。
大阪府を拠点に、東京、神奈川、愛知、福岡など幅広い地域のご相談に対応しており、オンラインでのご相談(全世界対応)も可能です。地域に根ざした対応と、柔軟なサポート体制で、皆さまのお悩みに親身にお応えいたします。
初回相談は無料、事前予約で夜間休日の相談にも対応可能です。どうぞお気軽にご相談ください。
迷惑顧客には遠慮なく値上げを敢行しよう【弁護士×MBAが解説】

介護業界で深刻なカスハラの実態
カスタマーハラスメント、いわゆるカスハラは、特定の業界だけで発生する問題ではありません。その中でも、介護業界ではカスハラが特に深刻な問題になりやすいと指摘されています。介護サービスは、利用者やその家族と従業員との距離が近く、継続的な関係が生じやすいという特徴があります。そのため、サービスへの要望や不満が従業員に直接向けられることもあります。しかし、社会通念上許容される範囲を超えた要求や言動には、事業者として明確に対応する必要があります。
しかも、介護業界では以前から人手不足が大きな課題となっています。必要な人員を確保できない状態で業務量が増えれば、一人当たりの負担は重くなります。そこへカスハラが加われば、従業員は通常業務に加えて顧客とのトラブルにも対応しなければなりません。精神的な負担が大きくなれば、離職につながる可能性もあります。
従業員が減れば残った従業員の負担が増え、その負担がさらに離職を招くという悪循環にも陥りかねません。介護サービスは人が担う部分が大きいため、従業員を守ることは事業者自身を守ることにも直結します。したがって、カスハラ対策は単なる顧客対応ではなく、介護事業を継続するための経営上の重要課題として捉える必要があります。
一方、人手不足は事業者にとって単純な弱点とは限りません。人材の確保が難しいからこそ、限られた人的資源をどの顧客にどのように提供するかを考える余地があります。そこで本稿ではカスハラ対策の逆転策を解説します。
人手不足はロボットで補うしかない
日本では少子高齢化が進み、労働人口の減少が続いています。介護を必要とする人が増える一方で、そのサービスを担う現役世代が減少すれば、介護業界の人手不足は構造的な問題になります。求人広告を増やしたり採用活動を強化したりするだけでは、根本的な解決が難しい問題です。もちろん、待遇改善や職場環境の改善によって介護業界で働く人を増やす努力は必要です。しかし、社会全体で働くことのできる人の絶対数が減少している以上、事業者同士が限られた人材を奪い合うだけでは限界があります。
それでも、介護の仕事そのものがなくなるわけではありません。高齢者の生活を支えるために必要な仕事は、労働人口が減少しても残り続けます。必要な仕事を減少する人数だけで処理することには限界があるため、人間が担う仕事の量そのものを減らす必要があります。
そこで重要になるのが、ロボットやデジタル技術の活用です。人間が行っていた作業の一部を機械に置き換えることができれば、一人の従業員が対応できる業務量を増やせます。単純作業や定型的な作業を機械に任せ、人間が人間でなければ対応しにくい仕事に集中するという考え方です。
もっとも、機械を導入すれば人間が不要になるわけではありません。機械には得意な作業と不得意な作業があり、人間による対応を求める需要も残ります。そのため、人手不足への対応では、人間が担う仕事と機械が担う仕事を適切に分ける視点が欠かせません。
みどりの窓口でよく見られる光景
JRのみどりの窓口では、有人窓口に長い列ができる光景が見られることがあります。駅には自動券売機などが設置され、一定の手続については機械を操作することで短時間に処理できます。それでも有人窓口での対応を求める人が少なくないことは、機械化だけでは解消できない需要が存在することを示しています。その背景には、機械の操作方法が分からないことだけでなく、自分で操作することへの不安や、操作そのものを不便だと感じることがあります。また、機械では自分の希望どおりに処理できるか判断しにくい場合もあります。
重要なのは、技術が存在することと、利用者がその技術を使いこなせることは別問題だという点です。事業者が機械化を進めても、すべての利用者が自然に機械へ移行するとは限りません。機械を使うことに抵抗を感じる人や、人的なサポートを必要とする人も一定数存在します。
このことは、介護業界における省人化を考える際にも重要です。介護を受ける側には、デジタル機器の操作に慣れていない人もいます。また、身体的な事情や認知機能の状態によって、機械とのやり取りそのものが難しい人もいます。むしろ、機械を使える人と使えない人との間には、サービスの受けやすさに差が生じる可能性があります。機械化によって人的負担を減らすことは必要ですが、機械化されたサービスだけでは満たせない需要が存在することも認識しなければなりません。
つまり、労働力不足をロボットなどによって補う方向へ社会が進んだとしても、人間による対応を求める人が消えるわけではありません。機械化が進むほど、人間が直接対応することの意味が相対的に明確になる可能性があります。人手不足への対応では、人間によるサービスそのものが持つ価値にも目を向ける必要があります。
ヒトの柔軟な対応には価値がある
みどりの窓口に人が並ぶ背景には、有人対応の柔軟性があります。機械を利用する場合、利用者は画面に表示された選択肢から必要なものを選び、決められた手順に従って処理しなければなりません。これに対して、人に相談すれば、自分の希望を口頭で説明し、それに応じた処理をしてもらうことができます。人間による対応の価値は、単に作業を代わりに行ってもらえることだけではありません。利用者が何を求めているのかを会話の中から理解し、状況に応じて対応を変えられることに大きな意味があります。決められた手順では対応しにくい細かな希望にも、人間であれば一定の範囲で柔軟に対応できます。
また、利用者自身が何をすればよいのか分からない場合にも、人間の存在は大きな意味を持ちます。機械は入力された情報に基づいて処理できますが、利用者の曖昧な説明から意図をくみ取り、必要な手続を整理することには限界があります。人間同士であれば、会話を通じて情報を補いながら問題を解決できます。
この柔軟性には経済的な価値があります。JRの窓口業務では、窓口で相談すること自体に個別の相談料を支払う仕組みではありません。それでも有人窓口を利用したい人が多く、行列が生じるのであれば、人間による対応が利用者にとって価値のあるサービスであることが分かります。
この考え方は、サービス業全体に当てはまります。技術によって安価かつ効率的なサービスを提供できるようになっても、人間による柔軟な対応を求める需要までなくなるわけではありません。むしろ、機械による対応が一般化するほど、人間が対応するサービスには独自の価値が生まれます。たがって、人手不足だからといって人間によるサービスの価値まで低く評価する必要はありません。人間にしか提供しにくい柔軟性や安心感があるのであれば、それは適切な対価を設定する対象になり得ます。
恐れずに値上げを
介護業界でも、ロボットやデジタル技術による省人化が進んだとしても、人間による介護サービスへの需要がなくなるとは考えにくいでしょう。介護は単純な作業だけで構成されているわけではなく、利用者の状態や希望を踏まえながら柔軟に対応する場面が多いためです。人間による対応を求める利用者が一定数存在する以上、そのサービスには適切な価格を設定する必要があります。
そこで、人間による対応を必要とするサービスについては、その価値を価格に反映させる考え方が重要になります。値上げは単に利益を増やすためだけの手段ではありません。確保した人材に適切な待遇を提供し、十分な人員を配置し、従業員が安心して働ける環境を整えるための原資にもなります。
人材確保が容易になれば、一人の従業員に過剰な負担を集中させる必要もなくなります。余裕のある人員配置は、サービスの品質を維持するうえでも重要です。さらに、顧客から不当な要求を受けた場合にも、事業者がその要求を無条件に受け入れなければならない状況を避けやすくなります。
特に重要なのは、すべての顧客を同じ条件で受け入れる必要はないという発想です。人的サービスには限界があり、その限られた人的資源を適切な条件で提供することは、事業者として当然に検討すべき経営判断です。人間によるサービスを必要とする人は、その価値に見合う対価を負担することで、人的対応を受けるという関係を明確にできます。その結果、事業者は従業員を守りながらサービスを継続しやすくなります。値上げには利用者側の理解を得る努力も必要ですが、人手不足という厳しい環境だからこそ、人間によるサービスの価値を正面から評価し、適切な価格を設定することが重要です。
まとめ
介護業界では、少子高齢化による人手不足に加え、カスタマーハラスメントへの対応が従業員の負担を増やす要因となっています。人が不足している状況で、顧客からの過度な要求まで受け止め続ければ、従業員の疲弊や離職を招き、さらに人手不足が深刻になる可能性があります。
労働人口そのものが減少する社会では、人を増やすことだけで問題を解決するのは困難です。そのため、ロボットやデジタル技術を活用して、人間が担う仕事を減らしていくことが重要になります。ただし、機械を導入すればすべての利用者がそれを使えるわけではなく、人間による柔軟な対応を求める人は一定数残ります。
人間によるサービスには、機械では代替しにくい価値があります。利用者の話を聞き、個別の事情を踏まえて対応すること自体が、サービスとしての価値になり得ます。したがって、人手不足だからといって人的サービスを安価に提供し続ける必要はありません。人間による介護を必要とする人に対しては、その価値に見合った価格を設定し、得られた収益を人材確保や待遇改善、職場環境の整備に活用することが重要です。人員に余裕が生まれれば、従業員への過剰な負担も抑えやすくなります。
また、人的資源が限られていることを前提にサービスの範囲と価格を明確にすることで、顧客からの過度な要求に対しても、事業者が適切な線引きをしやすくなります。すべての要求に応じることが顧客サービスなのではなく、従業員を守りながら持続的にサービスを提供することが重要です。
値上げは単なる利益増加策ではありません。人間によるサービスの価値を適切に評価し、その対価を人材確保や職場環境の改善に充てることで、介護事業を持続させるための経営手段になります。カスハラと人手不足を別々の問題として捉えるのではなく、人的サービスの価値を適切に価格へ反映させる視点が求められます。
