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役に立たない社員についてやってはいけない処遇

組織への貢献度が著しく低い社員の処遇
どのような職場であっても、組織への貢献度が著しく低い社員が存在することは珍しくありません。例えば、明らかに能力不足で与えられた仕事を満足にこなせない人や、基本的なコミュニケーションすら十分にできないためにチームワークを阻害する人などがこれにあたります。組織はチームとして成果を出すことを求められる以上、こうした社員が一人でもいると周囲の業務負担は増加し、全体の生産性が大きく下がってしまいます。さらに、同僚たちがフォローに追われる状況が続けば、努力している人のモチベーション低下を招き、結果として組織全体の士気に悪影響を与えてしまいます。
日本の労働環境においては、このような問題社員の処遇が容易ではありません。その最大の理由は、労働法制にあります。労働契約法や判例の積み重ねにより、解雇は「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が認められなければ無効とされます。つまり、単に「役に立たないから」というだけでは正当な解雇理由にならず、会社側は慎重に対応せざるを得ません。そのため、組織は問題社員をどう扱うかについて頭を悩ませることになります。
この状況に対し、経営者や管理職が取るべき対応は感情的な排除ではなく、段階的で合理的なプロセスに基づいた処遇です。安易に「辞めさせたい」と考えて強硬手段に出れば、法的トラブルを招き、企業の信用すら失いかねません。むしろ、組織に与える悪影響を最小化しながら、本人の適性や意欲を見極める道筋を用意することが求められます。そこで本稿では、このような問題社員に対して企業が取り得る適切な対応を、いくつかのステップに分けて解説していきます。
まずは部署異動で様子を見る
組織への貢献度が低いと感じられる社員に対して、最初に取るべき対応のひとつが「部署異動」です。人は環境によって力を発揮できる場合とそうでない場合があり、現在の部署や職務内容が当人の特性に合っていない可能性があります。したがって、ただ「役に立たない」と決めつけるのではなく、他の部署や異なる業務を経験させることで適性を見直す余地があります。
例えば、コミュニケーションが極端に苦手で周囲と連携する業務ではつまずく社員であっても、一人で集中して完結させる業務であれば成果を出せることがあります。逆に、細かい作業が不得手でも、対人対応に強みを持っている人材もいます。異動によって環境を変えることは、本人にとって新しい可能性を開くとともに、組織としても人材を有効に活用できる機会を提供するものになります。
さらに、部署異動にはもう一つの意味があります。それは、将来的に解雇を検討する場合でも「改善の機会を与えた」という合理的なプロセスを会社として踏んだことの証拠となる点です。法的観点からも、いきなり解雇を行うよりも、まずは異動による改善の可能性を探ることが適切な手順と考えられています。
異動を行う際には、単なる人員整理のためではなく「本人の不得手を軽減し、拠り所となる業務や人間関係を得られる環境を整える」という視点が重要です。適切な配置換えが行われれば、本人が意欲を取り戻し、これまで発揮できなかった能力を引き出せる可能性があります。したがって、部署異動は単なる対症療法ではなく、本人と組織双方にとって有益な試みとなります。
キャリア面談の実施
部署異動を経てもなお状況が改善しない場合、次に重要となるのがキャリア面談です。これは単なる業務指導ではなく、本人が自分の将来像をどう描いているかを丁寧に聞き出す場であり、本人の意識改革を促す機会でもあります。
面談では、まず本人に「今後どのように働きたいのか」「どのようなキャリアを望んでいるのか」を率直に語らせることが大切です。そのうえで、上司が冷静に不足しているスキルや態度を指摘し、改善のために必要な具体的ステップを提示します。本人がこれを理解し、補充していく意欲を示すのであれば、まだ救い上げる余地はあるといえます。逆に、指摘を受け入れず、自ら変わる意思を持たない場合は、組織に居続けても成長や貢献は期待できません。
キャリア面談は、単なる指導の場ではなく「本人の改善意欲の有無を見極める場」でもあります。もし改善意欲が確認できるなら、研修や外部講座の受講、業務上の小さな成功体験の積み重ねなどを通じて本人をサポートする道を選べます。一方で、やる気が全く感じられない場合は「これ以上昇進や昇給の余地がない」ことを伝え、将来的な不利益を理解させることが必要です。それによって本人が自主的に退職を検討する道も自然と開かれていきます。
要するに、キャリア面談の最大の意義は「本人が改善に向けて努力するか否か」という一点にあります。ここで努力する姿勢を見せる社員はまだ戦力化の可能性がありますが、やる気がない社員は組織にとって負担でしかありません。その見極めを正しく行うことが、適切な処遇を決定するうえで欠かせなません。
退職勧奨の手法
キャリア面談などを経ても改善が見られない場合には、退職を促す選択肢が浮上します。ただし、ここで注意すべきは「自主退職を促すことは可能だが、強制はできない」という点です。強引に辞めさせることは違法行為にあたり、会社にとって大きなリスクとなります。そのため、退職勧奨はあくまで本人に納得させる工夫が求められます。
一つの方法は、他の社員が好んで行きたがらない部署に異動させることです。これはペナルティのように見えがちですが、合理的な人員配置として説明できれば違法性は生じにくいとされています。本人にとって負担の大きい部署であれば、自ら退職を考える可能性も高まります。
また、人事制度を工夫することも有効です。例えば業績連動型の賞与制度を導入すれば、成果を上げられない社員の賞与は自然に低く抑えられます。その結果、優秀な社員との待遇差が明確になり、能力の低い社員は報酬面で不満を抱き、自発的に退職を検討するかもしれません。さらに、基本給を低めに設定し、業績連動の割合を大きくする給与体系を構築すれば、成果を出す社員は高報酬を得られる一方、貢献度の低い社員は低い給与にとどまる仕組みができます。
このような制度的アプローチは、本人に「居続けることのメリットが薄い」と感じさせ、退職を促すきっかけになり得ます。ただし、いずれの方法も表面的には公平な制度設計として説明できることが重要です。組織は正当なルールのもとで処遇を行うことで、法的リスクを避けつつ問題社員の自発的な退職を実現できます。
パワハラはダメ
問題社員の処遇に行き詰まったとき、ありがちな誤った対応が「パワハラによる排除」です。例えば、露骨に無視をする、全く仕事を与えない、または誰でもできる単純作業ばかりを押し付けるといった行為は、いずれもハラスメントとみなされる可能性が高いものです。こうした対応をとれば、本人から労働基準監督署や裁判所に訴えられるリスクが生じ、会社は不当行為を問われる危険性があります。
嫌がらせを通じて退職に追い込むことは、一見すると手っ取り早い解決策に思えるかもしれません。しかし、これは明確に「やってはいけない処遇」です。訴訟リスクだけでなく、職場全体の空気が悪化し、残っている社員の信頼をも失いかねません。「会社は問題がある人に対して冷酷に追い出しを行う」という印象が広まれば、優秀な社員ですら不安を感じて離職する恐れがあります。
正しい対応は、制度やルールに基づき、本人に納得感を持たせながら自主退職を促すことにあります。退職を決断させるためには、前章で述べたような制度設計や配置転換といった「正攻法」が求められます。結局のところ、企業が取るべき道は法的にも倫理的にも適正な方法であり、パワハラのような不当な処遇は避けるべきです。
まとめ
組織において役に立たないと感じられる社員は、必ずしも珍しい存在ではありません。しかし、その処遇を誤ると、職場全体に悪影響を与えるだけでなく、法的トラブルや企業イメージの低下を招きます。だからこそ、冷静かつ合理的な対応が不可欠です。
まずは部署異動を通じて本人の適性を見直し、改善の可能性を探ることが第一歩です。そのうえでキャリア面談を実施し、本人の意欲の有無を丁寧に確認します。やる気があるなら成長を支援し、やる気がないなら昇給や昇進の機会が閉ざされる現実を理解させ、自主退職への選択肢を提示します。
さらに、退職勧奨を行う場合には、不人気部署への異動や成果に応じた人事制度の活用など、制度的に説明可能な手段を用いることが重要です。そして何より、パワハラによる強制的な排除は絶対に避けなければなりません。
最終的に大切なのは「組織の健全性を保ちながら、本人にも一定の納得感を与える処遇」を実現することです。役に立たない社員を排除することが目的ではなく、組織全体が健全に機能するための仕組みづくりが真の解決策となります。
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カスハラ対応の指示がパワハラになっていませんか

