意外に難しい?従業員教育の在り方

人財の教育と定着というけれど

企業経営において、人材は最も重要な資源であるといわれます。設備や資金がどれほど潤沢であっても、それを活用する人がいなければ事業は成り立ちません。そのため多くの企業では、優秀な人材を採用し、教育し、成長させ、長く働いてもらうことを目指しています。しかし現実には、採用さえ難しい状況が続いています。全産業的に人手不足が深刻化しており、特に若手人材の確保は競争が激しくなっています。
もちろん、賃金を上げれば人材の確保や定着につながります。しかし企業体力には限界があり、無制限に賃上げできる企業は多くありません。また単純に賃金を上げたとしても、やる気や能力が伴わなければ生産性は向上せず、投資効果が出ないまま企業の収益を圧迫するリスクもあります。現代の人材確保競争は、単にお金の問題ではなく、働きがいや成長実感が得られる環境整備も重要であるということです。
このような環境下では、現有戦力の底上げが求められます。つまり、既にいる従業員の能力を育て、組織としての総合力を高めていく取り組みが不可欠になります。しかし実際には、「従業員教育が大事だ」と言われながら、具体的にどう取り組めばよいのか悩んでいる経営者や管理職が多いのも事実です。従業員教育には時間とリソースが必要であり、目の前の業務に追われる中で体系的な育成プランを設計する余裕がない企業も少なくありません。
さらに、「人を育てたい」意思があっても、育てられる側の価値観が多様化していることも、教育の難しさにつながっています。世代間の働き方に対する意識の違いや、キャリア観の差異が存在し、一律の育成方法が機能しなくなっています。そのため、従業員教育は重要であると理解しつつも、どこから手をつけるべきか判断できず、結果として場当たり的な対応になってしまうケースも多いでしょう。
そこで本稿では、こうした状況をふまえ、従業員教育の基本的な考え方や、現代の企業が置かれている環境に適した教育の在り方について整理していきます。まずは従来の教育手法がどのように変質し、なぜ従来手法が通じにくくなっているのかを見ていきます。

従前のOJTは若手に避けられがち

従来、多くの企業では従業員教育といえばOJT(On-the-Job Training)が中心でした。実際の業務を通じて必要なスキルを身につけさせる方法であり、特に中小企業ではこの方式が基本だったといえます。まず新人に業務を任せ、結果に対して先輩が指導し、改善すべき点をフィードバックする。それを繰り返すことで実務能力を育てる手法は、即戦力化の観点から見ると非常に合理的でした。
ところが近年、このOJTが若手に敬遠される傾向が強まっています。理由として、フィードバックが「ダメ出し」に聞こえ、心理的負担を感じてしまう若手が増えていることが挙げられます。従来であれば、「叱られるのは当然」「改善して成長しなければならない」という意識が一般的でした。しかし今の若手の中には、否定されたと感じることでモチベーションが低下したり、指摘をパワハラと受け止めたりする例もあります。
もちろん、若手全員がそのような感受性を持つわけではありません。しかし、組織として人材教育を考える場合、育成対象者の価値観の傾向を無視するわけにはいきません。そのため、従来の「見て覚えろ」「やって覚えろ」という形式は敬遠され、丁寧な事前説明や心理的な安心感の確保が求められるようになっています。若手を雇う企業ほど、OJTの比重を下げ、座学や事例学習など別の教育方法を取り入れる傾向が出ています。
とはいえ、OJTを全否定するのは現実的ではありません。仕事は現場で学ぶものという側面は依然としてあります。ただし、従来のOJTが通用しなくなってきている背景を正確に理解することが必要です。教育する側にもコミュニケーション能力が求められ、単に業務を教えるだけではなく、相手の心理状態や理解度を踏まえた柔軟な対応が不可欠になっています。従業員教育は、単なる技術伝達ではなく、関係構築と並行して進めるべき活動へと変化しています。