当センターではハラスメント対策を組織的に進めながら、企業の人的資源を守り、育てていく支援を行っております。下記よりお気軽にご相談ください。

当センターは、弁護士・公認会計士・中小企業診断士・CFP®・ITストラテジストなどの資格を持つセンター長・杉本智則が所属する法律事務所を中心に運営しています。他の事務所との連携ではなく、ひとつの窓口で対応できる体制を整えており、複雑な問題でも丁寧に整理しながら対応いたします。
窓口を一本化しているため、複数の専門家に繰り返し説明する必要がなく、手間や時間を省きながら、無駄のないスムーズなサポートをご提供できるのが特長です。
大阪府を拠点に、東京、神奈川、愛知、福岡など幅広い地域のご相談に対応しており、オンラインでのご相談(全世界対応)も可能です。地域に根ざした対応と、柔軟なサポート体制で、皆さまのお悩みに親身にお応えいたします。
初回相談は無料、事前予約で夜間休日の相談にも対応可能です。どうぞお気軽にご相談ください。
債権回収は長期全額回収と短期一部回収どちらが良い?【弁護士×公認会計士が解説】

資力の乏しい債務者からの債権回収
資力の乏しい債務者からの債権回収は、企業にとって非常に難しい問題です。債権そのものが存在していても、債務者に十分な財産や収入がなければ、請求を続けるだけでは実際の入金につながりません。
重要なのは、債権額だけを基準に回収方針を決めないことです。債務者の現在の資力だけでなく、今後の収入、保有財産、支払能力の継続性などを確認し、どの方法が実質的な回収につながるのかを検討する必要があります。たとえば、300万円の債権について、給与から毎月5万円ずつ5年かけて回収するA案と、50万円に減額して直近の賞与から一括払いするB案では、債権額をそのまま維持できるA案が必ずしも合理的とは限りません。長期間の回収には、その間に支払能力が変化するという不確実性があるためです。
また、債権回収では、法律上請求できる金額と、実際に現金として回収できる金額を区別して考えることも重要です。さらに、回収条件を変更する場合には、法律だけでなく税務や会計上の処理も確認する必要があります。担当者の判断だけで回収条件を変更すると、会社として想定していなかった問題が生じる可能性があります。
したがって、資力の乏しい債務者への対応では、「いくら請求できるか」だけではなく、「いつ、どの程度、確実に回収できるか」という視点が欠かせません。回収期間、回収額、回収に伴う負担や不確実性を総合的に比較し、企業として合理的な判断をする必要があります。そこで本稿では、資力の乏しい債務者から債権を回収する際に、長期全額回収と短期一部回収をどのように考えるべきかについて解説します。
債権の減額は税法上寄付とみなされる
債権を減額して早期に回収する方法を検討する場合には、法律上の問題だけでなく、税務上の取扱いにも注意しなければなりません。債権者が自らの判断で債権額を大幅に減らし、残額を請求しない場合、単純に「回収額が少なくなった」と処理できるとは限りません。債権放棄をした理由や相手方との関係などによっては、税務上、放棄した部分が寄付金として扱われるリスクがあるためです。
上記のように、300万円の債権について50万円だけを受け取り、残り250万円を放棄する処理を考えた場合、税務上は原則として、300万円全額の返済を受けたうえで、250万円を相手にキャッシュバックした、すなわち寄付したものとみなす考え方が問題になります。そのため、その債権が売掛金であれば、実際の入金額が50万円であったとしても、300万円全額を回収したとの前提で所得計算が行われ、税金が課される可能性があります。
もちろん、債権放棄がすべて同じように扱われるわけではありません。債権放棄の必要性や合理性、相手方の状況などによって税務上の判断は異なります。重要なのは、減額する金額だけを見るのではなく、なぜ減額するのか、その判断に合理的な根拠があるのか、税務上どのような処理になるのかを事前に確認することです。
このような事情から、一般的な企業では、現場担当者に債権減額について自由な裁量を与えないことが多くなります。担当者が「早く回収できるなら減額してもよい」と独自に判断すると、会社として予想していなかった税務上の負担が生じる可能性があるからです。債権回収の条件変更については、社内で一定の決裁基準を設け、金額や事情に応じて管理職や経理部門などが確認する仕組みが重要です。
このように債権回収では、法的な権利と税務上の取扱いを切り離さずに考えることが重要です。
長期分割回収はそれ自体がリスク
債権を減額できないのであれば、回収期間が長期に及んでも全額回収を基本とする企業は少なくありません。債権者としては、契約上認められている金額を請求することが原則であり、回収できる可能性がある限り、安易に権利を放棄する必要はないからです。しかし、長期分割回収を選択すれば、それだけで問題が解決するわけではありません。長期間待つこと自体に、いくつものリスクがあります。
第一に、現在資力が乏しい債務者の将来の支払能力は確実ではありません。分割払いの期間が長くなるほど、その間に債務者の状況が変化する可能性も高くなります。したがって、「現在払えないが、長期間待てば払える」という前提を安易に置くことは危険です。
第二に、長期分割支払は債務者自身にも精神的な負担を与えます。毎月一定額を何年にもわたって支払い続けることは、経済的負担だけでなく心理的な負担にもなります。支払開始当初には強い意思があったとしても、時間が経過するにつれて支払意欲が低下することがあります。支払が遅れれば、債権者側から督促を行わなければならず、交渉そのものが長期化することもあります。
第三に、債権者側にも管理コストが発生します。毎月の入金確認、残額の管理、支払遅延への対応、債務者との連絡などを継続する必要があります。案件数が増えれば、個々の債権について長期間管理することは担当者の負担となり、事務コストも積み重なります。回収額が大きくても、そのために長期間の管理を必要とするなら、実質的な回収効率を考える必要があります。
このように、長期分割回収には、債務者の将来の資力、支払継続の可能性、債権者側の管理負担という複数のリスクがあります。全額回収を目指すこと自体は重要ですが、長期間にわたる分割支払を受け入れることが、そのまま最善の回収策になるとは限りません。回収期間そのものをリスクとして評価する姿勢が必要です。
貸倒損失の要件がポイント
債権を減額して早期に回収することを検討する場合、税務上の取扱いを無視することはできません。原則として、債権者が任意に債権を放棄した場合には、放棄した部分について寄付金等として扱われる可能性があります。しかし、税務上認められる貸倒損失に該当するのであれば、単なる任意の債権放棄とは異なる処理が可能になります。したがって、債権回収においては、貸倒損失の要件を確認することが重要です。
もっとも、貸倒損失として認められるための要件は厳しく、債権者が「相手にはもう払えないだろう」と考えただけで処理できるものではありません。債務者の資産状況や支払能力、回収可能性、取引関係などについて、客観的な事情を確認する必要があります。要件を満たしているか十分に確認しないまま処理を行えば、後から税務上の問題が生じる可能性があります。
そのため、債権をカットすることを検討するときには、まず現在の債権がどのような状態にあり、貸倒損失として扱える可能性があるのかを確認することが必要です。そのうえで、債権放棄の経緯や判断根拠を記録し、必要な資料を整理しておくことが重要になります。単に回収担当者と債務者との間で合意を成立させるだけでは、会社として適切な処理を行うには不十分な場合があります。
一方で、「債権カットは税務上難しい」という理由だけで、最初から一切検討しないことも適切ではありません。貸倒損失に該当する可能性があるかどうかを確認したうえで、法務、税務、会計のそれぞれの観点から処理方法を検討する必要があります。債権回収の目的は、帳簿上の債権額を維持することだけではなく、企業として合理的に資金を回収することにあるからです。税務上の要件を確認し、会社として適切な処理ができるかを判断することが重要となります。
最後は差押えコストとの天秤で決まる
債権回収では、任意の支払が最後まで続くとは限らないことを常に考えておく必要があります。長期分割の支払計画を作成しても、途中で支払が停止すれば、債権者は次の回収手段を検討しなければなりません。特に、支払停止後も債務者が自主的に支払う意思を示さない場合には、債務名義を取得したうえで、財産の差押えなど強制執行に進むことが必要になります。
強制執行は、債権者が自らの権利を実現するための重要な手続ですが、一定の時間と費用がかかります。必要な書類を準備し、裁判所への申立てを行い、差押えの対象となる財産を特定するなど、債権者側にも相応の負担が生じます。さらに、強制執行を申し立てれば必ず債権全額を回収できるわけではありません。差押えの対象となる財産がなければ、手続を進めても十分な回収につながらない可能性があります。
そのため、最終的な回収方針を決める際には、回収できる金額と回収のために必要となるコストを比較することが重要です。回収可能額が限られているにもかかわらず、長期間の管理や法的手続に大きなコストをかければ、会社としての回収効率は低下します。金額だけではなく、時間と費用を含めた判断が必要です。
結局のところ、長期全額回収と短期一部回収の判断は、単純に回収額の大きさだけで決めるものではありません。将来の支払停止リスク、管理コスト、強制執行に移行した場合の負担などを考慮し、企業にとって最も合理的な方法を選択する必要があります。そして、その判断を後回しにせず、債権発生後から計画的に回収手続を履行することが、最終的な回収可能性を高めることにつながります。
まとめ
債権回収では、長期にわたって全額を回収することと、一定額に減額して短期間で回収することのどちらが常に優れているというわけではありません。債務者の資力が乏しい場合には、債権額だけを基準にせず、実際にどれだけの金額を、どの程度の期間で、どのくらいの確実性をもって回収できるかを考える必要があります。