ミスをした本人に顧客対応させるのは場合によってはパワハラ
近年、顧客から従業員に対する不当な要求や過剰な叱責が社会問題化しており、「カスタマーハラスメント(カスハラ)」という言葉も一般的に使われるようになりました。カスハラは大きなトラブルや契約違反だけでなく、ちょっとしたミスが発端となることも少なくありません。たとえば商品に軽微な不具合があった、納期の説明が一部不足していたといった些細な出来事が、顧客の強い不満や攻撃的な態度を引き出してしまうこともあります。
こうした場面で多くの職場では、「ミスをした本人が責任をもって最後まで顧客対応をするべきだ」という考えが根強くあります。実際、他の従業員も自らの業務で手一杯であり、対応に割く余裕がないことも多いため、このような方針は一見合理的に見えます。しかし、顧客にとっては「自分にミスをした張本人」が相手にいることで、好き勝手に言いやすい状況が生まれてしまうのも事実です。つまり、顧客側の苛立ちや攻撃性がさらに高まりやすく、本人にとっては大きな精神的負担となりかねません。
このような状態で本人に延々と対応をさせ続けることは、実質的に「見せしめ」となり、本人を追い詰める結果を招く危険があります。指導者や上司が「お前が悪いのだから自分でやりきれ」という指示を繰り返すと、それは本人の尊厳を損ない、組織的なパワハラに該当する可能性すらあります。もちろん、最初に顧客へ謝罪や説明をする場面では本人が関与する必要があるかもしれません。しかし、それを超えて延々と責任を押し付けることは妥当ではありません。カスハラの場面では、いかに本人の責任と組織としての対応を切り分けるかが重要であり、この判断を誤ると、内部で新たなハラスメントが生じるリスクが高まってしまいます。
そこで本稿では本人以外が対応して合理的にカスハラをおさめる方法を紹介します。
別の人が対応する合理性
カスハラ対応の現場では、状況に応じてミスをした本人から別の従業員へバトンタッチすることが有効です。特に同じ部署の同僚や上司が代わりに対応すると、顧客にとっては「別の立場の人」が出てきたという安心感や冷静さが生まれやすくなります。顧客も「ミスをした張本人」に対しては強い態度に出やすい一方で、別の人に対しては過度な非難をしにくい心理が働くためです。これは人間関係の基本的な心理作用であり、対応者を替えるだけでも大きな効果があります。
ただし、別の従業員が対応に入るということは、その人の本来の業務を一時的に止めることを意味します。結果的に労働生産性が低下するリスクは避けられません。組織としては、この「生産性の犠牲」と「顧客トラブルを適切に収束させる価値」とを天秤にかける必要があります。トラブル対応は目に見えにくい成果であるため、従業員自身も「本来の仕事をしていない」と感じてしまいがちですが、実際には会社にとって大切なリスクマネジメントの一部です。したがって、こうした代理対応の役割を果たした従業員に対しては、正当に評価へ反映させることが欠かせません。
さらに、この対応体制をあらかじめ部署内で共有し、誰がどのような場合に対応を引き継ぐのかを決めておくことも重要です。行き当たりばったりで人を割り当てると、不公平感が生まれ、組織全体の士気が低下する恐れがあります。合理的に代理対応を行うには、負担の分散と評価制度の整備を両立させることが求められます。
電話対応で対応の効率性を確保
カスハラを含む顧客対応を効率化する方法の一つとして、コールセンターを活用した電話対応があります。顧客の窓口を一元化することで、現場担当者が業務に集中でき、労働生産性を損なわずに済むという利点があります。現場で発生した小さなミスや誤解に基づくクレームも、まずは電話窓口で吸収する仕組みにすれば、業務全体の流れが止まることを防げます。
電話という間接的なコミュニケーション手段にも効果があります。顧客が直接対面している場合には感情が高ぶりやすく、強い言葉を投げつけてしまうこともありますが、電話越しであれば過剰な要求をするハードルが下がるといわれています。距離感を適度に保つことが、顧客と従業員双方にとって精神的な安全を確保する要素となります。
もっとも、電話対応は単純作業に見えて実際には大きな精神的負担を伴います。理不尽な要求を受けながら冷静に対応し続けるためには、相応のスキルや忍耐力が求められます。そのため、電話窓口のスタッフを「誰でもできる簡単な仕事」とみなして低賃金で雇用することは適切ではありません。むしろ、質の高い人材を確保するためには相応の処遇を与え、教育を行い、メンタルケアにも配慮することが不可欠です。電話対応の品質は企業全体の信頼を左右するため、その重要性を軽視せず、適切な投資を行う姿勢が求められます。
顧問弁護士に外注
カスハラの中には、単なる苦情や不満の表明にとどまらず、会社に深刻な損害を与える可能性がある案件も存在します。特に、暴言や脅迫を伴うケース、金銭的請求が法的な争いに発展しそうな場合、あるいは刑事事件に関わる恐れがある場合には、社内対応だけでは限界があります。このようなケースでは、顧問弁護士に対応を依頼することが極めて有効です。
弁護士は法律の専門家として、冷静に事実を整理し、証拠を確保しながら適切に対応を進めることができます。従業員が感情的に巻き込まれるリスクを排除できる点も大きなメリットです。また、顧客に対しても「弁護士が介入している」という事実が心理的抑止力となり、過剰な要求を控えさせる効果が期待できます。
もっとも、顧問弁護士は万能ではありません。すべての案件を外部の専門家に任せてしまえば、コストは膨大になります。したがって、どのような案件を弁護士に委ねるのかについて、あらかじめ社内で基準を策定しておく必要があります。基準が不明確なままでは、対応の一貫性を欠き、社内外に混乱を招く可能性があります。
顧問料は決して安価ではありませんが、企業に重大なリスクが生じる場面においては、その費用以上の価値をもたらすものです。経営者や管理職は「顧問料を節約する」という発想ではなく、「適切に弁護士を活用して企業を守る」という視点を持ち、必要な場合には積極的に外注する姿勢が求められます。
ノウハウを蓄積して社内にフィードバックを
カスハラ対応は、単にその場をしのぐだけでは不十分です。顧客からの不当な要求を退けたり、トラブルを収束させたりした後こそ、企業は次の一手を考える必要があります。カスハラが生じた原因を分析し、再発を防ぐ仕組みを整えることが欠かせません。
たとえば、ハラスメントのきっかけとなった「説明不足」や「小さな手違い」がなぜ起きたのかを検証し、業務品質を改善していくことが重要です。また、従業員がどのように対応すれば顧客の怒りをエスカレートさせずに済んだのか、逆にどのような言動が事態を悪化させたのかを整理し、マニュアル化して社内で共有する取り組みも有効です。成功事例や失敗事例を蓄積することで、従業員一人ひとりが経験を共有し、次の対応に活かすことができます。
さらに、このような情報をただ集めるだけでなく、研修や勉強会の形で従業員にフィードバックすることが大切です。現場でのリアルな事例をもとにした学びは、机上の理論よりも実践的であり、従業員の安心感にもつながります。組織全体として「カスハラを受けても孤立しない」「会社が一丸となって対応する」という文化を醸成することができれば、従業員の定着率や職場の士気も向上するでしょう。
つまり、カスハラ対応は一過性の防御策ではなく、組織の学習サイクルに組み込むべき課題なのです。そうすることで、ハラスメントが起きにくい環境づくりと従業員のメンタルヘルス維持の両立が可能となります。
まとめ
カスタマーハラスメントは、企業にとって避けがたい課題であり、その対応を誤れば従業員が二重に苦しむ事態を招きかねません。特に「ミスをした本人に最後まで対応させる」という方針は、一見合理的に思えても、本人を顧客からの攻撃にさらし続けることになり、パワハラの温床となる恐れがあります。状況に応じて別の人が対応したり、電話窓口を活用したり、さらには弁護士へ外注するなど、複数の手段を柔軟に組み合わせることが大切です。
また、対応の負担を担った従業員への正当な評価や、電話応対スタッフの処遇改善といった社内制度面での支援も欠かせません。そして何より、対応を通じて得た知見を組織に蓄積し、業務品質の改善や再発防止に役立てることが求められます。企業が従業員を守りつつ顧客との関係を適切に維持するためには、単なる場当たり的な対応ではなく、体系的かつ長期的な視点が必要です。
当センターでは、顧問弁護士と現場の最適な役割分担を通じたカスタマーハラスメントによる被害を最小化する組織体制の構築を提案させていただきます。下記よりお気軽にご相談ください。

