退職代行時代における人材定着の本質

退職代行業者から突然の連絡が!本当に困るのは

企業にとって、退職代行業者から突然連絡が入り、「本日付で退職したいと言っています」と告げられる状況は大きな衝撃をもたらします。普段顔を合わせて働いていた従業員から直接ではなく、第三者から一方的に退職の意思が届けられるだけで、多くの担当者が動揺や困惑を覚えるのは当然のことです。とりわけ、急な退職は現場の業務に直接的な穴を開け、同僚や管理職の業務負担を増大させます。この「突然の空白」が企業にとって深刻であり、どうにか退職を撤回してもらおうと強く求めたり、退職代行業者に対して感情的な態度を取ったりするケースが少なくありません。
しかし、退職代行業者と衝突しても、本質的な解決にはつながりません。むしろ対立が長期化すると、労務リスクが増大し、企業側が不利になる展開さえあります。また、退職の意思を持った従業員が、企業側の都合だけで翻意するケースは極めて稀です。外部の代行業者を通じて退職を申し出る段階まで追い詰められているケースも多く、気持ちが大きく離れた従業員を引き止めても、再び同じ問題が発生する可能性が高いといえます。
そもそも、人材定着という観点で本当に困るのは「個人が辞めた事実」よりも、その背後に潜む「辞めざるを得ない職場環境」が改善されないことです。退職代行から突然連絡が来るという事態が頻発する企業は、組織内部に何らかの問題を抱えていることが多く、これを無視したまま数合わせで引き止めを行っても根本的な解決には至りません。
そこで重要なのは、退職代行業者と敵対するのではなく、むしろ情報提供の窓口として活用する姿勢です。退職代行は、本人が会社に直接言えなかったことを代わりに伝える役割も担っています。会社側はその情報を真摯に受け止め、自社の抱える課題を把握する機会として最大限に活用すべきなのです。そこで本稿では、こうした視点から人材定着のために企業が本当に取り組むべきことを解説します。

退職するには理由がある

退職は従業員にとって決して軽い選択ではありません。誰もが働いて給料を得なければ生活を維持できず、現代が売り手市場といわれる状況であっても、転職活動にはリスクが伴います。転職の準備期間中には無職の期間が発生する可能性があり、キャリアの空白が生じてしまうことは多くの求職者にとって避けたい事態です。つまり、合理的に考えれば「特段の理由もなく退職する」という選択はほとんど起こりません。退職に踏み切る背景には必ず何らかの不満や課題が存在します。
しかし企業側は、退職者が出ると「現場が大変になる」「引き継ぎができていない」といった自社の都合を優先しがちです。その結果、退職希望者に対して引き止めを行う際に、本人の不満や事情を聞かず「辞められると困る」という論調で対応してしまうことがあります。これは退職を希望する職員にとって何のメリットもなく、むしろ「会社は自分の不満を理解しようとしない」と感じさせ、離職への意志をさらに強固にしてしまいます。
企業が本当にすべきことは、退職者の声に真摯に耳を傾け、その理由を正確に把握することです。退職希望者が何に悩み、どのような状況で退職を選ばざるを得なくなったのかを知ることは、人材定着の第一歩です。この点で、退職代行業者は貴重な窓口となり得ます。従業員が直接言えなかった本音を代わりに伝えることが多く、企業はこの情報を改善のためのデータとして活用できます。
退職理由を把握し、それに対処することなく、単に人手不足を理由に引き留めることは企業側の一方的な都合に過ぎません。人材の流出を防ぐためには、根本にある原因を解消し、働きやすい職場を整備する必要があります。そのためにも、退職理由の把握と改善は不可欠です。

労務負担の過重はすぐに解消すべき

退職理由として特に深刻なのが「過重労働による疲弊」です。業務量が過度に多い、残業が常態化している、人手不足が慢性化しているといった状況は、従業員に大きなストレスを与えます。こうした負担が蓄積すると離職につながるだけでなく、職場全体の士気も低下し、働き続ける人たちにも悪影響を及ぼします。
労務負担の過重が原因で誰かが辞めると、残された従業員にさらに業務が集中します。たとえば一人の退職によって業務が回らなくなる部門では、他の社員の残業が増え、疲労が蓄積する悪循環が生まれます。こうした状態は組織として非常に危険であり、時間が経つほど離職が連鎖し、職場が崩壊してしまうリスクが高まります。
さらに、労務負担が大きい企業は新たな応募者が集まりにくくなる傾向があります。求人を出しても応募が来ない、面接まで進んでも辞退される、といったケースが増え、ますます人手不足から抜け出せなくなっていきます。このように、過重労働は現在の従業員を追い詰めるだけでなく、未来の採用にも深刻な影響を及ぼします。
したがって、労務負担が重い企業は先手を打って人材補充を行い、業務量を無理なく処理できる体制を整えることが重要です。「今は忙しいので採用できない」「予算がないから急増は難しい」といった理由で対応を先送りすると、状況はさらに悪化します。採用が難しいなら、業務の効率化や外部委託の活用など、負担を軽減するための多角的な対策も必要です。
努力や根性に頼る組織運営は持続不可能であり、その場しのぎを繰り返すほど優秀な人材は離れ、組織の競争力が低下していきます。従業員の労務負担の重さは、退職理由の中でも最も早急に解消すべき問題であり、これに向き合わない企業は長期的に存続が危ぶまれます。