長期分割回収は、債権額を維持しながら回収できる一方、債務者の将来的な資力変化や支払停止のリスクを抱えます。また、毎月の入金確認や督促など、債権者側にも長期間の管理負担が発生します。したがって、全額回収を原則とすることと、長期分割を無条件に受け入れることは分けて考えなければなりません。一方、短期で一部を回収して終了する方法を検討する場合には、債権減額の税務上の取扱いが重要になります。
債権回収で大切なのは、「全額を請求するか、減額するか」という二択に単純化しないことです。法務、税務、会計、資金繰り、管理負担を総合的に確認し、会社にとって実質的なメリットが大きい回収方法を選択することが重要です。さらに、支払が止まった場合の対応まで含めて早期から回収計画を立て、債務者の状況や支払実績に応じて方針を見直すことが、債権を確実に現金化するための基本となります。
当センターでは簡単そうに見えて実は複雑な債権回収を総合的に支援いたします。下記よりお気軽にご相談ください。

当センターは、弁護士・公認会計士・中小企業診断士・CFP®・ITストラテジストなどの資格を持つセンター長・杉本智則が所属する法律事務所を中心に運営しています。他の事務所との連携ではなく、ひとつの窓口で対応できる体制を整えており、複雑な問題でも丁寧に整理しながら対応いたします。
窓口を一本化しているため、複数の専門家に繰り返し説明する必要がなく、手間や時間を省きながら、無駄のないスムーズなサポートをご提供できるのが特長です。
大阪府を拠点に、東京、神奈川、愛知、福岡など幅広い地域のご相談に対応しており、オンラインでのご相談(全世界対応)も可能です。地域に根ざした対応と、柔軟なサポート体制で、皆さまのお悩みに親身にお応えいたします。
初回相談は無料、事前予約で夜間休日の相談にも対応可能です。どうぞお気軽にご相談ください。
AIは人の仕事を奪わない【弁護士×ITストラテジストが解説】
AIに奪われる仕事と言われるが・・
「AIに奪われる仕事ランキング」といった言葉が登場して久しくなりました。AIの進歩によって、これまで人が時間をかけて行ってきた作業が、短時間で処理できるようになっています。知識や技術が必要だと思われていた領域にもAIが入り込み、「これから人間の仕事はなくなるのではないか」という不安を感じる人が増えるのも無理はありません。
私自身も、以前はPythonのコードを書けるようになりたいと考え、一生懸命勉強したことがあります。文法を覚え、コードの構造を理解し、エラーが出れば原因を調べ、少しずつ自分で書けるように努力しました。しかし現在では、生成AIに指示すれば、一定程度のPythonコードなら簡単に作ってくれます。苦労して覚えたことを、AIがあっという間に処理しているのを見ると、「あの努力はいったい何だったのだろう」と落胆することがあります。
自分が長い時間をかけて身につけた技術を、AIがより速く、場合によってはより正確に処理するようになれば、自分の存在価値そのものが否定されたように感じることがあります。しかし、ここで「AIができる仕事が増えた=人の仕事がなくなる」と考えるのは適切ではありません。AIが作業を担えるようになったのであれば、むしろ人は、その作業に費やしていた時間や労力を別の役割に振り向けられるようになります。
AIが得意な領域ではAIを使い、人にしか担えない部分では人が力を発揮するという考え方が必要です。AIによって仕事の一部が変化することと、人間が働く必要がなくなることは同じではありません。仕事そのものが消えるのではなく、仕事の中身や、人が担当する位置が変わっていくと考える方が現実的です。
そこで本稿では、AI時代に人が仕事を失わず、むしろ価値を発揮し続けるための働き方について考えていきます。
使い手がいなければAIは活躍できない
いかにAIが優秀であっても、それだけで勝手に仕事を完成させられるわけではありません。AIは与えられた指示や条件をもとに処理を行うため、何をさせるのか、どのような結果を求めるのかを判断する存在が必要です。AIの性能が高くなればなるほど、この「使い手」の役割が重要になります。
Pythonのコード作成を考えても、AIにコードを書かせること自体は難しくありません。しかし、そこで本当に重要なのは、AIに何を指令するかという部分です。どのような処理を実現したいのか、どのようなデータを扱うのか、どのような条件を設定するのか、最終的にどのようなコードになれば正しいのかをイメージできなければ、AIに適切な指示を出すことはできません。
つまり、Pythonのコードを書く作業そのものをAIに任せられるようになったとしても、Pythonという技術そのものを理解する必要性がなくなるわけではありません。むしろ、AIが出力した内容を適切に導くためには、Pythonについて一定以上の知識を持っていることが求められます。知識がなければ、AIが提示したコードが適切なのか、条件に合っているのか、そもそも何を修正すべきなのかを判断できないからです。
ここで人間に求められるのは、AIに対して目的を伝え、必要な条件を設定し、望む方向へ処理を進めさせる「指令役」としての能力です。AIに何をさせるべきかを決めるには、その仕事についての理解が必要です。したがって、AIを使う仕事では、従来型の技能がそのまま不要になるのではなく、その技能を別の形で活用することになります。
人間がすべてを手作業で行う必要がなくなったとしても、AIを正しく動かすための判断まで機械に任せられるとは限りません。特に専門性の高い領域では、適切な指令を出せる人の価値が大きくなります。AIはあくまで道具であり、道具を使って何を実現するのかを決める主体まで自動的に置き換わるわけではありません。
チェックすべきは成果物だけではない
AIに仕事を任せる場合、最初に必要になるのが、AIが作った成果物を確認する作業です。Pythonのコードであれば、指令した人が内容を確認し、意図した処理になっているか、不要な部分が含まれていないか、想定外の動作につながる部分がないかなどを確認する必要があります。
しかし、確認すべきものは成果物だけではありません。コードそのものに問題がなかったとしても、それによって本来求めていた成果が得られているとは限りません。コードが動くことと、目的を達成することは別の問題です。
さらに、成果が出た後にも確認すべきことがあります。求めていた成果が実際に上がっているのか、それを利用する側がどのように評価しているのか、業務全体として意味のある結果になっているのかを確認しなければなりません。
このように考えると、AIを活用する仕事では、単純に「AIへ指示を出して成果物を受け取れば終了」という構造にはなりません。指示を出す前には、何を求めるのかを整理する必要があります。成果物を受け取った後には、その内容を確認し、さらに実際の目的が達成されたかを判断する必要があります。その一連の流れを成立させること自体が、人間の仕事になります。
そして、AIにより良い指令を出すためには、現在の指令で十分なのかを考え続けることも重要です。結果が期待どおりでなければ、何が足りなかったのかを探し、条件を変え、問い方を変える必要があります。こうした改善点を見つけるためには、業務そのものへの理解が欠かせません。
AIは与えられた条件の中で処理能力を発揮できますが、「本当に確認すべきものは何か」「何をもって成功とするのか」を自ら決めることには限界があります。そこを考え、必要な確認を積み重ねる役割は、人が担うことになります。
使い手の育成
組織の中でAI活用を広げようとする場合、単に高性能なAIを導入するだけでは十分ではありません。AIを適切に使える人を組織内に増やす必要があります。どれほど便利な道具を導入しても、その使い方を理解している人が少なければ、期待した効果を得ることはできません。そのため、AI活用においては「使い手を育てる」という活動そのものが重要になります。
この育成活動をAIに全面的に任せることは困難です。AIは質問に答えたり、教材を作ったり、学習を補助したりすることはできます。しかし、組織の中でどのような人材を育てる必要があるのか、現在どの程度の知識があるのか、どこにつまずいているのか、どのような能力を身につければ実務で使えるようになるのかを総合的に判断するには、人による管理が必要です。
そのためには、Pythonに精通し、なおかつAI活用にも対応できる専門家が講師役を担う必要があります。知識を一方的に伝えるだけではなく、AIを使う際の考え方や、指示を組み立てる際の判断基準まで伝えることが重要です。さらに、受講者が実際にAIを使えるようになったかを確認し、必要に応じて指導方法を修正することも求められます。
ここには、人材育成という明確な人間の仕事があります。AIが高度になればなるほど、AIを使える人と使えない人の差が広がる可能性があります。その差を埋めるためには、教育する側の人材が必要です。AIを導入する組織ほど、AIそのものへの投資だけでなく、それを使いこなす人材を増やすための投資も必要になります。
AIによって既存の作業が効率化されれば、人間が行う仕事の一部は減ります。しかし、それによって新たに必要となる教育、評価、運用、調整などの仕事も生まれます。優れた専門知識と指導力を持つ人には、AI時代だからこそ発揮できる役割があります。
結局、役割分担の問題
ここまでPythonコード作成を題材に考えてきましたが、苦労して身につけたスキルがAIにかなわなくなるという現象は、さまざまな分野で起こり得ます。。しかし、AIの登場によって、その努力の価値が完全に消えるわけではありません。
そもそも、人間が身につけたスキルは、その作業を自分の手で行うことだけに価値があるわけではありません。ある分野について深く理解しているからこそ、AIに何をさせるべきかを判断できます。また、AIが出した結果を評価することもできます。さらに、業務上の目的に照らして、どのような結果なら意味があるのかを考えることもできます。
AIが実働部分を担うようになれば、人間の活動領域が狭くなることは確かです。これまで一人の人間が調査から作成、処理、整理まで幅広く担当していたとしても、その一部をAIに任せることが可能になります。その意味では、人間が直接手を動かす領域は減少していくでしょう。
しかし、活動領域の幅が狭くなったとしても、深さまで失われるとは限りません。AIが広い範囲を素早く処理できるのであれば、人間は特定の領域についてより深く考えることができます。表面的な処理をAIに任せ、その分、人間が専門的な判断や高度な意思決定に集中するという役割分担が可能になります。