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債権回収のために訴訟提起するメリットと注意点

債権回収の最終手段が訴訟提起
企業は日々の経済活動において、多様な取引を通じて数多くの債権を有することになります。通常、取引先は契約や請求書に基づいて支払期限を守り、適切に代金を支払います。なぜなら、支払いを怠れば信用を失い、今後の取引継続に大きな悪影響を及ぼすためです。企業活動における信用は資金力と並んで重要な経営資源であるため、ほとんどの取引先は期限を守り、債権者がわざわざ取り立てに動く必要はありません。
しかしながら、すべての取引が円滑に進むわけではありません。例えば、相手先企業の財務状況が悪化し、資金繰りが困難となる場合があります。その場合、資金を確保するために支払いを後回しにする、あるいは意図的に支払いを拒むという行為が発生することもあります。また、ときには経営者や担当者の感情的な理由、つまり取引内容への不満や過去のトラブルを理由に、合理的な根拠なく支払いを拒否することもあります。こうした状況に直面すると、通常の交渉や請求書の再送付だけでは解決が困難です。
このような場合、債権者が最後の手段として検討するのが「訴訟提起」です。訴訟は裁判所という公的機関を通じて法的に相手の支払い義務を確認し、必要に応じて強制力を行使できるようにするための制度です。ただし、訴訟は一方的に有利なものではありません。確かに法的拘束力を得られるという大きなメリットがありますが、その一方で時間や費用、そして精神的な負担といったデメリットも存在します。したがって、安易に「訴訟をすれば必ず回収できる」と考えるのは誤りです。
そこで本稿では、この訴訟提起という最終手段について、そのメリットと注意点を整理し、債権回収の実務において検討すべきポイントを解説していきます。
強制執行が可能になる
訴訟を提起して勝訴判決を得る、あるいは裁判上の和解に至った場合、債権者は「強制執行」という法的手段を利用できるようになります。これは、債務者が自発的に支払わない場合でも、裁判所の手続きを通じて相手の財産を差し押さえ、回収することが可能となる制度です。例えば、銀行口座の預貯金を差し押さえれば、そこから直接回収することができます。また、不動産や動産といった資産についても差し押さえの対象となり得ます。
債務者にとって、強制執行は大きな脅威です。預貯金が差し押さえられれば運転資金や生活費が不足し、事業や生活の継続に重大な支障をきたします。そのため、多くの債務者は強制執行に至る前に自発的な支払いを選択する傾向があります。つまり、債権者にとって訴訟提起は「強制執行が可能になる」という直接的な効果と同時に、「支払いを促す強力なプレッシャー」としても機能します。
もっとも、強制執行は万能ではありません。手続きには時間と費用がかかり、また差し押さえ対象となる財産が存在しない場合は実効性を欠きます。特に、債務者に資産が乏しい場合やすでに他の債権者による差し押さえが行われている場合には、満額回収が難しくなることもあります。そのため、強制執行は単なる回収手段としてではなく、債務者に対する交渉材料としての性格も強いといえるでしょう。
現実的には、債権者が強制執行の準備を進めつつ、債務者に自発的な支払いを促す形が多く見られます。訴訟によって裁判所のお墨付きを得ること自体が債務者にとって重い心理的負担となるため、支払いに向かわせる強力なカードとなるのです。
消滅時効対策
債権には「消滅時効」という制度が存在し、一定期間が経過すると債務者が「時効を援用する」と主張することで、債権者は回収を求められなくなります。一般的に商取引における債権は5年で消滅時効にかかることが多く、長年支払いが滞っている債権を放置すれば、最終的に回収の可能性が完全に失われる危険があります。
このような事態を防ぐために有効なのが、訴訟提起です。訴訟を起こすと、時効の進行が中断され、判決や和解によって新たな債務名義が確定します。これにより、債権の効力が維持され、長期にわたって回収の可能性を残すことができます。債権者にとっては、たとえすぐに現金を回収できなくとも、「債務は消えない」という状態を確保できることが大きな意味を持ちます。
さらに、訴訟提起は債務者に対して「支払いを逃さない」という強い意思表示にもなります。長期間の放置によって債務者が「もう請求されないだろう」と油断している場合、突然の訴訟は強烈なリマインド効果を生みます。これにより、債務者が和解に応じる、あるいは分割払いを申し出るなど、現実的な解決につながることも少なくありません。
もちろん、訴訟提起が必ずしも即時の回収につながるわけではありませんが、時効の完成を防ぎ、債権を法的に維持する手段としては極めて有効です。特に、古い債権であっても将来的に回収の見込みがある場合には、訴訟による時効中断を検討する価値が十分にあります。
費用対効果
訴訟提起には、避けて通れないコストが伴います。まず、裁判所に対しては収入印紙を納付する必要があり、その額は請求金額に応じて変動します。さらに、郵券(郵便切手)を納めて相手方への書類送達費用を負担しなければなりません。これらは手続き上の必須費用です。
また、訴訟が争いになる可能性がある場合、弁護士に依頼するのが通常です。弁護士費用には着手金や報酬金のほか、実費が含まれ、請求額や事件の難易度に応じて相当な金額になることがあります。加えて、訴訟を提起したからといって必ずしも勝訴できるわけではなく、勝訴判決を得ても相手に資産がなければ回収できないという現実もあります。
さらに、強制執行を行う場合には、別途手続き費用が発生します。例えば、不動産の差し押さえや競売手続きには相応の費用がかかり、預貯金差し押さえでも一定の手続的支出が必要です。つまり、訴訟から強制執行に至るまでには複数の段階で費用が積み重なり、必ずしも回収額がそれを上回るとは限りません。
したがって、訴訟提起を検討する際には、見込まれる回収額と必要な費用を比較し、費用対効果を冷静に分析することが重要です。特に、少額の債権であるにもかかわらず多額の費用を投じてしまうと、最終的に赤字となるおそれもあります。訴訟は「勝てばよい」というものではなく、「回収して利益が残るか」という観点から判断する必要があるのです。
見通しとバランス
訴訟提起を現実に検討する際には、まず相手の財務状況を可能な範囲で調査することが欠かせません。金融機関との取引状況や不動産の所有状況、商業登記簿や官報公告などから、債務者がどの程度の資産を保有しているか、回収の見込みがあるかを推測することができます。債務者に資産がなければ、たとえ勝訴しても回収できず、費用倒れになる危険が高まります。
次に、訴訟提起にかかる費用を概算し、どの程度の資金的負担が発生するかを見積もります。裁判所に納める収入印紙や郵券に加え、弁護士に依頼する場合の費用も加味する必要があります。これらの支出と見込まれる回収額を照らし合わせ、費用対効果が見合うかを検討することが重要です。
さらに、訴訟を行うか否かの判断にあたっては、時間的コストや心理的負担も無視できません。裁判は数か月から数年に及ぶこともあり、その間に経営資源を割く必要が生じます。これらの負担が事業全体に与える影響を冷静に考慮することが求められます。
訴訟提起は、あくまでも数ある回収手段のひとつにすぎません。「必ず訴訟すべき」と決めつけるのではなく、相手の資産状況や訴訟費用、自社の経営状況を総合的に判断し、バランスよく柔軟に対応することが肝要です。場合によっては交渉や分割払いの合意で十分な成果を得られることもあります。重要なのは、訴訟を「目的」とせず、「回収を最大化するための手段」と位置づけることです。
まとめ
債権回収における訴訟提起は、取引先が支払いを拒む場合に選択される最終手段です。訴訟を行えば、勝訴判決や和解によって強制執行が可能となり、相手に大きなプレッシャーを与えられます。また、時効の完成を阻止し、債権を維持するための有効な手段としても活用できます。しかし一方で、訴訟には費用や時間、心理的な負担が伴い、必ずしも回収が保証されるわけではありません。
したがって、訴訟提起を検討する際には、相手の財務状況や見込まれる回収額、必要な費用を慎重に分析することが不可欠です。そのうえで、費用対効果を見極め、訴訟以外の方法も含めて柔軟に判断する姿勢が求められます。重要なのは「訴訟をすること自体」ではなく、「最終的に債権を回収し、経営に資する成果を得ること」であるといえるでしょう。
当センターでは弁護士兼公認会計士が相手の財務状況をふまえて御社に少しでも有利な方策を徹底的に考え抜いてご提案させていただきます。下記よりお気軽にご相談ください。

当センターは、弁護士・公認会計士・中小企業診断士・CFP®・ITストラテジストなどの資格を持つセンター長・杉本智則が所属する法律事務所を中心に運営しています。他の事務所との連携ではなく、ひとつの窓口で対応できる体制を整えており、複雑な問題でも丁寧に整理しながら対応いたします。
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大阪府を拠点に、東京、神奈川、愛知、福岡など幅広い地域のご相談に対応しており、オンラインでのご相談(全世界対応)も可能です。地域に根ざした対応と、柔軟なサポート体制で、皆さまのお悩みに親身にお応えいたします。
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退職者への損害賠償請求はどこまで追うかの線引きが重要

