リモートワーク導入を検討する際に意外に見落としがちなこと

従業員からリモートワークの要求が出たらどうする?

リモートワークを希望する従業員は年々増えています。通勤時間の削減による負担軽減、育児や介護との両立、集中しやすい環境の確保など、柔軟な働き方ができる点は大きな魅力です。特に都市部では通勤に片道1時間以上かかるケースも珍しくなく、リモートワークが可能かどうかは生活の質に直結します。そのため、従業員から「リモートワークを認めてほしい」という要望が出ること自体は、もはや特別なことではありません。
また、慢性的な人手不足が続く中、採用活動においてリモートワークの可否が応募者の意思決定に大きく影響する場面も増えています。同じような待遇・仕事内容であれば、より柔軟な働き方ができる企業を選ぶのは自然な流れです。特に若い世代や専門性の高い人材ほど、その傾向は顕著だと言えるでしょう。経営側としても、採用力を維持・強化するためにリモートワークを検討せざるを得ない状況に置かれています。
一方で、リモートワークには不都合も少なくありません。意思疎通の遅れや認識のズレ、チームとしての一体感の低下、管理の難しさなどが指摘され、実際に一度導入したものの、出社を原則とする方向に回帰する企業も増えています。生産性が下がった、若手の育成がうまくいかない、といった声も現場から聞かれます。
このように、リモートワークにはメリットとデメリットが混在しています。従業員の要望があるから、あるいは採用上有利だからという理由だけで安易に導入すると、後になって組織運営に支障を来す可能性もあります。そこで重要になるのが、感情論や流行ではなく、業務の実態を踏まえた冷静な検討です。そこで本稿では、リモートワーク導入を考える際に、意外に見落とされがちな視点を整理し、実務に即した考え方を紹介していきます。

タスクに分解できるのであればリモートワークが便利

業務を検討する際の重要な視点の一つが、その仕事がどこまでタスクに分解できるかという点です。業務を細かなタスクに切り分け、それぞれを個人に割り当てられる場合、その仕事は担当者の中で完結する性質を持っています。このような業務では、途中経過を頻繁に共有する必要がなく、成果物がすべてを物語ります。
個人で完結する仕事の本質は、決められた内容を期限までに正確に仕上げることです。作業場所や時間帯が成果に直接影響しない以上、オフィスにいる必然性は高くありません。むしろ、移動時間や周囲の雑音を排した環境のほうが集中しやすく、結果として生産性が向上するケースも多く見られます。
代表的な例としては、資料作成、データ集計、分析業務、設計や執筆、プログラミングなどが挙げられます。これらは一定の要件と成果物が明確であり、途中で他者の判断を仰ぐ場面が限定的です。こうした業務についてまで出社を求めると、かえって無駄が生じる可能性があります。
また、評価の考え方もこの流れを後押ししています。従来は勤務時間や在席時間が重視されてきましたが、近年は「何をしたか」「どのような成果を出したか」を重視する評価が広がっています。タスク志向の評価は、リモートワークと極めて相性が良く、働き方の柔軟化を制度面から支えます。
重要なのは、リモートワークを例外扱いするのではなく、業務の性質に合った合理的な選択肢として位置付けることです。タスクに分解でき、個人で完結できる仕事については、積極的にリモートワークを認めるほうが、組織全体にとっても効率的だと言えるでしょう。

チーム仕事は適時なコミュニケーションが不可欠

一方で、複数人が関与するチーム仕事では、事情が大きく異なります。チームで業務を進める場合、個々の作業以上に重要になるのが、情報の共有と意思疎通です。全体のスケジュール、進捗状況、優先順位、方針変更などを適時に共有しなければ、チームとしての成果は上がりません。
チーム仕事では、小さな変化や違和感をすぐに共有することが求められます。「少し気になる」「念のため確認したい」といった軽微なやり取りが、結果として大きな手戻りを防ぎます。こうした即時性の高いコミュニケーションは、対面環境のほうが圧倒的に円滑です。
リモートワークでもビデオ会議やチャットによる情報共有は可能ですが、どうしても一手間かかります。会議を設定するほどではない内容でも、オンラインでは心理的なハードルが生じやすく、結果として共有が遅れることがあります。また、文字情報だけではニュアンスが伝わりにくく、誤解が生じやすい点も無視できません。
さらに、チーム仕事では偶発的な会話が重要な役割を果たします。隣の席で交わされる一言や、通りすがりの雑談から重要な気付きが生まれることは珍しくありません。こうした偶発性は、リモート環境では意図的に作り出さない限り生じにくいものです。
そのため、チームとして成果を出す必要がある業務については、出社して行うほうが合理的です。固定席に縛る必要はありませんが、フリーロケーションでチームメンバーが近くに集まり、すぐに声を掛け合える環境を整えることが、生産性向上に直結します。