したがって、AI時代に必要なのは、人間がAIと同じことをするために競争することではありません。AIが優位に立つ部分はAIに任せ、人間は自分が持つ専門性をより深いところまで磨くことです。役割を奪われるかどうかではなく、AIと人間がどの部分を担当するのが最も合理的なのかを考えることが重要です。
まとめ
AIの能力が急速に高まり、人間がこれまで時間をかけて身につけてきた技能を短時間で処理できるようになっています。そのため、「AIに仕事を奪われる」という不安が生まれるのは自然なことです。しかし、AIが人間より優れた作業能力を持つようになったことと、人間の仕事がなくなることは同じではありません。
AIを仕事に組み込むためには、AIに何をさせるのかを考え、適切な指示を出し、結果を確認し、目的に照らして評価する人が必要です。AIがどれだけ高性能になっても、業務上の目的を理解し、その結果に責任を持って判断する役割まで自動的に消えるわけではありません。
また、AIを組織全体で活用するためには、使い手を育てる必要があります。AIそのものを導入するだけではなく、それを使いこなす知識や判断力を持つ人材を育成することが不可欠です。AIの普及は、人間の仕事を一方的に減らすだけではなく、AIを適切に扱うための新しい役割も生み出します。
これまで身につけてきた専門技能がAIに代替される場面が増えても、その努力が無意味になるわけではありません。実作業をAIに任せることで、人間は専門知識を使った判断や、目的の設定、結果の評価といった、より深い部分に集中できます。
結局のところ、問題は「AIか人間か」という二者択一ではなく、どこをAIに任せ、どこを人間が担うのかという役割分担です。AIと同じことをする必要はなく、AIを使いながら人間にしか担えない判断と専門性を磨くことが、これからの仕事における重要な考え方になります。
当センターではAIを御社の働き方改革にポジティブに活用するための施策を支援しております。下記よりお気軽にご相談ください。

当センターは、弁護士・公認会計士・中小企業診断士・CFP®・ITストラテジストなどの資格を持つセンター長・杉本智則が所属する法律事務所を中心に運営しています。他の事務所との連携ではなく、ひとつの窓口で対応できる体制を整えており、複雑な問題でも丁寧に整理しながら対応いたします。
窓口を一本化しているため、複数の専門家に繰り返し説明する必要がなく、手間や時間を省きながら、無駄のないスムーズなサポートをご提供できるのが特長です。
大阪府を拠点に、東京、神奈川、愛知、福岡など幅広い地域のご相談に対応しており、オンラインでのご相談(全世界対応)も可能です。地域に根ざした対応と、柔軟なサポート体制で、皆さまのお悩みに親身にお応えいたします。
初回相談は無料、事前予約で夜間休日の相談にも対応可能です。どうぞお気軽にご相談ください。
ハラスメントは元を絶たねば意味がない【弁護士×MBAが解説】

ハラスメントがなくならない構造
近年、職場や事業活動における各種のハラスメントが頻繁に報道されています。パワーハラスメント、カスタマーハラスメントをはじめ、立場や関係性の違いを背景とした問題は、社会全体で大きな関心を集めています。
現在では、ハラスメントに関する研修を実施したり、相談窓口を設置したり、社内規程を整備したりする企業は決して少なくないと思われます。従業員に対して注意を促し、問題が起きた際の対応手順を定めている企業も増えています。かつてのように、ハラスメントを単なる個人間のトラブルとして放置するのではなく、組織として対策すべき問題であるという認識は広がっています。
しかし、その一方で、ハラスメントに関する対策が広がっているにもかかわらず、問題がなくなったとは到底いえません。対策を講じているはずの企業や組織でも、新たなハラスメントが発生し、被害を訴える声が後を絶たないことがあります。
ハラスメントを本当に減らすためには、なぜその行為が繰り返されるのか、なぜ問題が起きても適切に解決されないのかという構造に目を向ける必要があります。ハラスメントは個人の資質だけに原因を求めるのではなく、それを生み出し、継続させる土壌がないかを考えることが必要です。
対症療法を繰り返しているだけでは、問題の形が変わるだけで根本的な解決には至りません。発生したハラスメントを一件ずつ処理するだけではなく、そもそもハラスメントが生じやすい状況や、問題が見過ごされやすい仕組みを見直すことが求められます。元を絶つという視点を持って初めて、継続的な改善への道筋が見えてくるのです。そこで本稿ではハラスメントを根から絶つ手法を紹介します。
パワハラは結論ありきで片づけられやすい
数あるハラスメントの中でも、特になくなりにくいものの一つがパワーハラスメントです。パワハラは職場における優越的な立場や人間関係を背景として生じるため、単に「相手を尊重しましょう」と呼びかけるだけでは解決しにくい側面があります。組織には一定の役割分担や指揮命令系統が存在するため、その構造そのものを無視することはできません。しかし、その上下関係が強く意識されすぎると、パワハラが発生しやすい環境が形成されます。
上下関係が厳しい組織では、下位の立場にある人が上位者に対して異議を述べにくくなります。自分の評価や処遇、今後の仕事への影響を考えれば、不満や苦痛を感じていても声を上げることをためらうのは自然なことです。その結果、問題のある言動があっても周囲に伝わらず、上位者自身も自らの行為を問題として認識しないまま状況が続くことがあります。立場の差が大きいほど、問題を問題として表面化させること自体が難しくなります。
さらに、パワハラの解決を第三者を介して行おうとする場合にも、組織内の力関係が影響することがあります。本来、第三者は双方の言い分を公平に確認し、事実関係を整理したうえで判断する役割を担うべきです。しかし、問題となっている上位者が組織内で強い影響力を持っている場合、その第三者に対して直接的または間接的な影響を及ぼし、自身に有利な方向へ話を進めようとするケースがあります。
第三者が形式上は中立であっても、実際には組織内の立場や人間関係から自由でなければ、公平な判断をすることは容易ではありません。上位者の意向を無視することで自分自身の立場が悪くなると考えれば、無意識のうちに判断が偏ることもあります。このような状態では、被害を訴えた側の主張よりも、組織内で力を持つ人の説明が重く扱われる危険があります。
その結果、問題は十分に検証されないまま、上位者にとって都合のよい結論ありきで片づけられることになります。パワハラ対策を考える際には、行為そのものだけでなく、問題の解決過程にまで上下関係が持ち込まれていないかを慎重に見なければなりません。
カスハラは「お金を出した方が上位」という考えを絶対化しがち
カスタマーハラスメントも、対策を講じていてなお繰り返し発生しやすい問題です。顧客からの意見や要望に適切に対応することは事業者にとって重要ですが、その範囲を超えて従業員に過度な精神的負担を与えたり、不当な要求を繰り返したりする行為まで受け入れる必要はありません。それにもかかわらず、カスハラへの対応では、顧客側の主張をどこまで受け止めるべきかという判断が難しくなり、対応が長期化しやすい傾向があります。
カスハラを行う人の中には、一度主張を始めると執拗に繰り返す傾向が見られます。対応する側が何度説明しても要求を変えず、より強い態度で要求を続けることがあります。このような行為の背景には、サービスや商品に対してお金を支払ったのだから、自分の要求は当然に優先されるべきだという考え方が強く存在している場合があります。お金を支払うという事実を、あらゆる場面で相手より優位に立つ根拠として絶対化してしまうのです。
もちろん、事業者が対価を受け取る以上、顧客に対して誠実に対応する責任があります。しかし、対価を支払ったことと、何を要求しても許されることはまったく別の問題です。取引関係は一方だけが絶対的に優位に立つものではなく、双方がそれぞれの役割や責任を果たすことで成り立っています。それにもかかわらず、「お金を出した側が上位である」という発想が強くなると、顧客の要求を無条件に優先する空気が生まれやすくなります。
こうして、お金を出したというただ一つの事実だけを根拠として、顧客優位の展開へと流れやすくなります。本来は取引の内容や相互の責任を踏まえて判断すべきところが、支払者であるという立場だけが過度に重視されるためです。カスハラをなくすためには、顧客を大切にすることと、顧客のすべての要求に従うことを混同しない姿勢が不可欠です。両者を明確に区別できなければ、不当な要求を受け入れ続ける構造そのものが温存されてしまいます。
パワハラは上位者に屈しない第三者の介入が必要
パワハラの根源に上下関係が存在する以上、その問題を解決する過程でも上下関係の影響を受けないようにしなければなりません。組織内で強い立場にある人が関係する問題について、同じ組織の中だけで解決しようとすると、判断する側もさまざまな圧力や配慮から完全に自由になることは難しい場合があります。したがって、パワハラ対策では、上位者に忖度しない人間が適切に介入できる仕組みを整えることが重要です。
重要なのは、問題を訴えた人と訴えられた人のどちらかに安易に肩入れすることではありません。双方の言い分を十分に聞き、必要な情報を整理したうえで、公平な判断を行うことが求められます。そのためには、問題となっている上位者よりもさらに上位の立場にある人が、中立的な立場で双方の言い分を聞くことが有効です。重要なのは、当事者間の上下関係が判断に持ち込まれず、事実に基づいて対応できる環境を確保することです。
また、組織内部だけで中立性を確保することが難しい場合には、顧問弁護士など外部の人間に対応を任せることも必要です。外部の専門家であれば、日常的な社内の人間関係や評価制度から一定の距離を置くことができます。そのため、組織内の力関係に引きずられずに状況を整理しやすくなります。外部に任せることは責任逃れではなく、公平な判断を確保するための選択肢として位置付けるべきです。
上下関係の存在が解決の結論に影響を与えないよう、誰がどのように介入するのかをあらかじめ考え、実効性のある仕組みを整えることが、パワハラを根から減らすために必要です。
カスハラの最終解決はお断りすること