退職者に対する損害賠償請求は難しい
近年、職場において責任感の欠如が問題となるケースが増えています。業務中に重大なミスや不誠実な対応をしながらも、何ら責任を取らずに退職してしまう従業員が目立つようになっています。企業側としては被った損害を放置できず、退職者本人や、契約がある場合は身元保証人に対して損害賠償請求を検討することになります。
もちろん、債権回収の原則としては「できる限り100%の回収を目指す」というのが基本です。未回収債権を安易に諦めれば、組織の財務基盤を揺るがすことになりかねません。しかし、この考え方をそのまま退職者に対する損害賠償請求に適用すると、現実的に多くの問題に直面します。
退職者の場合、在職中の従業員とは違い、日常的な接点がなくなり、連絡や支払い管理も困難です。さらに、会社への忠誠心や将来的な関係維持の動機づけがなくなるため、交渉は硬直化しやすくなります。
そのため、退職者への損害賠償請求は、法的権利の存在だけではなく、「現実的にどこまで追えるのか」という視点が不可欠です。そこで本稿では、この問題について、具体例や法的要素、資力の問題、そして妥協点の見極め方まで、段階的に解説していきます。
退職者への損害賠償請求の具体例
退職者への損害賠償請求が成立し得る場面は、民法上の不法行為責任や債務不履行責任が認められるケースです。典型的な例として、まず挙げられるのは取引先との関係悪化による損害です。たとえば、担当者が取引先に対して失礼な態度をとり、長年の取引が打ち切られてしまった場合、失注による売上損失は相当額に上ることがあります。
また、情報漏洩も深刻です。業務中に送信先を誤ってメールやFAXを送ってしまい、顧客情報や機密資料が外部に流出した場合、その後の信用失墜やクレーム対応のコストは膨大です。このような過失は退職後も責任追及の対象となり得ます。
さらに、業務中の交通事故も典型例です。営業中に社用車を運転して事故を起こし、第三者に損害を与えた場合、会社が賠償責任を負った後、加害従業員に求償することがあります。
従業員間の暴力行為も忘れてはなりません。職場での暴力によって被害者が長期休業を余儀なくされ、その間の人件費や業務損失が生じる場合、加害者に賠償を求めることは十分考えられます。
これらはすべて「辞めたから関係ない」という話ではなく、退職後も法的責任が残る行為です。
過失相殺の可能性
損害賠償請求では、加害者の過失が明らかであっても、会社側にも落ち度があれば「過失相殺」が行われ、請求額が減額されることがあります。例えば、会社が従業員に業務内容を十分に説明していなかった場合や、必要な安全配慮措置を怠っていた場合、従業員のミスの一因が会社側にあると判断される可能性があります。
また、会社は従業員を使用して利益を得る立場にあるため、その業務遂行中に起こった事故やトラブルについて、一定のリスクを負担すべきだという考え方があります。このため、従業員に全額賠償を求めることは、法律上も社会的感覚からも難しい場合があります。
さらに、人は誰しもミスをするものであり、ミスをゼロにすることは不可能です。企業経営の観点からも、ミスが発生した場合の損害を最小限に抑える体制を整えておくことが求められます。具体的には、内部統制の強化や業務マニュアルの整備、二重チェックの仕組みの導入などが挙げられます。加えて、業務災害や賠償責任に備えた保険加入も有効な手段です。
したがって、退職者への損害賠償請求を検討する際には、過失割合の見込みや、会社側の防止策の有無を冷静に評価することが重要です。全額請求を前提に動くと、現実とのギャップで訴訟リスクや交渉の行き詰まりを招きやすくなります。
退職者の資力の問題
法的に損害賠償請求権が認められたとしても、相手に支払能力がなければ実際の回収はできません。退職者が再就職せず無職である場合や、収入が非常に少ない場合、裁判で勝訴判決を得ても「絵に描いた餅」になってしまうことがあります。
さらに、退職者の居所や勤務先が不明であれば、差押えなどの強制執行すら困難になります。判決を得ても、実際の資産や給与が把握できなければ回収は事実上不可能です。
現実的な対応としては、判決を得るよりも、和解で少しずつでも支払わせる方が有効な場合があります。和解により、退職者が自主的に支払いを続ける環境を作れば、全額は無理でも一定の回収は期待できます。ただし、和解では総額が減額され、さらに長期の分割払いになることが多く、企業側にとっては管理や督促の手間が増えます。
長期分割払いの管理は軽視できません。入金遅延が発生すれば、そのたびに連絡や再交渉が必要になり、担当部署の負担が増大します。そのため、資力が限られる相手からの回収は、効率とコストのバランスを見極めた上で戦略を立てる必要があります。
落としどころを早めにみつけて誘導する
退職者への損害賠償請求では、「どこで妥協するか」という線引きを早めに決めることが肝心です。相手の資力を踏まえ、現実的に回収可能な金額を見極める必要があります。
特に相手に資力がない場合、法的には賠償請求権があっても、全額回収を目指すのは非現実的です。そのため、損害を完全に埋め合わせることよりも、「落とし前をつけさせる」という意味合いで、相手が支払える範囲での精一杯の金額で合意することも選択肢となります。
全額回収にこだわりすぎると、訴訟費用や回収業務の負担が膨らみ、最終的には企業側の損失が拡大することも珍しくありません。逆に、早期に落としどころを定めれば、弁護士としても交渉のシナリオを描きやすくなり、相手を合意に誘導することが可能になります。
交渉では、相手が納得して支払える条件を提示しつつ、企業側の損害感情をある程度満たす形に落とし込むことが重要です。これにより、長期化によるコスト増や感情的対立を回避し、実務的な解決を図ることができます。
まとめ
退職者への損害賠償請求は、法的には可能な場面が多い一方で、実務的には多くのハードルがあります。過失相殺による減額、資力不足による未回収リスク、長期化によるコスト増などを踏まえ、早い段階で戦略的な線引きを行うことが重要です。
請求額の全額回収を理想としながらも、現実的には「どこまで追うか」を見極める柔軟さが求められます。落としどころを早期に設定し、そこに向けて交渉を誘導することで、感情的な対立を避けつつ、企業にとって最適な解決が可能になります。
最終的には、損害の再発防止策を講じることが、同様の問題を減らす最良の方法です。内部統制の強化や保険の活用を通じ、退職者への請求が必要になる場面をそもそも減らすことが、長期的な企業防衛につながります。
当センターでは従業員による不正行為や過失行為の防止に向けた取り組みから、事後の損害賠償請求、取引先対応まで幅広く御社をサポートいたします。下記よりお気軽にご相談ください。

当センターは、弁護士・公認会計士・中小企業診断士・CFP®・ITストラテジストなどの資格を持つセンター長・杉本智則が所属する法律事務所を中心に運営しています。他の事務所との連携ではなく、ひとつの窓口で対応できる体制を整えており、複雑な問題でも丁寧に整理しながら対応いたします。
窓口を一本化しているため、複数の専門家に繰り返し説明する必要がなく、手間や時間を省きながら、無駄のないスムーズなサポートをご提供できるのが特長です。
大阪府を拠点に、東京、神奈川、愛知、福岡など幅広い地域のご相談に対応しており、オンラインでのご相談(全世界対応)も可能です。地域に根ざした対応と、柔軟なサポート体制で、皆さまのお悩みに親身にお応えいたします。
初回相談は無料、事前予約で夜間休日の相談にも対応可能です。どうぞお気軽にご相談ください。
労働審判は突然に。計画的な準備体制の構築を!