ハラスメントはトップダウンで根絶を目指すべき

退職理由として頻繁に挙がるもう一つの要因が「ハラスメント」です。セクハラ、パワハラ、マタハラなど、さまざまな形態のハラスメントが存在し、その深刻さは千差万別です。特にセクシュアルハラスメントなど犯罪に近接するものは、企業が直ちに排除すべき問題であり、被害者の心身に大きな傷を残す可能性があります。
一方、パワハラや侮辱的言動など、より軽度に見られがちなハラスメントもまた深刻です。仕事ができない従業員を揶揄する、能力不足を公然と責める、無視をするといった行為は、職場の心理的安全性を大きく損ない、被害者を苦しめるだけでなく、職場全体の雰囲気を悪化させます。こうした行為は「注意指導の一環」「教育のため」と正当化されがちですが、その実態は嫌がらせであることが多く、原因となる管理職のマネジメント能力不足が露呈します。
ハラスメントは一律に禁止するだけではなく、職場文化そのものを変えていく必要があります。しかし、現実には「多少の厳しさは必要だ」「昔はもっと厳しかった」といった意識が残っており、トップから明確に方針を示さない限り改善は進みません。そこで重要なのがトップダウンによる強いメッセージです。経営層や管理職が率先して行動し、ハラスメントに対する明確な基準を示すことで、現場は初めて変革に向かいます。
ハラスメントは決して「放置してよい問題」ではありません。放置すれば被害者が退職し、加害者はますます態度をエスカレートさせ、職場の健全性が損なわれていきます。企業が長期的に健全な組織を維持するためには、ハラスメントを見逃さず、少しずつでも減らしていく姿勢が不可欠です。心理的に安全な職場が構築されれば、人材定着率は向上し、社員一人ひとりが力を発揮しやすくなります。

退職理由を把握して企業風土を変革する

人材定着を目指す企業にとって、退職者を減らすことは非常に重要です。しかし、退職者そのものを「悪」と考え、無理に引き止めようとする姿勢は逆効果になります。退職は働く人の自由であり、会社都合で引き止めれば不満を抱えた従業員が社内に残るだけで、職場全体の雰囲気も悪化します。企業が取り組むべきなのは、退職理由を正確に把握し、それを改善することで「辞めにくい職場」ではなく「辞める必要のない職場」をつくることです。
退職理由は、企業の課題を浮き彫りにする重要な情報源です。実際の退職者からのリアルな声は、表面化しにくい社内の問題を映し出します。たとえば「上司のマネジメントが強権的」「評価制度が不透明」「業務量に偏りがある」といった声は、組織の歪みや不公平感を示すサインです。こうした声を収集し分析すれば、企業は自社の弱点を把握し、改善に向けた具体的な施策を打ちやすくなります。
一方、退職者から率直な意見を直接聞き出すのは、企業内部では非常に難しいのが現実です。本人が気まずさを感じて本音を言えない場合も多く、企業側が望む回答をしてしまうことがあります。ここで退職代行業者を活用する意義が生まれます。退職代行は本人の意向を代弁する役割を持っており、本音を伝えることに心理的なハードルが低くなります。そのため、企業は本来聞きにくい退職理由をより正確に把握できます。
退職理由が企業風土に起因していることは珍しくありません。人間関係や評価制度、働き方の柔軟性など、多くの問題は「企業文化」に根ざしています。退職者の声をもとに企業風土を変革することは、長期的な人材定着のために最も効果的な取り組みです。組織文化は一朝一夕に変わるものではありませんが、改善に向けた意識改革は確実に成果を生みます。従業員が安心して働ける環境を整えれば、退職率の低下だけでなく、採用力の向上や社員の生産性向上にもつながります

まとめ

退職代行業者から突然連絡が入り、従業員の退職を知らされるという事態は、多くの企業にとって大きな衝撃をもたらします。しかし、これを単なるトラブルとして片づけるのではなく、企業が自らの課題を見つめ直すきっかけとして捉えることが重要です。退職は従業員が軽い気持ちで選ぶものではなく、その背景には必ず理由があります。企業が真に取り組むべきなのは、退職を阻止することではなく、その理由を理解し改善することです
特に労務負担の過重やハラスメントといった問題は、従業員の退職を引き起こすだけでなく、組織の健全性そのものを揺るがします。これらの問題を放置すると離職が連鎖し、新たな人材確保も困難になります。企業は早期の段階で問題を把握し、労務負担の軽減や職場環境の改善に取り組む必要があります。
また、退職代行業者は対立する相手ではありません。従業員が直接言いにくい本音を伝えてくれる貴重な情報源であり、企業はこの情報を活かして組織改善につなげるべきです。退職理由を正確に把握し、企業風土を前向きに変革することができれば、退職者を減らし、人材が定着する魅力的な組織に変わっていきます。
本稿で述べたように、人材定着は単に人を引き止めることではなく、働きやすい職場をつくる長期的な取り組みです。退職代行が増加している現代だからこそ、退職者の声を企業改善の糸口とし、健全で持続可能な組織づくりを目指すことが不可欠です。
当センターでは退職問題について単に労務管理の課題とはとらえず、経営戦略全体に与える影響を考慮して次の一手を検討し、ご提案いたします。下記よりお気軽にご相談ください。

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