カスハラが長期化する背景には、お金を出した顧客の主張を優先し続けなければならないという固定観念があります。事業者にとって顧客は重要な存在であり、売上を生み出してくれる相手です。そのため、顧客から厳しい要求を受けた場合でも、取引を維持することを優先してしまいがちです。しかし、顧客であるという立場は、事業者や従業員に対して無制限の要求をする権利を意味するものではありません。
カスハラを根本的に解決するためには、対応の限界を明確にする必要があります。どのような要求でも受け入れるという姿勢では、迷惑行為を繰り返す顧客との関係を断ち切ることができません。事業者として受け入れられる要望と、受け入れられない迷惑行為との境界を定め、その基準に従って対応することが重要です。担当者個人の判断に委ねるのではなく、組織として一定のルールを持つことで、対応のぶれを減らすことができます。
そして、迷惑行為が改善されず、通常の取引関係を維持することが難しい場合には、取引そのものをお断りするという選択も必要になります。場合によっては、受け取ったお金を返金したうえで関係を終了させることも考えられます。
売上を増やしたとしても、迷惑顧客への対応に多くの時間と人員を割かなければならなければ、収益性は低下します。一人の顧客への対応が長時間に及べば、その間に本来対応すべき他の顧客へのサービスも滞る可能性があります。また、従業員が精神的に疲弊すれば、組織全体の働きやすさや生産性にも影響します。表面的な売上だけを見て取引の継続を判断することは、経営上も適切とはいえません。
必要なのは、売上至上主義から一歩離れ、自社にとって本当に守るべきものを明確にすることです。適正な利益を確保し、従業員が安心して働ける環境を維持することは、企業が継続的に事業を行うための重要な条件です。断るべき相手には適切に断るという姿勢を持つことで、お金を支払った側が常に優位であるという構造を断ち切ることができます。カスハラをなくすためには、対応を続けることだけを解決策と考えず、関係を終了させる決断も含めて適切な選択をすることが重要です。
まとめ
ハラスメントを減らすためには、問題が発生するたびに個別の行為だけを注意したり、形式的な対策を増やしたりするだけでは十分ではありません。なぜハラスメントが発生し、なぜ問題が起きた後も繰り返されるのかという構造に目を向け、原因そのものを取り除くことが重要です。元となる構造が残ったままでは、一時的に問題が収まっても、別の場面で同じような問題が再発する可能性があります。
パワハラでは、組織内の上下関係が問題の発生だけでなく、問題解決の過程にも影響を及ぼすことがあります。そのため、強い立場にある人の影響によって結論が左右されないよう、公平な立場で判断できる人が関与することが必要です。組織内で十分な中立性を確保できない場合には、外部の専門家を活用することも有効です。問題を処理する側まで力関係に支配されない環境をつくることが、実効性のある対策につながります。
一方、カスハラでは、お金を支払った顧客が絶対的に優位であるという考え方が問題を長引かせることがあります。顧客を尊重することは大切ですが、不当な要求や迷惑行為まで受け入れる必要はありません。事業者として守るべきルールを定め、必要な場合には取引を終了させることも含めて対応することが求められます。
ハラスメント対策で大切なのは、問題を起こした人への対応だけに終始しないことです。問題を生み出す力関係や、問題行動を許容し続ける仕組みが残っていないかを確認し、その根を断つ必要があります。表面的な対処ではなく、ハラスメントが繰り返される原因にまで踏み込むことによってこそ、安心して働き、事業活動を行える環境をつくることができます。
ハラスメントを根源から絶つ方策をご検討の企業におかれましては、ぜひ当センターにお気軽にご相談ください。

当センターは、弁護士・公認会計士・中小企業診断士・CFP®・ITストラテジストなどの資格を持つセンター長・杉本智則が所属する法律事務所を中心に運営しています。他の事務所との連携ではなく、ひとつの窓口で対応できる体制を整えており、複雑な問題でも丁寧に整理しながら対応いたします。
窓口を一本化しているため、複数の専門家に繰り返し説明する必要がなく、手間や時間を省きながら、無駄のないスムーズなサポートをご提供できるのが特長です。
大阪府を拠点に、東京、神奈川、愛知、福岡など幅広い地域のご相談に対応しており、オンラインでのご相談(全世界対応)も可能です。地域に根ざした対応と、柔軟なサポート体制で、皆さまのお悩みに親身にお応えいたします。
初回相談は無料、事前予約で夜間休日の相談にも対応可能です。どうぞお気軽にご相談ください。
債権管理を法律事務所に外注する金融機関が増加のワケ【弁護士×公認会計士が解説】

債権管理を法律事務所に外注する金融機関が増加
近時、債権管理の一部または全部を法律事務所に外注する金融機関が増えています。従来、金融機関における債権管理といえば、担当部署や担当者が債務者に連絡し、支払状況を確認しながら返済を促すという方法が一般的でした。しかし、取引先や顧客の数が多くなるほど、すべての債権について金融機関自身が継続的かつ細かな管理を行うことには限界があります。
特に、返済が遅れている債務者や、今後の回収に注意を要する債務者については、通常の顧客対応とは異なる判断や対応が必要になります。連絡の頻度や内容、支払期限の設定、今後の回収可能性の判断など、担当者には相応の経験と知識が求められます。そのため、一定の段階から債権管理を法律事務所に委託し、金融機関と法律事務所が役割を分担する方式が広がっています。
もちろん、債務者側からすると、これまで金融機関から来ていた連絡が法律事務所から届くことには相応のプレッシャーがあります。そのため、法律事務所への外注には、単に金融機関の業務量を減らすという意味だけではなく、債権管理そのものの実効性を高める意味があります。
さらに、金融機関を取り巻く環境では、顧客数の多さに加えて、債権の種類や管理方法も複雑化しています。すべてを一律に金融機関内部だけで処理することが、必ずしも効率的とはいえません。外部の専門家を適切に組み合わせることで、業務の質を維持しながら管理コストを抑えるという発想が重要になっています。そこで本稿では、金融機関が法律事務所に債権管理を外注する理由を解説します。
支払いを促す効果
金融機関が債権管理を法律事務所に外注する第一のメリットは、やはり支払いを促す効果です。債務者にとって、債権者から支払いを求められること自体は珍しいことではありません。金融機関からの電話や郵便による連絡も、日常的な事務連絡の延長として受け止められてしまう場合があります。その結果、本来は早急に対応すべき滞納であっても、支払いを後回しにする債務者が生じます。
この点、金融機関自身からの連絡と、弁護士または法律事務所からの連絡とでは、債務者が受ける心理的な重みが異なります。法律事務所から通知が届けば、債務者は「このまま支払わなければ、さらに手続が進むのではないか」と考えやすくなります。必ずしも直ちに訴訟や強制執行につながるわけではありませんが、将来的に財産を差し押さえられるなど、より大きな不利益につながる可能性を意識するようになります。
債務者は、必ずしも意図的に支払いを拒んでいるとは限りません。資金繰りの問題や事務処理の遅れなどによって、支払いが後回しになっていることもあります。しかし、債権者との関係が長いほど、「多少遅れても待ってもらえる」という甘えが生じることがあります。
法律事務所が債権管理に入ることには、このような甘えを断ち切る意味があります。もちろん、法律事務所からの連絡だけですべての債権が回収できるわけではありません。しかし、回収に向けた債務者の意識を変化させる効果は無視できません。金融機関にとっては、回収業務の効率を高めながら、担当者が督促に費やす時間を削減できる点にも意味があります。そのため、債権管理の外注において、支払いを促す効果は非常に大きな位置を占めています。
人手不足対応
金融機関が債権管理を法律事務所に外注するもう一つの大きな理由が、人手不足への対応です。金融機関が抱える顧客数は非常に多く、その中には正常に返済を続けている顧客だけでなく、支払いに遅れが生じている顧客や、今後の返済に注意を要する顧客も含まれます。これらをすべて金融機関内部の担当者だけで細かく管理することは、相当に大きな負担になります。
そこで、金融機関がすべての債権を一律に外注するのではなく、要注意先を中心として法律事務所に委託する方法が有効になります。金融機関内部では通常の管理を行い、一定の基準に該当した案件だけを外部に移すことで、内部担当者の負担を抑えることができます。結果として、金融機関は限られた人員を本来優先すべき業務に集中させることが可能になります。
この方式は、法律事務所側にとっても合理性があります。金融機関から委託される案件について、対象となる債権の種類や対応手順をある程度整理することができれば、業務をマニュアル化しやすくなります。すべての案件について一から対応方法を検討するのではなく、一定の基準に従って処理できる部分を増やすことで、効率的な業務運営が可能になります。
人手不足が深刻になるほど、「仕事を減らす」のではなく、「誰がどの仕事を担当するかを組み替える」という発想が重要になります。金融機関が得意とする顧客管理や金融判断と、法律事務所が得意とする法的な債権管理を分担すれば、双方が限られた人材を有効に活用できます。
債権管理は金融機関にとって必要不可欠な業務である一方、すべてを自社で抱える必要がある業務ではありません。専門性を要する部分を外部に切り出すことで、内部の人員不足を補いながら業務を継続できます。このような役割分担が可能であることが、法律事務所への債権管理外注を進める重要な要因となっています。
法的手段への円滑な移行
法律事務所に債権管理を外注する案件は、基本的には要注意先です。正常に返済が行われている債権まで外部に委託する必要性は高くありません。問題となるのは、支払いが滞り、通常の督促だけでは解決が難しくなった案件です。このような案件では、単に連絡を続けるだけでなく、状況に応じて次の対応を判断する必要があります。