労働審判の定着
労働審判制度は、2006年に施行されて以来、今年で20年近くが経過しました。この制度は、労働者と使用者の間で発生した労働関係の紛争を、迅速かつ適正に解決するために設けられたものです。従来、労働問題を解決するには労働者が訴訟を提起する必要がありましたが、訴訟は時間も費用もかかり、精神的な負担も大きいため、泣き寝入りするケースも少なくありませんでした。
労働審判制度は、裁判所において労働審判官1名と労働関係の専門的知識を有する労働審判員2名で構成される合議体が紛争を扱い、原則として3回以内の期日で審理を終えるという迅速性が大きな特徴です。これにより、労働者も使用者も短期間で結論を得られる可能性が高まりました。また、労働審判では、審判手続の中で和解が成立することも多く、双方が一定の譲歩をして合意に至ることも少なくありません。
近年、この制度はすっかり定着し、労働問題の解決手段として一般的な選択肢の一つとなっています。特に、法テラスや各地の弁護士会による無料法律相談を通じて制度が広く知られるようになったことが大きな要因です。制度開始当初は「新しい手続」であることへの不安や誤解から利用件数が伸び悩む時期もありましたが、今では「労働紛争が起きたらまず労働審判を検討する」という認識が広まりつつあります。こうした背景を踏まえると、企業側もこの制度を「特別なケース」ではなく「日常的に起こり得るリスク」として認識し、備えておくことが不可欠です。
労働審判の主な争点
労働審判で扱われる争点は多岐にわたりますが、中心となるのは解雇の有効性と未払金の請求です。解雇に関しては、就業規則や労働契約書に基づく合理的な理由があったのか、手続が適正に行われたのかが厳しく問われます。これに加え、未払の残業代や給与、退職金、賞与などの金銭請求も頻繁に争われます。
かつては、不当解雇や未払金に悩んでいても、「裁判は大変そう」「弁護士費用が高い」といった理由で泣き寝入りする労働者が多く見られました。しかし、労働審判の普及により状況は一変しました。無料法律相談をきっかけに、自分のケースが労働審判に適していると知り、申し立てを決意するケースが増えています。法テラスの利用や着手金不要の弁護士事務所も増え、経済的なハードルが下がったことも背景にあります。
このように、従来なら表面化しなかった労働トラブルが、労働審判によって短期間で争われる事例として顕在化する傾向が強まっています。企業にとっては、今までなら水面下で収まっていた不満が、突然、裁判所からの呼び出しという形で現れるリスクが増しているということになります。そのため、企業は労働審判の典型的な争点を理解し、自社の雇用契約や賃金体系、労務管理の運用における潜在的なリスクを事前に把握することが重要です。
労働審判の特徴
労働審判の最大の特徴は、原則として3回の期日で終結するというスピード感です。通常、1回目の期日で双方の主張がほぼ出揃い、2回目で争点の整理と和解の可能性が探られ、3回目で和解の最終調整や審判の言い渡しが行われます。このため、初回期日から事実関係や証拠を十分に提示できるかどうかが、手続の行方を大きく左右します。
一般的な訴訟では、訴状提出後も何度も期日を重ねながら主張や証拠を追加できますが、労働審判ではそうした余裕はありません。初回から「全力投球」できる準備体制が求められます。例えば、解雇をめぐる事案であれば、解雇理由を裏付ける書類、就業規則、労働者の勤務状況記録、面談記録などを一括して揃えなければなりません。未払金の請求に関しても、賃金台帳や出勤簿、計算根拠を整理して提示する必要があります。
また、労働審判は裁判官だけでなく、労働問題に精通した労働審判員が加わるため、事実や証拠の整合性だけでなく、社会通念上の妥当性も強く意識されます。こうした背景から、制度の性質を理解したうえで、初回期日に向けた計画的な証拠収集と主張整理の仕組みをあらかじめ社内に構築しておくことが、企業防衛の鍵となります。
潜在的な火種を顧問弁護士に連絡しておく必要性
現代では、従業員が表面上は処分や対応に納得しているように見えても、後日、無料法律相談を経て労働審判の申し立てに踏み切ることは珍しくありません。制度が浸透したことで、労働者側が心理的にも経済的にも行動を起こしやすくなったからです。
そのため、企業は「申し立てられてから対応を考える」という姿勢では間に合わない場合があります。特に労働審判は短期間で進むため、初動が遅れると十分な反論や証拠提出ができないまま和解や審判に至ってしまう危険性があります。
そこで有効なのが、社内で発生した潜在的な紛争の芽を早期に顧問弁護士へ共有する仕組みです。この段階では必ずしも正式な相談や依頼に至らなくても構いません。例えば「この懲戒処分について不満を持っているようだ」「退職時の清算額で食い違いがありそうだ」など、火種になり得る情報を顧問弁護士に事前に知らせておくだけでも、リスクの大きさや対応の方向性について助言を受けられます。
こうした早期連絡の習慣を作ることで、いざ労働審判に発展した場合でも、事前に整理された記録や証拠を即座に提出できる体制が整います。企業防衛の観点からも、潜在的な問題を見逃さず、法的な視点を取り入れた予防的アプローチを常態化させることが重要です。
客観的・合理的な判断を
どの組織にも独自の文化や慣習があり、時には感情や過去の経験則に基づいて意思決定が行われることがあります。しかし、労働審判の場では、こうした主観的な判断や社内の常識は通用しません。必要なのは、客観的かつ合理的な判断と、それを裏付ける証拠です。
労働審判は短期決戦であるため、「その場しのぎ」の対応は通用しません。社内の揉め事に関しては、初動の段階から事実関係を正確に把握し、証拠を整え、第三者にも理解できる形で記録することが求められます。例えば、従業員の勤務態度に問題があると判断した場合も、その評価が感情的なものではなく、客観的な勤務実績や行動記録に基づくことを明確にしておく必要があります。
さらに、その判断に至るまでの経過や理由を記録しておくことも大切です。後になって「なぜその決定をしたのか」と問われた際に、文書やデータで説明できるかどうかが、労働審判での防御力を大きく左右します。こうした体制は、突発的な紛争発生時だけでなく、日常的な労務管理の質を高め、社内の透明性や公正性を強化する効果もあります。
まとめ
労働審判制度は、その迅速性と利用のしやすさから、今や労働紛争の解決手段として定着しています。解雇や未払金といった典型的争点をめぐり、これまで表面化しなかった問題が突然、裁判所からの呼び出しという形で企業に突き付けられる時代です。
制度の特徴である短期決戦に備えるためには、初回期日に全ての証拠を提示できる準備体制を日頃から整えておく必要があります。そのためには、潜在的な火種を早期に顧問弁護士へ共有し、リスク分析と対応方針の検討を進めることが欠かせません。さらに、社内の判断は感情や慣習に左右されず、客観的かつ合理的に行い、その経過を記録する仕組みを構築することが求められます。
労働審判は突然やってきます。だからこそ、計画的な準備と日常的な予防策が、企業を守る最大の武器となります。
当センターでは労働審判に対する体制構築をはじめ、企業規模や抱える課題に応じた柔軟な体制整備と労働審判への対応業務を提供しております。下記よりお気軽にご相談ください。

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パワハラ研修はセクハラ研修と同じではない。では、どこが違う?