個別に柔軟に考える必要

リモートワークの議論では、どうしても個人の立場や感情が先行しがちです。リモートワークを希望する人は、通勤時間の浪費や私生活への影響を強調します。一方、出社を重視する人は、コミュニケーション不足や管理の難しさを懸念します。どちらも現実に即した意見であり、単純に優劣を付けられるものではありません。
しかし、こうした主張をそのままぶつけ合っても、建設的な結論には至りません。重要なのは、個人の希望ではなく、業務内容に着目することです。同じ部署や役職であっても、担当業務が異なれば、適した働き方も異なります。
また、社内の力関係や声の大きさによって判断が左右されると、不公平感が生じやすくなります。特定の人の希望だけが通る状況は、他の従業員の不満を招き、組織全体の士気を下げかねません。だからこそ、判断基準を業務内容に置き、誰に対しても説明可能な形で検討することが不可欠です。
採用活動への影響も考慮すべき要素ではありますが、それが判断の中心になってしまうと、本来の業務効率や組織運営がおろそかになります。まずは業務の性質を見極め、その上で働き方を検討するという順序を守ることが重要です。
リモートワークは一律に認めるものでも、一律に否定するものでもありません。業務ごとに個別に、かつ柔軟に考える姿勢こそが、現実的で持続可能な運用につながります。

ルール化せず個別協議

リモートワークの是非を業務内容ベースで判断する以上、全従業員に当てはまる一律のルールを作ることは極めて困難です。業務内容は固定されたものではなく、プロジェクトの進行状況や時期によって大きく変化します。それに応じて、求められる働き方も変わります。
また、従業員自身も常に同じ種類の仕事だけをしているわけではありません。集中して一人で進める作業もあれば、調整や相談が頻発する業務もあります。これらをすべて想定した詳細なルールを作ろうとすると、制度は複雑化し、運用コストが増大します。
ルールが細かくなりすぎると、現場では「ルールに当てはまるかどうか」を判断すること自体が負担になります。その結果、形骸化したり、なし崩し的な運用になったりするリスクも高まります。制度は守られてこそ意味があるため、運用可能性を重視する視点が欠かせません。
そのため、リモートワークについては、細かなルールを定めるのではなく、その時々の業務内容を前提に、上司と本人が個別に協議して決める方法が適しています。業務の性質や進捗を共有した上で、最も合理的な働き方を選択する仕組みを整えることが重要です。
現実的には、「出社が原則だが、個人で完結できる仕事については持ち帰って行ってよい」という考え方が、多くの組織にとってバランスの取れた運用になります。この柔軟さこそが、リモートワークを無理なく活かすための鍵となります。

まとめ

リモートワークは、働き方の自由度を高める有効な手段である一方、万能の解決策ではありません。重要なのは、制度そのものではなく、業務の実態に合った使い方をすることです。従業員の希望や採用上の事情に流されるのではなく、仕事の性質を冷静に見極める視点が欠かせません。
個人で完結できるタスク型の業務と、密な連携が求められるチーム業務とでは、適した働き方は大きく異なります。それにもかかわらず、全員に同じルールを当てはめようとすると、どこかに無理が生じます。だからこそ、一律の制度設計よりも、業務内容に応じた柔軟な判断が重要になります。
また、ルールで縛りすぎないこともポイントです。状況は常に変化するため、個別協議を前提とした運用のほうが、現場の納得感と実効性を高めやすくなります。リモートワークを「権利」や「特典」として扱うのではなく、業務を円滑に進めるための選択肢の一つとして位置付けることが、結果として組織全体の生産性向上につながります。
当センターでは企業の柔軟な働き方の実現のお手伝いもしております。下記よりお気軽にご相談ください。

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