金融機関にとって、訴訟提起などの法的手段は、常に最初に選択するものではありません。裁判手続には費用や時間がかかり、担当者の負担も発生します。しかし、だからといって、法的手段を取るべき場面で躊躇することが適切とは限りません。債務者の財産状況や対応状況などから、任意の交渉だけでは回収が難しいと判断される場合には、適切な時期に法的手段へ移行する必要があります。判断を先延ばしにすることで、回収可能性が低下することもあるためです。
法律事務所に債権管理を委託していれば、日常的な管理の段階から案件の状況を把握してもらえます。そのため、単に「支払いが遅れている」という事実だけではなく、その後の連絡状況や債務者の対応などを踏まえて、今後の対応を検討しやすくなります。法的手段への移行が必要な案件についても、判断を大きく遅らせることを防ぎやすくなります。
また、法的手段にはさまざまな選択肢があります。どの手段を採用することが適切なのかは、債権額、証拠関係、債務者の状況、回収可能性などによって異なります。金融機関の担当者だけで判断することが難しい場合でも、法律事務所に委託していれば、法的な観点から選択肢を整理してもらうことができます。
つまり、法律事務所への外注は、任意の支払いを促す段階だけでなく、必要な場合に法的な回収へ移行するための体制を整えるという意味でも有効です。法的手段を過度に恐れる必要も、反対に安易に選択する必要もありません。案件ごとの状況を継続的に確認し、適切な時期に適切な手段を選ぶための専門的な判断を組み込みやすいことが、外注の重要なメリットとなります。
破産対応
債権管理を行っていると、最終的に債務者の資力が大きく低下し、債務の履行が難しくなるケースがあります。その場合、債務者が破産手続を申し立てることもあります。金融機関にとって、債務者の破産は通常の返済管理とはまったく異なる対応を求められる場面です。単に支払いを求めるだけではなく、裁判所を介した手続に対応する必要が生じるからです。
債務者が破産した場合、債権者には一定の手続上の対応が必要になります。代表的なものが、破産手続における債権届の提出です。金融機関が有する債権について、金額や内容を確認し、必要な資料を整えたうえで手続に対応しなければなりません。通常の債権管理とは異なる専門的な知識が必要になるため、担当者にとって負担の大きい業務になります。
このような業務には、一定のスキルを持った人材が必要です。金融機関の担当者がすべての法的手続について習熟するには、教育や経験の蓄積が必要になります。破産案件が継続的に発生するとは限らない場合には、内部に専門人材を常時配置することが必ずしも効率的とはいえません。
そこで、債権管理を委託している法律事務所に、破産対応までまとめて依頼することには大きな意味があります。通常の債権管理から破産手続への移行までを同じ外部専門家に任せることができれば、金融機関側で新たに案件を引き継ぐ必要が少なくなります。これまでの経緯や債権の内容を把握している法律事務所が、そのまま必要な手続に対応できるためです。
債権管理では、通常の返済が続く案件だけを見ていればよいわけではありません。返済困難から法的整理へ移行する案件も含めて、債権の状態に応じた対応が求められます。そのため、破産という特殊な局面まで含めて業務を任せられることは、法律事務所に債権管理を外注する大きなメリットの一つです。
まとめ
金融機関による債権管理の法律事務所への外注は、単に「督促を外部に任せる」という単純な話ではありません。金融機関が限られた人員と時間を有効に使いながら、債権管理の実効性を高めるための業務分担として捉える必要があります。
債権管理を法律事務所に委託することで、債務者に支払いを促す効果が期待できます。金融機関からの通常の連絡では対応を後回しにしてしまう債務者に対しても、法律事務所からの連絡によって、債務を放置することの重大性を認識させやすくなります。
また、多数の顧客を抱える金融機関にとって、すべての債権を自社だけで管理することは大きな負担です。要注意先など一定の案件を外部に委託すれば、金融機関内部の担当者が担う業務を整理でき、人手不足への対応にもつながります。法律事務所側も業務を標準化しやすくなり、双方に効率化のメリットが生まれます。
さらに、継続的に案件を管理してもらうことで、法的手段が必要になった場合の移行も円滑になります。案件の経緯を把握した法律事務所が対応するため、必要な手続を判断しやすく、金融機関側の引継ぎ負担も抑えられます。
そして、債務者が破産した場合にも、債権届の提出など専門性を要する手続に対応してもらえます。通常の債権管理だけでなく、その後に発生する法的手続まで一貫して任せられる点は、外注の大きな価値です。
今後、人手不足が続く中では、金融機関がすべての業務を内部だけで抱え込むことには限界があります。重要なのは、金融機関自身が担うべき業務と、専門家に任せるべき業務を適切に切り分けることです。債権管理についても、法律事務所を単なる督促の代行先としてではなく、回収業務を支える専門的な外部リソースとして活用することが、効率的な金融機関経営につながっていきます。
当センターでは債権管理の外注業務は請け負っておりませんが、個別の債務者に対する債権管理業務には対応しております。下記よりお気軽にご相談ください。

当センターは、弁護士・公認会計士・中小企業診断士・CFP®・ITストラテジストなどの資格を持つセンター長・杉本智則が所属する法律事務所を中心に運営しています。他の事務所との連携ではなく、ひとつの窓口で対応できる体制を整えており、複雑な問題でも丁寧に整理しながら対応いたします。
窓口を一本化しているため、複数の専門家に繰り返し説明する必要がなく、手間や時間を省きながら、無駄のないスムーズなサポートをご提供できるのが特長です。
大阪府を拠点に、東京、神奈川、愛知、福岡など幅広い地域のご相談に対応しており、オンラインでのご相談(全世界対応)も可能です。地域に根ざした対応と、柔軟なサポート体制で、皆さまのお悩みに親身にお応えいたします。
初回相談は無料、事前予約で夜間休日の相談にも対応可能です。どうぞお気軽にご相談ください。
女性登用のために企業が変えるべき事【弁護士×MBAが解説】

人手不足の切り札
人手不足が深刻化する現在、企業にとって重要なのは、限られた人材を奪い合うことではなく、これまで十分に活用できていなかった人材を戦力として生かすことです。その中でも大きな可能性を持つのが女性です。労働力人口が減少していく社会では、女性が持つ能力や経験を十分に引き出せるかどうかが、企業の人材確保に直結します。
そもそも、仕事を遂行する能力について、男性だから高く、女性だから低いという合理的な差があるわけではありません。にもかかわらず、企業社会では長年にわたり、男性を中心に重要な仕事や責任あるポジションを担わせる傾向が続いてきました。その背景には、女性が出産や育児によって仕事から離れる期間を持ちやすく、そのことが本人の能力とは別のところでキャリア形成に影響してきた事情があります。
出産休暇や育児休業を経て職場に戻る女性には、休業前に培った経験や知識が蓄積されています。一定期間、職場を離れていたからといって、それまで身につけた能力が消えるわけではありません。むしろ、企業がその能力を継続的に活用できる仕組みを整えれば、人手不足の中で安定した戦力として機能する可能性があります。
もっとも、従来型の企業の仕組みを維持したまま女性の登用だけを進めても、十分な成果を得ることは困難です。勤務時間、仕事の割り振り、評価、人材登用など、企業活動の基本的な考え方そのものに見直すべき部分が存在します。女性を単に採用人数や管理職比率の数字として捉えるのではなく、能力を持つ人材として適切に活用する視点が必要です。そこで本稿では、女性を登用するために企業が変わるべきポイントを解説します。
長時間労働優先の業務体制
日本企業には、長い時間働くことを前提として仕事を組み立てる傾向が根強く残っています。勤務時間の長さが仕事への貢献度と結びつきやすく、会社に長くいることや、必要に応じて残業や休日労働に対応できることが、仕事に対する積極性として評価される場面もあります。しかし、このような業務体制は、勤務時間に制約のある人材を活用するうえで大きな障害となります。
典型的なのは、フルタイム勤務者とパートタイム勤務者との間で、担当する仕事の重要性に差がつくことです。勤務時間が長い人には責任のある仕事が集まり、勤務時間が短い人には補助的な仕事が集まりやすくなります。また、残業や休日労働を厭わない従業員ほど、重要な仕事を任されやすくなる傾向があります。仕事そのものの難易度や本人の能力ではなく、時間的な融通が利くかどうかが、役割の大きさを左右してしまうためです。その結果、家庭の事情などによって勤務時間を限定せざるを得ない人は、能力が十分にあっても重要な業務から外されやすくなります。
このような風土が続くと、時間に制限のある人には、重要性が低く、代替可能で、賃金も比較的安い仕事を割り当てればよいという考え方が組織内に定着してしまいます。すると、短時間勤務者が持っている専門性や判断力、経験といった本来評価すべき要素が見えにくくなります。結果として、本人の能力が活用されないだけでなく、企業にとっても人材投資の効果を十分に得られません。
重要なのは、仕事の価値と勤務時間を切り離して考えることです。長く働けることは一つの勤務上の特性にすぎず、それだけで高い能力を意味するものではありません。同様に、短時間しか働けないことも、その人が重要な仕事を遂行できないことを意味しません。企業が人材を最大限に活用するためには、勤務時間の長さを基準として仕事の重要性を決める発想から離れる必要があります。
女性の登用を進める場合にも、単純に女性が長時間働ける環境を作るだけでは十分ではありません。企業側が従来の長時間労働中心の業務体制を当然と考え続ければ、勤務時間に制約のある優秀な人材ほど、能力を発揮する機会を失ってしまいます。人材を勤務時間ではなく、組織への貢献という観点から捉え直すことが求められます。
女性管理職が少ない
女性の登用を考える際、現在の女性管理職の少なさは大きな課題です。女性は出産や育児によって一時的に仕事から離れたり、勤務時間を制限したりすることがあり、それが長期的なキャリア形成に影響しやすい構造があります。その結果、管理職候補となる年代において、男性と女性の経験や役職に差が生じやすくなります。
この問題が難しいのは、現在の人材登用が過去の組織構造の影響を受けるからです。企業内部の人事評価では、直属の上司や管理職による評価が重要な意味を持つことが少なくありません。日常的な業務上の接点やコミュニケーションを通じて、仕事ぶりや将来性が評価され、その評価が昇進や重要な仕事への配置につながる仕組みです。