パワハラ研修を実施する企業が増加傾向。しかしその効果は?
近年、職場におけるハラスメント問題が広く注目される中で、特に「パワハラ(パワーハラスメント)」への関心が高まっています。部下が上司からの言動に対して「これはパワハラだ」と声を上げるケースは年々増加しており、それに伴って、パワハラ研修を導入・強化する企業も増えています。中には毎年定期的にパワハラ研修を行うことを社内ルールとし、全社員参加を義務付ける企業も少なくありません。
一方で、これまでにセクハラ対策を先行して導入していた企業では、「ハラスメント全般の研修」として、セクハラとパワハラをひとまとめに扱う形式を取ることも見受けられます。時間とコストの節約を図る合理的な措置と思われるかもしれませんが、実際には効果が限定的となる可能性があります。というのも、セクハラとパワハラでは性質が大きく異なり、研修の狙いや受講者に求められる行動変容も大きく異なるためです。
特に、パワハラは業務上の指導と密接に関係しており、単なる「禁止事項の列挙」では理解や改善につながりません。そのため、パワハラ研修を有効なものにするには、セクハラ研修とは異なる観点と構成が必要です。そこで本稿ではその違いを明確にしながら、パワハラ研修のあるべき姿について詳しく検討していきます。
セクハラは完全撲滅一択
セクハラ(セクシャルハラスメント)に関しては、企業としてのスタンスは非常に明快です。セクハラは一切容認されない行為であり、「ゼロ容認」が前提となります。理由は明白で、セクハラは個人の尊厳を傷つける行為であると同時に、刑事事件や民事訴訟に発展する重大なリスクを内包しているからです。実際、企業が関与したセクハラ事案が報道されると、信頼の失墜は避けられず、ブランド価値や株価にも影響を及ぼしかねません。
セクハラ研修では、「加害者に悪意があったかどうか」よりも、「相手がどう受け止めたか」が重視されることが強調されます。つまり、「冗談のつもりだった」「親しみを込めたつもりだった」といった言い訳は一切通用しないのです。だからこそ、研修では「セクハラと受け取られかねない言動すら慎もう」という、予防の視点に立った教育が重視されます。
また、セクハラには客観的な基準がある程度成立しており、具体例を示しやすいことから、研修プログラムとしても構築しやすい特徴があります。「飲み会での身体接触」「外見への不用意なコメント」など、明確なNG行為を列挙し、それを避けるよう指導すれば一定の効果が見込めるのです。つまり、セクハラについては完全撲滅という方針で問題なく研修を進めることが可能です。
パワハラは撲滅すればよいわけではない
パワハラ(パワーハラスメント)は、その名の通り「職権を背景にした不適切な言動」とされますが、その線引きはセクハラに比べて非常に曖昧です。なぜなら、業務上の指導や管理という行為が本質的に「相手にとって厳しいと感じられる可能性のあるもの」だからです。つまり、すべての叱責や注意がパワハラに該当するわけではなく、むしろ業務達成のためにはある程度の厳しさが求められることもあります。
そのため、パワハラを「完全に撲滅すべき行為」として一律に扱うことは現実的ではありません。極端な話になりますが、「部下に嫌な思いをさせないように」と過剰に配慮し、注意を一切行わない状態が続けば、業務の質は確実に低下します。納期の遅延、成果物の品質低下、チームの士気低下など、上司の役割放棄により組織全体が機能不全に陥るおそれすらあります。
もちろん、暴言や人格否定、継続的な無視などは明確にパワハラであり、許されるべきではありません。しかし、問題はグレーゾーンにあるのです。たとえば「早く終わらせろ」といった業務指示が、ある部下にはモチベーションになる一方で、別の部下には心理的負担と感じられることもあります。このように、パワハラの定義は一律ではないことに配慮が必要です。
パワハラは様々な要素のバランスをとって考える必要がある
パワハラ研修を効果的なものにするには、「禁止事項を覚える」形式では不十分です。むしろ、上司が適切なマネジメントを行うために、どのような言動が望ましいのか、具体的な状況ごとに考える「判断力の育成」が中心であるべきです。これはセクハラ研修とは大きく異なる点です。
たとえば、プロジェクトの納期が迫る中で、部下に対して厳しいトーンで指示を出す必要がある場合、表面的にはパワハラに見えるかもしれません。しかし、それが業務遂行のためにやむを得ない対応であり、人格否定を含まないものであれば、必ずしも不適切とは言えません。一方で、同じ言葉でも頻度や背景によってはパワハラと受け取られる可能性もあるため、研修ではその見極めを養う必要があります。
そのためには、ケーススタディの活用が有効です。「この言動はパワハラか否か」「代わりにどんな表現が適切か」といった問いを実際に考えることにより、抽象的な判断ではなく、実務に根ざした行動のあり方を学べます。
さらに、研修の中では「部下への配慮」と「業務上の責任」の両立が求められるという現実を正しく理解させる必要があります。このバランス感覚こそが、パワハラを防ぎながらも適切なマネジメントを実現する鍵となります。
様々な階層を混在させたグループワークが有効
パワハラ研修の効果を高めるためには、単なる座学や映像視聴といった受動的な学習では不十分です。特に効果が高いとされるのが、「様々な階層の従業員を混在させたグループワーク形式」の研修です。というのも、パワハラの問題は、立場や視点の違いによって受け取り方が大きく異なるからです。
たとえば、管理職の多くは「部下の成長を思って厳しく接している」と考えているかもしれません。しかし、部下の立場からすれば、その厳しさが威圧や恐怖と感じられていることもあります。自分の言動が他者にどう映っているのか、本人には見えにくいものです。だからこそ、立場の異なる者同士が意見を交換し合う場を設けることが、相互理解を深める鍵となります。
このようなグループワークでは、ある事例について「これはパワハラかどうか」をテーマにディスカッションを行うのが一般的です。すると、同じ言動に対して「当然の指導」と捉える人と、「これは萎縮してしまう」と感じる人が出てきます。この意見の違いこそが、研修における最も貴重な学びの材料なのです。
さらに、グループに階層的な多様性を持たせることで、業務上の責任や期待、部下の感じる不安や困惑といった現場のリアルが浮き彫りになります。結果として、「パワハラとは何か」という定義を表面的に学ぶのではなく、自社の組織文化や職場環境に即した理解が進むのわけです。
このような形式は、受講者の主体的な関与を促し、記憶への定着も促進します。職場で実際にパワハラの兆候を見かけた際、自分の行動や発言をふと振り返るきっかけとなることも少なくありません。パワハラ防止は一人ひとりの意識の積み重ねによって初めて実現するものであり、他者との対話を通じてその意識を高めていくことが研修の本質的な目的となります。
まとめ
セクハラとパワハラは、どちらも職場における重大な問題であり、企業として対応が求められる点では共通しています。しかし、それぞれの性質や対処のアプローチには明確な違いがあります。セクハラは「一切許容しない」という方針が基本であり、明確な禁止行為を定め、予防に徹する研修が効果的です。
一方で、パワハラには業務上必要な指導との線引きが常に問われます。すべての厳しい言動を禁止してしまえば、上司のマネジメント力が著しく損なわれ、組織としての生産性が低下してしまうおそれがあります。そのため、パワハラ研修では「禁止一択」ではなく、ケースバイケースでの判断力やバランス感覚を養うことが重視されるのです。
また、職場でのパワハラに関する認識は、立場によって大きく異なります。このため、研修では異なる階層の社員が意見を交わす場を設け、立場を超えた相互理解を深めることが不可欠です。グループワークやディスカッションはそのための有効な手段となります。
結局のところ、パワハラ防止とは、相手の気持ちを尊重しつつも、業務の質を落とさずに成果を出すという、難しいバランスを実現する努力にほかなりません。画一的な対応ではなく、企業ごとの風土や文化に応じた柔軟なアプローチこそが、持続可能で実効性のあるパワハラ対策につながっていきます。
当センターではこうしたハラスメント対策について組織風土やパワーバランスなどをふまえて最適な効果を発揮できるよう各社毎にカスタマイズした対応をご提供しております。下記よりお気軽にご相談ください。

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葬儀屋がカフェ運営その背景と注意点とは?

敷居の高い業種は店も客も機会を逸しがち
葬儀は誰もが避けては通れない出来事ですが、それにもかかわらず「できるだけ関わりたくないもの」として敬遠されがちです。生きているうちに死を意識すること自体に抵抗感がある人が多く、「終活」という言葉が広まりつつある現代においても、具体的な行動に移す人は決して多くはありません。その結果、いざ身内が亡くなったときに初めて「どこに依頼すればよいのか」「何を決めなければいけないのか」と慌てて情報収集を始め、限られた時間と精神的余裕のない中で業者を選び、内容を決めてしまうケースが非常に多く見られます。
このような状況は、実は顧客にとっても業者にとっても不利益です。顧客は十分な検討や比較ができず、自分たちの意向に沿った内容を選び損ねる可能性があります。一方、葬儀社側も、本来であれば提供可能だったサービスや付加価値を伝える機会を逸してしまいます。葬儀という性質上、緊急性が高く準備期間が短いため、理想的な提案ができず「取り急ぎ最低限」のサービスにとどまってしまうことも多いです。
つまり、店側と客側の双方にとって「失われた機会」を生じています。そこで本稿ではこうした背景を踏まえたうえで、葬儀屋がカフェを運営する狙いと注意点を紹介します。
タッチポイント獲得が目的
近年、一部の葬儀社が自社でカフェを運営するという新しい取り組みを始めています。これは一見ミスマッチのようにも思えますが、その裏には非常に合理的な狙いがあります。それは「日常生活の中に自然に溶け込む形で、顧客との接点(=タッチポイント)を増やすこと」です。
従来の葬儀業界においては、顧客が店舗や営業所に足を運ぶのは非常に限られた場面しかありません。しかもそれは大抵の場合、身内の死が差し迫っているか、亡くなった直後という非常時です。心の余裕がない中で業者と初対面し、その場で重要な決断を迫られる――これは本来、あまり望ましい状況ではありません。
そこで、もっと気軽に立ち寄れる空間として、カフェという形態が選ばれたのです。コーヒーを飲んで一息つく、友人とおしゃべりする、読書をする――そんな日常の中で「実はここ、葬儀社が運営しているんです」と知ってもらうことで、心理的な敷居を下げ、企業への信頼感や親近感を高める効果が期待できます。
また、カフェに来る人すべてがすぐに葬儀の依頼人になるとは限りませんが、日常の中に存在することで、将来的なニーズ発生時に第一候補に挙がる確率は格段に上がります。言い換えれば、カフェは「潜在顧客と出会う入り口」として機能していなす。
顧客へのより良い提案が可能になる
葬儀屋が運営するカフェの大きな利点の一つは、顧客に対して無理なく自然な形で情報を提供できるという点にあります。形式ばった打ち合わせや資料請求では得られない、柔らかくリラックスした空間での会話が可能になるため、葬儀に関する不安や疑問、希望を聞き出すハードルが格段に低くなります。
たとえば、カフェ内の一角に終活や遺言、相続に関する小冊子やチラシを置いたり、実際の祭壇や供物のサンプルをさりげなく展示しておいたりすることで、「ちょっと見てみようかな」と顧客の関心を引くことができます。定期的にミニセミナーや相談会を開催することで、葬儀に対する理解を深めてもらうこともできます。
このように、カフェという日常の空間を通じて顧客との信頼関係ができれば、葬儀の際に「何を大事にしたいのか」「誰を中心に据えたいのか」といった価値観を共有しやすくなります。それによって、単なる葬儀パッケージの提供にとどまらず、個々の事情に合わせたオーダーメイドの提案が可能となり、顧客の満足度は飛躍的に向上します。
葬儀とは、一生に一度あるかないかの重要なセレモニーです。その場面で「この会社にお願いしてよかった」と思ってもらえるかどうかは、事前にどれだけ信頼関係を築けたかに大きく左右されます。カフェという選択肢は、そのための橋渡しとして、非常に有効な手段となっているわけです。
まずは身近なところから
「本命の商品・サービスはあくまで葬儀。でもいきなり葬儀の話はしづらい」。そんなジレンマを抱える業種は、実は葬儀業界に限らずさまざまな分野に存在しています。特に葬儀のように、関心を持たれるタイミングが限定的で、話題にすること自体に心理的ハードルがある分野では、売り込みのタイミングを逃しやすいという問題があります。
このような状況で有効なのが、「まずは身近なところから接点を持つ」というアプローチです。たとえば、カフェという形態であれば、誰もが日常的に利用できる場であり、特別な理由がなくてもふらりと立ち寄ることができます。そこで提供されるのは、美味しいコーヒーや軽食といった「葬儀とは関係のないもの」ですが、それこそが重要なポイントです。「ちょっとした日常の寄り道」で顧客との接点をつくり、その場で自然に企業の存在を知ってもらうことが、後の本命商品へとつなげるための第一歩となります。
こうしたアプローチは、他業界ではすでに数多くの成功事例があります。保険会社がカフェ風の店舗を展開したり、不動産業者が雑貨販売や地域イベントを併設するなど、本命商品の前に「顔を覚えてもらう」「関心を持ってもらう」ことを目的とした施策は広く活用されています。
葬儀業界でも、カフェを通じた接点づくりは、時代の流れに合った自然なマーケティング手法と言えるでしょう。まずは「ただのカフェ」として関係を築き、そこから少しずつ本題に近づいていく。この段階的な関係構築こそ、葬儀のようなデリケートなサービスには最適です。
シーズ志向ではダメ。ニーズ志向で
カフェを起点に顧客との接点を持ち、本命である葬儀サービスにつなげる――この戦略を成功させるためには、決して忘れてはならない前提があります。それが、「シーズ(企業視点)ではなく、ニーズ(顧客視点)で考える」という姿勢です。
多くの事業者が陥りがちなのは、「このサービスを売りたい」「この商品を知ってほしい」と自社の事情ばかりを優先してしまうことです。もちろん企業として売上を追求することは当然ですが、顧客にとって関心のないタイミングや方法で一方的に情報を押しつけると、かえって逆効果になります。特に、葬儀というセンシティブなテーマでは、相手の気持ちや準備の程度を無視したアプローチは敬遠されてしまいます。
葬儀屋がカフェを運営するというのは、一見「シーズ(=奇抜な発想)」のように見えますが、実際には「ニーズ志向」に基づいた巧みな戦略です。顧客は「おいしいコーヒーが飲みたい」「静かな空間で過ごしたい」という日常のニーズでカフェを訪れます。そのニーズをしっかりと満たしたうえで、さりげなく終活に関する情報が目に入るような仕組みを整えることで、「これなら話を聞いてみてもいいかな」と思ってもらえるのです。
つまり、「カフェ」という場は、顧客のニーズを満たすための“受け皿”であり、そこを起点にして初めて葬儀サービスへの関心が芽生えます。このプロセスを無視して、いきなり本命の売り込みに走ってしまえば、むしろ信頼を失いかねません。カフェ戦略が有効なのは、「まず相手の立場を理解する」という基本に忠実であるからこそなのです。
まとめ
葬儀というサービスは、必要な時にしか注目されないがゆえに、関係構築のチャンスが非常に限られています。しかも、そのニーズが発生する時点では、顧客は精神的にも時間的にも追い詰められていることが多く、冷静な判断ができないまま、慌ただしく業者を選ぶというケースが大半です。
このような背景から、近年では「日常的な空間」であるカフェを運営することで、事前に顧客との接点をつくろうとする葬儀社が増えています。この取り組みは単なる奇をてらったアイディアではなく、「敷居を下げる」「信頼を得る」「ニーズを把握する」といった重要な目的に基づいた、実に戦略的なマーケティング手法といえるでしょう。
ただし、成功させるためには、「売りたいからやる」という一方通行の発想を排し、顧客が何を求めているかにしっかり耳を傾ける姿勢が必要です。日常の小さなニーズに応えることで、「もしもの時にはここにお願いしよう」と思ってもらえる関係性を築いていく――それこそが、現代のサービス業に求められる新しいかたちです。
当センターでは経営に詳しい総合的な専門家が御社の発展のために全方位で貢献いたします。下記よりお気軽にご相談ください。