マニュアル化は非効率

従来のOJTに抵抗感を持つ若手の中には、「マニュアルさえあれば、自分でできるのに」と考える人も少なくありません。確かに、明確な手順書があれば、何をすれば良いのか迷う時間が減り、心理的負荷も軽減されます。そのため、業務マニュアルの整備は有効な教育ツールであるかのように見えます。
しかし、実際にはマニュアル作成には多大な手間とコストがかかります。業務内容を整理し、例外対応を含めた手順書をつくる作業は、経験豊富な社員が担当することが多く、結果として彼らの本来の業務生産性が下がってしまいます。マニュアルによる教育効果と、作成に伴う機会損失を比較したとき、必ずしも合理的とはいえません。
さらに現代のビジネス環境は変化が早く、マニュアルがすぐに陳腐化してしまうリスクもあります。市場の変化、顧客ニーズの変動、法規制のアップデートなどに応じてマニュアルを更新し続ける必要があり、維持管理コストが恒常的に発生します。ある時点で最適だった手順が、半年後には非効率になることも珍しくありません。
またマニュアル依存の弊害として、受動的な姿勢が生まれやすい点も指摘できます。マニュアル通りに作業することはできても、状況に応じて判断し、柔軟に行動する経験が乏しい従業員が育ってしまう可能性があります。企業が求めるのは、指示をこなすだけの人材ではなく、変化に対応し価値を創造できる人材です。マニュアル整備は必要な場面もありますが、万能ではなく、むしろ教育効果を阻害することもあります。
このように、マニュアル化は一見わかりやすく合理的に見えて、実際には非効率であることが多いのです。効果的な教育には、単なる手順情報以上の知識や姿勢が必要であり、柔軟思考や問題対応力を養う環境作りが欠かせません。

必要なのは目先の業務スキルではなく

仕事に必要なスキルと聞くと、多くの人がまず「業務をこなすための具体的な技術」を思い浮かべます。しかし、現在の企業にとって重要なのは、単に業務手順を遂行できる能力だけではありません。そのような能力は、時間をかければ誰でも習得でき、そうした人材は採用市場においても比較的容易に補充可能です。
現代の組織が求めるのは、ソフトスキルやコンセプチュアルスキルの高い人材です。コミュニケーション能力、課題設定能力、チームワーク、創造性、論理的思考、そして不確実性の中で適切に判断できる洞察力など、業務手順とは異なる要素が求められています。これらは一朝一夕に身につくものではなく、継続的な経験と学習を通じて育む必要があります。こうしたスキルを有することで周囲の人間やAIをうまく活用して大きな成果をあげることができます。
さらに、企業にとって最も価値あるのは、将来の中核人材となる人材です。管理職やリーダーとして組織を牽引できる人材を育てることは、企業の競争力につながります。そのためには、単に仕事を覚えさせるだけでは不十分であり、視野を広げ、理念や戦略を理解し、自立的に考え行動できる力を伸ばすことが重要です。
教育担当者は、「今の業務ができる人」ではなく「未来の組織を支える人」を育てるという視点を持つことが必要です。目先の効率を求めすぎると、長期的な成長機会を奪いかねません。従業員教育は、短期成果と長期投資のバランスを見極めつつ、能力開発を進めることが求められるのです。

企業としてどんな従業員であってほしいか

従業員教育の理想形を考える際、最も重要なのは企業がどのような人材を望んでいるかというビジョンです。どのような価値観を持ち、どのような姿勢で仕事に臨み、どの程度の責任やスキルを期待するのか。これが明確であれば、教育の方向性も自ずと定まります。教育はあくまで手段であり、目的は組織の将来像と一致する人材を育てることにあります。
もちろん、従業員自身にもキャリアプランがあります。企業のビジョンと従業員の希望が一致しなければ、いずれ双方にとって望ましくない結果につながります。特に近年は転職市場が活発化し、自分の価値観に合わない環境を離れる選択が容易になっています。そのため一致しない従業員が離職することは避けられず、むしろ自然な現象として受け止める必要があります。
重要なのは、企業のビジョンと従業員の志向が一致する層を見極め、その層に対して適切な教育機会を提供し、共に成長できる環境を整えることです。教育は「全員に同じことを教える」ものではなく、方向性の合う従業員とともに未来をつくるための投資です。価値観が一致し、長期的に成長意欲を持つ人材にリソースを集中し、互いに納得できる成果を創出することが、人材育成の本質といえます。
企業は人を選び、従業員も企業を選びます。その双方が同じ方向を見ることで、教育は最大の効果を発揮します。従業員教育とは、単なるスキル指導ではなく、組織文化の共有と未来への共創プロセスです。

まとめ

従業員教育はかつてのように単純ではありません。人材不足、価値観の多様化、変化の激しい市場環境など、企業を取り巻く状況は大きく変わり、従来の手法では通用しない場面が増えています。OJTの形式も見直しが求められ、マニュアル化が万能ではないことも明らかです。必要なのは、単に業務をこなす力ではなく、未来を創る能力を備えた人材を育てる視点です。
企業は、自ら望む人材像を明確に描き、そのビジョンと従業員の志向が重なる領域に重点を置いて育成するべきです。「誰でも育てる」のではなく、「共に未来をつくりたい人を育てる」という考え方が鍵となります。従業員教育とは、企業が生き残り成長し続けるための戦略的な投資であり、長期的な視点で取り組むべき重要課題です。
当センターではこうした観点から、御社の大事な人財教育を総合的に支援させていただきます。下記よりお気がるにご相談ください。

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