しかし、管理職に女性が少なければ、組織内の管理職像そのものが男性中心になりやすくなります。さらに、管理職から見た「将来管理職になりそうな人材」の中に女性が少ない状態が続けば、次の世代の女性管理職も増えにくくなります。こうして、女性管理職が少ないことが、さらに女性管理職を増やしにくくする循環が生まれます。
女性の管理職登用を進めるためには、現在の管理職比率だけを問題にするのではなく、管理職に至るまでの人材育成や評価の過程そのものを見直す必要があります。女性が管理職候補として認識され、重要な業務を経験し、責任ある立場を担う機会を得られる状態を作ることが重要です。管理職になる前の段階で十分な経験を積めなければ、本人に意欲や能力があっても登用につながりません。
そして、この取り組みは短期間で完結するものではありません。女性管理職が少ないという結果だけを見て、急に登用数を増やそうとしても、候補となる人材の育成が追いつかない場合があります。女性が管理職として経験を積み、その評価が次の人材登用に反映される循環を形成することが重要です。女性管理職を増やすことは、単なる人数調整ではなく、企業の人材構造を中長期的に変えていく取り組みとして考える必要があります。
タスク型の仕事と評価
優秀な女性を登用するためには、勤務時間や勤務形態ではなく、その人が何をできるのかという能力に着目することが重要です。仕事を細分化し、それぞれのタスクについて必要な能力を明確にすれば、誰がどの仕事を担うべきかを勤務時間とは別の基準で考えることができます。これは女性の登用に限らず、企業全体の生産性を高めるうえでも重要な考え方です。
従来の日本企業では、一人の担当者が仕事を最初から最後まで抱え、必要があれば長時間働いて処理するという働き方が少なくありませんでした。しかし、必要以上に長時間働くことを「頑張っている」と評価する考え方は、見直す必要があります。長時間労働によって生じる疲労や集中力低下も考えれば、労働時間そのものを評価の中心に置くことは、組織全体の生産性を悪化させる可能性があります。
そこで、重要な仕事については、必要な能力を持つ人に適切に割り当てるという発想が有効になります。能力の高い人が勤務時間に制約を抱えていたとしても、その人が担当できる重要なタスクを任せることは可能です。そのうえで、特定の人にしかできない仕事と、時間に余裕のある人が対応できる仕事を切り分ければ、組織として仕事を効率よく分担できます。
この考え方では、フルタイム勤務者が重要な仕事を独占する必要はありません。能力を持つ人に必要なタスクを任せ、残った業務をフルタイム勤務者が空いた時間で処理するという分担も成立します。重要なのは、誰が何時間会社にいるかではなく、誰がどの仕事に適した能力を持っているかです。
評価制度についても、勤務時間より成果を重視する方向へ変える必要があります。もちろん成果だけでは測れない業務もありますが、少なくとも「長く働いたこと」そのものを高く評価する仕組みからは距離を置くべきです。何時間働いたかではなく、何を成し遂げたのか、どのような価値を組織にもたらしたのかを評価することが、人材の能力を正しく生かすための基本になります。
能力の高い人材はいくらいても良い
どのような業界であっても、能力の高い人材はいくらいても困るものではありません。企業にとって人材は単なる人数ではなく、価値を生み出す源泉です。市場環境が変化し、業務内容が高度化するほど、個々の従業員が持つ専門性や判断力、問題解決能力の重要性は高まります。そのため、能力のある人材を確保し、適切な役割を与えることは、企業経営において極めて重要です。
ところが、優秀な人材を採用したり確保したりするだけでは十分ではありません。本人の能力に見合った仕事を与えず、組織の中で眠らせてしまえば、企業にとって大きな損失となります。いわゆる飼い殺しの状態では、本人が持つ能力が成果につながらず、本人の意欲も低下しやすくなります。能力の高い人材ほど、適切な仕事を与えられなければ、その存在価値を企業内で十分に発揮できません。
女性についても同じことがいえます。女性だからという理由で重要な仕事を任せないことや、パートタイム勤務だからという理由だけで能力を低く評価することは、現代の企業経営において明らかに合理性を欠く考え方です。勤務形態は仕事に投入できる時間を示すものであって、その人が持つ能力や経験の高さを直接示すものではありません。
むしろ人手不足が進む状況では、企業が自ら人材の活用範囲を狭めることは大きなリスクになります。採用市場から優秀な人材を確保することが難しくなるほど、既に社内にいる人材の能力をどこまで引き出せるかが重要になります。女性の登用を進めることは、女性のためだけの施策ではなく、企業が持つ人的資源を最大限に活用するための経営戦略でもあります。
企業に求められているのは、女性を特別扱いすることではありません。能力の高い人材に性別や勤務形態による先入観を持ち込まず、適切な役割を与えて活用することです。その結果として女性の登用が進むのであれば、それは企業にとっても健全な人材活用が実現した証拠といえます。能力のある人材を見つけ、適切な仕事を与え、その成果を正当に評価する。この意識を企業全体で持つことが、人手不足の時代における人材戦略の基本になります。
まとめ
女性登用を進めることは、単なる人事制度上の目標ではありません。人手不足が深刻になる中で、企業が持っている人材の能力を最大限に活用するための経営課題です。男性と女性の間に能力そのものの優劣があるわけではないにもかかわらず、出産や育児による勤務上の制約がキャリア形成に影響し、それが仕事の割り当てや評価の差につながっているのであれば、企業側がその構造を見直す必要があります。
特に、長時間労働を前提とした業務体制は、勤務時間に制約のある人材の能力を活用するうえで大きな壁となります。重要な仕事を長時間働ける人に集中させるのではなく、能力に応じて仕事を分担し、勤務時間とは別の基準で成果を評価することが重要です。
また、女性管理職が少ない状態を放置すれば、人材登用の循環も変わりません。女性が重要な仕事を経験し、評価され、責任ある立場へ進める環境を継続的に整えることが必要です。
女性登用の本質は、女性だけを優遇することではありません。性別や雇用形態ではなく、能力と成果に着目して人材を配置することです。企業にとって能力の高い人材はいくらいてもよく、その能力を眠らせておく余裕はありません。女性を戦力として生かすために必要なのは、女性に合わせて仕事を軽くすることではなく、能力を発揮できる仕事を適切に任せることです。
企業が変えるべきなのは、女性そのものではなく、人材を見る側の仕組みです。勤務時間の長さではなく成果を見る、属性ではなく能力を見る、そして一度決めた役割に人材を固定するのではなく、その時々の能力に応じて仕事を任せる。この発想へ転換できれば、女性登用は人手不足対策にとどまらず、企業全体の生産性と競争力を高める取り組みになります。
当センターでは、女性登用のプロセスや課題解決にご協力いたします。下記よりお気軽にご相談ください。

当センターは、弁護士・公認会計士・中小企業診断士・CFP®・ITストラテジストなどの資格を持つセンター長・杉本智則が所属する法律事務所を中心に運営しています。他の事務所との連携ではなく、ひとつの窓口で対応できる体制を整えており、複雑な問題でも丁寧に整理しながら対応いたします。
窓口を一本化しているため、複数の専門家に繰り返し説明する必要がなく、手間や時間を省きながら、無駄のないスムーズなサポートをご提供できるのが特長です。
大阪府を拠点に、東京、神奈川、愛知、福岡など幅広い地域のご相談に対応しており、オンラインでのご相談(全世界対応)も可能です。地域に根ざした対応と、柔軟なサポート体制で、皆さまのお悩みに親身にお応えいたします。
初回相談は無料、事前予約で夜間休日の相談にも対応可能です。どうぞお気軽にご相談ください。
中小企業のマタハラ対策【弁護士×中小企業診断士が解説】

中小企業ではマタハラ対策にまで手が回りにくい
中小企業では、職場におけるハラスメント対策の重要性が広く認識されるようになっています。特に、パワーハラスメントやカスタマーハラスメントについては、社内でのルールを整備したり、従業員に研修を実施したりする企業も増えています。しかし、ハラスメント対策を幅広く進めようとすると、どうしても優先順位がつけられ、妊娠・出産を理由とする嫌がらせ、いわゆるマタニティハラスメントへの対応まで十分に手が回っていない企業も少なくありません。
中小企業では、大企業と比べて一人ひとりの従業員が担う役割が大きいという特徴があります。大企業であれば、妊娠した従業員の業務を別の部署へ移したり、人員を入れ替えたりすることで、一定程度の影響を吸収できる場合があります。ところが、もともと少人数で事業を運営している中小企業では、たった一人の従業員が妊娠し、勤務時間や業務内容に一定の配慮が必要になるだけでも、組織全体の稼働力に大きな影響が及ぶことがあります。
もちろん、残された従業員に負担が生じること自体は否定できません。仕事を引き継ぐ人の負担が増えたり、予定していた業務の進め方を変更したりする必要が生じたりすることもあります。そのため、経営者や管理職が「なぜこの時期に」と苛立ちを感じてしまうこともあるでしょう。しかし、その苛立ちを妊娠した従業員に向け、組織内で悪役のように扱ったり、嫌味を言ったり、働きにくい環境を作ったりするのは筋違いです。
妊娠という事情によって組織運営上の調整が必要になったとしても、それは従業員個人を責めることで解決する問題ではありません。企業として必要なのは、従業員の妊娠を理由に不利益な扱いや嫌がらせが生じないようにしながら、事業運営も維持するという両方の課題に向き合うことです。
そこで本稿では、中小企業でこうしたマタハラをなくすための方策を解説します。
こんなことしていませんか
マタハラは、露骨な暴言や明確な嫌がらせだけによって生じるものではありません。本人としては冗談や軽い声掛けのつもりであっても、妊娠した従業員にとっては強い精神的負担になることがあります。そのため、職場で交わされる言葉についても、妊娠を理由として相手を傷つけたり、職場に居づらい思いをさせたりするものになっていないか注意が必要です。