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危険度でランク付けする中小企業の債権管理手法

債権管理できていない中小企業は多い
企業活動を営む中で、貸付金や売掛金など、第三者に対する「債権」を保有することは避けられません。特に中小企業においては、これらの債権を「いずれ回収できるもの」「期日になれば自然に支払われるもの」と捉えがちです。しかし、現実にはそう単純にはいかず、適切に管理しなければ回収不能に陥るおそれもあります。大企業であれば法務部門や財務部門が厳格に管理していることもありますが、中小企業では人手不足などの事情もあり、債権管理が後手に回っていることが少なくありません。
本稿では、そうした中小企業に向けて、債権を「危険度の高さ」に応じてランク付けし、それぞれに対してどのように対応すべきかを具体的に解説していきます。まず最も危険度の高い債権はどのようなもので、どのようにリスクを下げるべきかを理解することが、損失の未然防止につながります。なお、危険度が高いからといってすぐに損金処理すべきという意味ではなく、適切な対処を講じることで回収可能性を高めることを目的としています。
そもそも契約書がない
債権管理における最大のリスクは、「契約書の不在」です。たとえ実際にお金のやりとりがあったとしても、契約書がないことで法的な立証が困難になります。たとえば通帳に貸付金の振込履歴が残っていたとしても、相手方が「これは贈与だった」と主張する可能性もあります。その場合、金銭の性質(貸付か、贈与か)について争いになり、回収が極めて困難になるのです。
また、契約書には金銭の性質だけでなく、支払条件や遅延損害金、担保の有無など、多くの重要事項を記載できます。こうした文書が存在しないことで、債権者側の立場は非常に弱くなります。よって、まずは金銭のやり取りが発生する前提であるにもかかわらず契約書が作成されていない場合、これは最も危険な状態であると認識し、速やかに契約書を整備するべきです。遡及的に作成することも可能ですので、関係が悪化する前に手を打っておくことが重要です。
支払い条件の定めがない
契約書が存在していても、「支払期限」が明記されていない契約は非常に危険です。たとえば「○○の業務について100万円を支払う」とだけ書かれていて、いつ支払うかの記載がないと、相手方にとっては「いつでも支払えばよい」と解釈されてしまい、結果として長期にわたって未回収になるおそれがあります。実際、「今すぐ支払わなければならないという認識がなかった」と主張されるケースも多く、これでは督促の根拠も弱くなってしまいます。
債権管理の観点からは、支払期日がない契約は回収不能リスクが高く、契約書があるにもかかわらず管理不十分な状態といえます。このような契約書があれば、すぐに支払期日や分割払いのスケジュールなど、明確な条件を追記する必要があります。可能であれば、債務者との合意により覚書や修正契約書を交わすことが望ましいでしょう。
長期間支払われていない
債権が長期間にわたり未回収となっている場合、それは時効による消滅という最悪のリスクをはらんでいます。民法上、貸付金や売掛金は通常5年で時効にかかるとされており、相手が時効の援用(=「もう払う義務はありません」と主張)をすれば、たとえ正当な債権であっても法的には回収不能となってしまいます。
したがって、長期間支払われていない債権がある場合には、まず速やかに内容証明郵便などで督促し、相手に「支払意思あり」の返答や一部入金を得ることで、時効の進行を止める必要があります。逆に、少額でも継続的に入金がある場合は、債務の存在を相手が認めているとみなされ、リスクは多少軽減されます。それでも、分割払いの内容や履行状況を逐一確認し、債権の健全性を保つ努力が必要です。
相手の信用リスクが増大
債権の回収可能性は、相手企業の信用力に大きく依存します。つまり、相手の経営が悪化し、支払能力がなくなれば、いくら契約が整っていても意味をなしません。とりわけ、支払期限を過ぎたまま未回収が続いている場合、その間に相手方が倒産や廃業するリスクは日に日に高まります。
したがって、債権者側は相手企業の経営状況に敏感でなければなりません。決算書の開示や支払遅延の頻度などを通じて信用リスクを把握し、危険が増大していると判断される場合は、回収のための法的手段(訴訟や仮差押え)を早急に検討するべきです。「もう少し待てば払ってくれるかもしれない」と楽観的に構えるのは非常に危険です。むしろ、早期の法的対応が被害を最小限に抑えることにつながるのです。
まとめ
中小企業にとって、債権は重要な資産です。しかし、回収が不確実である以上、単に「ある」と思い込むだけでは意味がありません。特に契約書がない、支払条件が不明、長期滞納されている、相手の信用が落ちている――こうした要素が重なるほど、債権の危険度は高くなります。
債権管理の第一歩は、債権ごとにそのリスクを見極めて分類し、対策の優先順位をつけることです。そして、危険度が高いものほど積極的に対応し、時には弁護士や司法書士などの専門家の支援を受けて法的措置を講じることも検討すべきです。手遅れになってからでは、企業の損失は極めて大きくなります。ぜひ、自社の債権を「資産」ではなく「管理対象」として捉え直し、現実的かつ効果的な管理体制を整えることが大事です。
当センターでは弁護士兼公認会計士が、御社の債権を適切にランク付けしたうえで、危険度に応じた対策を丁寧に講じるサービスを提供しております。下記よりお気軽にご相談ください。

当センターは、弁護士・公認会計士・中小企業診断士・CFP®・ITストラテジストなどの資格を持つセンター長・杉本智則が所属する法律事務所を中心に運営しています。他の事務所との連携ではなく、ひとつの窓口で対応できる体制を整えており、複雑な問題でも丁寧に整理しながら対応いたします。
窓口を一本化しているため、複数の専門家に繰り返し説明する必要がなく、手間や時間を省きながら、無駄のないスムーズなサポートをご提供できるのが特長です。
大阪府を拠点に、東京、神奈川、愛知、福岡など幅広い地域のご相談に対応しており、オンラインでのご相談(全世界対応)も可能です。地域に根ざした対応と、柔軟なサポート体制で、皆さまのお悩みに親身にお応えいたします。
初回相談は無料、事前予約で夜間休日の相談にも対応可能です。どうぞお気軽にご相談ください。
電子署名契約は便利だが意外に不便?