典型的なのは、妊娠した従業員に対して「これからゆっくり休めて羨ましい」などと揶揄する発言です。本人にとって妊娠や出産に伴う休業や勤務上の配慮は、単なる休暇や負担軽減ではありません。身体的な変化や生活上の調整を伴う大きな出来事です。それを「楽ができる」という意味に置き換えてしまえば、本人が抱えている事情を軽視することにつながります。
また、「お前のせいで他の従業員が迷惑を被っている」などと伝えることも適切ではありません。少人数の組織では、一人の従業員が業務から離れることで、他の従業員の仕事量が増えることがあります。その現実を無視する必要はありませんが、その負担を妊娠した従業員個人の責任として追及することは別問題です。
そもそも、妊娠は必ずしも企業の都合に合わせて計画的に生じるものではありません。仕事の繁忙期や人員配置の状況を見ながら、妊娠する時期を完全に調整できるわけではない以上、「今は困る」という会社側の事情だけを基準に考えることには限界があります。企業活動に影響が生じる場合には、その影響をどう処理するかを組織として考える必要があります。
そして、職場で大切なのは、新たな生命の誕生という出来事に対して、まず素直に祝福する気持ちを表せることです。妊娠した従業員が安心して報告できる環境は、本人だけでなく、周囲の従業員にとっても健全な職場環境につながります。妊娠を「迷惑な出来事」と受け止めるのではなく、一人の従業員の人生における重要な出来事として尊重する姿勢が求められます。
基本は人事で対応
妊娠した従業員については、身体的な事情などを踏まえ、過重な労働を強いることがないよう配慮する必要があります。その結果として、これまで本人が担当していた業務の一部を他のメンバーが引き受けなければならないこともあります。中小企業では一人あたりの担当範囲が広いことも多いため、業務のカバーは簡単ではありません。
だからこそ、こうした問題を当事者同士の感情のぶつかり合いにしてはいけません。基本となるのは、人事部門など会社側が中心となって業務体制を整理することです。必要に応じて増員を検討したり、配置転換を行ったり、担当業務を組み替えたりすることで、妊娠した従業員に過剰な負担を集中させず、同時に組織全体の業務が滞らないように調整します。
もちろん、配置転換や担当変更によって影響を受ける従業員が出ることはあります。これまで担当していなかった業務を引き受けることになれば、仕事を覚える負担も生じます。従来の担当業務を変更することになれば、不満を感じる人が出ることも考えられます。中小企業では人員に余裕がないため、こうした負担を完全になくすことは容易ではありません。
しかし、そこで生じた不満を妊娠した従業員に向けてしまえば、組織として問題を解決するどころか、職場内の関係を悪化させることになります。従業員同士が「自分ばかり負担させられている」という感情を抱くこともあるでしょうが、その不満を特定の従業員への攻撃に変えてしまうことは避けなければなりません。
企業として重要なのは、妊娠という出来事に対してマイナスの感情を持つのではなく、必要な調整を会社の仕事として受け止める姿勢です。妊娠した従業員を責めるのではなく、業務上必要となる変更を組織として処理するという考え方を共有しておくことが大切です。
そのためには、個々の従業員の善意だけに頼るのではなく、会社として妊娠・出産を尊重する考え方を明確にしておく必要があります。従業員の妊娠に対してマイナスな感情を持たず、ポジティブに受け止められる組織風土をあらかじめ形成しておくことが、円滑な職場運営につながります。
急な対応には限界がある
中小企業でマタハラ対策が進みにくい背景には、妊娠の報告を受けてから短期間で組織の体制を変更することが難しいという事情があります。中小企業はもともと必要最小限の人員で事業を運営しているケースが多く、一人分の業務を吸収できるだけの余力を持っていないことも珍しくありません。
特に、人員の増員は簡単ではありません。採用活動を始めても、すぐに適切な人材が見つかるとは限りません。採用できたとしても、業務内容を理解して一人前に仕事を担えるようになるまでには時間がかかります。単純に「一人足りなくなったから一人採用する」というだけでは、短期間の問題を解決できない場合があります。
配置転換についても同様です。中小企業では従業員数が少ないため、配置を変更できる人材の選択肢そのものが限られています。ある従業員を別の仕事に移せば、その従業員がもともと担当していた仕事を別の人が引き受ける必要があります。そのため、一つの配置変更が別の業務への影響を生み、全体の調整が必要になることもあります。
こうした事情を考えると、従業員側からは、妊娠が判明した場合に可能な範囲で早めに会社へ報告することが望まれます。早い段階で情報が共有されれば、会社側も今後の勤務体制を検討するための時間を確保できます。急に業務を引き継がなければならない状況を避けることができれば、周囲の従業員に生じる負担を抑えることにもつながります。
一方、会社側にもできることがあります。上司が日頃から従業員と定期的に面談し、仕事上の困りごとや勤務についての希望を把握する機会を設けることです。もちろん、妊娠の有無を不適切に尋ねることは避けなければなりません。しかし、従業員が相談しやすい環境を整え、必要な事情を安心して伝えられる関係を作ることには意味があります。
マタハラ対策は、問題が発生してから慌てて対応するだけでは十分ではありません。中小企業ほど、限られた人員で業務を回しているからこそ、早期に情報を共有し、組織として落ち着いて対応できる状態を作っておくことが重要です。
とにかくマイナス評価しない組織風土作り
従業員が妊娠すると、他のメンバーに一定の負担が生じることがあります。仕事を引き継いだり、担当範囲を広げたり、勤務の調整をしたりする必要が生じるためです。中小企業ではもともと余裕のない人員で仕事を回していることが多く、その負担が従業員の不満につながりやすい点には注意が必要です。
問題なのは、その不満が妊娠した従業員に向けられてしまうことです。職場の誰かが「少しくらい嫌味を言っても仕方がない」「露骨な嫌がらせをしなければ問題ない」と考えるようになると、妊娠した従業員に対する揶揄や皮肉が許容される雰囲気が生まれます。こうした状態は、一見すると重大な問題が起きていないように見えても、職場環境を徐々に悪化させます。
さらに、一度不満を特定の従業員に向けることが許されると、その考え方は妊娠以外の事情にも広がりかねません。誰かが休めば「あの人のせいだ」と言い、誰かが配慮を受ければ「自分ばかり損をしている」と不満を持つような組織になれば、従業員同士が互いに支え合うことは難しくなります。不満の転嫁が組織内で連鎖することで、職場全体の雰囲気は次第に悪化していきます。
だからこそ、企業として「妊娠したことを理由に従業員をマイナス評価しない」という姿勢を明確にすることが重要です。妊娠によって一時的に担当できる業務が変わったとしても、それを本人の能力や仕事への姿勢の問題として評価してはいけません。妊娠・出産に伴う事情と、従業員の職務上の価値を切り離して考えることが必要です。
そして、妊娠した従業員に対しては、まず素直に祝福するという文化を作ることが大切です。負担が生じる場合には、それを誰か個人の責任として扱うのではなく、会社全体の運営上の問題として考えます。妊娠をマイナス材料にせず、一人の従業員の人生における喜ばしい出来事として受け止める姿勢を組織全体で共有することが、健全な職場風土につながります。
まとめ
中小企業では、少ない人数で業務を運営しているため、従業員の妊娠によって仕事の分担を変更しなければならないことがあります。その結果、周囲の従業員に一定の負担が生じることは避けられない場合があります。しかし、その負担があるからといって、妊娠した従業員を責めたり、嫌味を言ったり、職場で不利な扱いをしたりすることが許されるわけではありません。
マタハラ対策で大切なのは、妊娠した従業員と、それによって影響を受ける従業員を対立させないことです。会社として必要な業務上の調整を行い、特定の従業員に負担や不満が集中しないように組織を運営する必要があります。人員の増加や配置の見直しなど、企業側が担うべき対応を個々の従業員同士の問題にしないことが重要です。
また、急な対応には限界があるため、必要な情報を早めに共有できる環境も欠かせません。従業員が安心して相談できる職場であれば、会社側も業務体制を検討するための時間を確保できます。中小企業だからこそ、一人の従業員の変化が会社全体に与える影響を踏まえ、早い段階から組織として対応する意識が必要です。
最も重要なのは、従業員の妊娠をマイナス評価する組織風土を作らないことです。妊娠した従業員に対する不満や揶揄を放置すれば、それは別の事情を抱える従業員への不満にもつながります。妊娠・出産を素直に祝福し、必要な業務上の調整は会社の責任として行うという姿勢を共有することが、マタハラの防止につながります。
中小企業では、大企業ほど人員や予算に余裕がないからこそ、制度だけに頼るのではなく、従業員同士が互いの事情を尊重できる職場を作ることが重要です。妊娠した従業員を守ることと、他の従業員の負担を軽減することは、決して対立する課題ではありません。会社が責任を持って両者を調整する姿勢を示すことで、誰もが安心して働き続けられる職場を実現できます。
当センターではマタハラを含む、組織内のハラスメントを撲滅する施策の策定を支援しております。下記よりお気軽にご相談ください。

当センターは、弁護士・公認会計士・中小企業診断士・CFP®・ITストラテジストなどの資格を持つセンター長・杉本智則が所属する法律事務所を中心に運営しています。他の事務所との連携ではなく、ひとつの窓口で対応できる体制を整えており、複雑な問題でも丁寧に整理しながら対応いたします。
窓口を一本化しているため、複数の専門家に繰り返し説明する必要がなく、手間や時間を省きながら、無駄のないスムーズなサポートをご提供できるのが特長です。
大阪府を拠点に、東京、神奈川、愛知、福岡など幅広い地域のご相談に対応しており、オンラインでのご相談(全世界対応)も可能です。地域に根ざした対応と、柔軟なサポート体制で、皆さまのお悩みに親身にお応えいたします。
初回相談は無料、事前予約で夜間休日の相談にも対応可能です。どうぞお気軽にご相談ください。