電子署名契約が流行
近年、私たちの仕事の現場では、紙と印鑑で取り交わしていた契約が、急速に電子署名契約に置き換わりつつあります。従来は契約書を印刷して、代表者印を押し、郵送して相手方に届け、先方でも署名押印がなされて返送されるという一連の手続きが当たり前でした。しかし、デジタル化の波により、多くの企業がクラウド上の電子署名サービスを活用して契約業務を進めています。
この背景には、新型コロナウイルス感染症の影響も大きかったと言えるでしょう。在宅勤務やテレワークが一般化し、出社しなければ印鑑を押せないといった状況が障害となり、契約の締結自体が滞ってしまう企業も少なくありませんでした。そうした課題を解決する手段として、電子署名サービスは多くの経営者や法務担当者に歓迎されたのです。
現在では、不動産の賃貸借契約や業務委託契約、雇用契約といった個人単位の契約から、企業間の大規模取引に至るまで、電子署名契約は幅広く活用されています。加えて、政府としても行政手続きのデジタル化を推進していることから、今後ますます電子署名契約が主流になることは間違いありません。
このように、電子署名契約は一度に複数の署名者が遠隔地から同時に署名できるなど、時間と場所の制約を取り払ってくれる便利な仕組みです。多様な業界で導入が進み、クラウドサービスも増加し、選択肢が豊富になっています。
もっとも、電子署名契約が万能であるかというと、決してそうではありません。使いこなすにはいくつかの注意点があり、便利さの裏に潜む落とし穴を理解しておく必要があります。そこで本稿では、こうした電子署名契約利用上のメリットと注意点、そしてその対策を紹介します。
アナログの押印や郵送手続きの省略が可能
電子署名契約の大きな魅力は、従来の契約締結で煩雑だった押印作業や郵送手続きを大幅に省略できる点にあります。特に法人同士の契約では、印鑑を準備するだけでも大変でした。実印や会社印を保管している部署が別のビルや本社にあったり、代表者のスケジュール調整が必要だったりと、署名押印のためだけに何日もかかることは珍しくなかったのです。
また、契約書を製本し、相手方に郵送して返送を待つ間もタイムロスが生じます。ちょっとした修正があれば、再度印刷し直して捺印、郵送し直すという手間が発生し、最終合意から契約締結までに多くの時間が費やされていました。
これに対して、電子署名契約を導入すると、オンラインで文書を確認し、合意が取れたらワンクリックで署名完了となります。相手方も同様にオンラインで署名できるので、物理的な書類の受け渡しは一切不要です。この効率化により、特に取引先が遠方の場合や海外の場合でもスムーズに契約を締結することができます。
加えて、署名済みの契約書は即時に電子データとして保存され、複数の担当者間で共有できます。郵送の際に起こりがちな紛失リスクや書類の差し替えミスも減少しますし、進捗管理が可視化されるため、契約締結のボトルネックを見つけやすくなるのも大きな利点です。
このように、押印と郵送を省略できるだけで、契約のスピード感と正確性は飛躍的に向上します。事務担当者の負担も大幅に軽減されるため、より生産性の高い業務にリソースを割けるようになるでしょう。
文字が小さく読みにくい・・を言い訳にしてはならない
電子署名契約は、ほとんどの場合PDFなどの電子ファイルとして送られてきます。パソコンやスマートフォン、タブレットで画面をスクロールしながら内容を確認することが一般的です。しかし、画面越しに文書を読むという行為は、紙の書面に比べて細かい字が視認しにくく、長文であればあるほど読了するのが大変です。
特に高齢の経営者や書面文化に慣れた世代の中には、会議資料でさえ必ず紙に印刷してからでないと読めないという方も少なくありません。このような場合、電子署名契約書の内容も「後でじっくり確認すればいいだろう」「どうせ大きな変更はないはずだ」と軽く目を通すだけで終わってしまいがちです。
しかし、これは大きな落とし穴です。契約書は一字一句が重要な意味を持ちます。数字の誤記や条文の追加・削除が、大きな金銭的負担や法的責任に直結することもあるのです。「文字が小さくて読めなかった」「気がつかなかった」といった理由は、法的には一切の免責理由にはなりません。
もちろん、長文の契約書を小さな画面で読むのは骨が折れます。それでも、最後に署名するのは自分自身ですから、内容を理解せずに締結したことで後から不利益を被っても、それは自己責任と言わざるを得ません。
このようなリスクを避けるためには、画面の拡大表示機能を活用したり、どうしても読みづらい場合は紙に印刷して確認するなどの一手間を惜しまないことが大切です。電子署名契約は便利な半面、読み飛ばしや誤解を生まないように、これまで以上に内容確認の習慣を徹底しなければなりません。
契約の目的物や支払条件がそれまでの交渉内容と異なる可能性
電子署名契約を締結する際に、最も気を付けなければならない点の一つが、最終版の契約内容がこれまでの交渉経過と完全に一致しているかどうかです。多くの企業では、契約締結までに複数回の打合せやメールのやり取りを経て、条件を擦り合わせていきます。しかし、修正を繰り返すうちに、思わぬ箇所が書き換えられてしまったり、最新版の文面に意図しない変更が加わることもあります。
例えば、契約の目的物の内容が当初の想定と微妙に異なっていたり、納期がずれていたりすることは珍しくありません。加えて、対価の支払条件も大変重要です。支払期日や分割払いの有無、支払方法などが一部でも変わってしまえば、会社の資金繰りに大きく影響を及ぼすこともあります。
多忙な中での契約締結では、つい「大丈夫だろう」「これまで通りの内容だろう」と安易に考えてしまいがちです。しかし、後で「こんな条件は聞いていなかった」「こんな内容では承諾できない」と主張しても、署名をしてしまっている以上は合意したとみなされるのが一般的です。
特に、電子署名契約の場合は、署名するのもクリック一つのため、どうしても確認作業が雑になりがちです。だからこそ、最終版の契約書を細かく確認し、自分の認識と食い違いがないかを確認することが不可欠です。重要な部分だけでなく、些細な条項まで目を通す姿勢を忘れてはいけません。
電子署名契約は便利な一方で、こうした「思い込み」による見落としのリスクが潜んでいます。トラブルを防ぐには、契約書の目的物、価格、支払条件といった主要なポイントについては必ずダブルチェックする習慣をつけましょう。
対策はプリントアウト確認と、交渉履歴の保存
電子署名契約で思わぬ不利益を被らないためには、やはりアナログな手段を上手に組み合わせることが大切です。最も有効な対策の一つは、契約書を一度プリントアウトし、紙ベースでじっくり内容を確認することです。
画面上では見落としがちな文字の誤記や条項の矛盾も、紙にすると意外と目につきやすいものです。付箋を貼って疑問点を整理したり、関係者と直接やり取りしながら修正点を共有できるのも紙ならではの利点です。
もう一つの大切な対策は、契約に至るまでの交渉履歴をきちんと残しておくことです。メールやチャットツールでのやり取り、会議の議事録など、どのような経過でどの条件が決まったのかを記録として残しておくと、万一トラブルになった際に大きな武器となります。
「この条件は口頭で合意していた」「そのような条項を受け入れた覚えはない」といった主張を裏付ける証拠がなければ、契約書の文面が優先されてしまうのが通例です。電子署名契約は手軽に進められるだけに、交渉の裏付けを残す重要性はより高いと言えるでしょう。
さらに、社内で電子署名契約を運用する際には、チェック体制を明確にし、誰が最終確認を行うのかをルール化しておくことも有効です。プリントアウト確認と交渉履歴の保存、この2つを徹底することで、電子署名契約の便利さを最大限に活かしつつ、想定外のリスクを避けることができます。
まとめ
電子署名契約は、デジタル化が進む現代において、時間と場所の制約を取り払い、押印や郵送の手間を大幅に削減する革新的な仕組みです。特に在宅勤務や遠隔地同士の取引が当たり前になった今、その利便性は大きな価値を持っています。
しかし一方で、文字が小さく読みにくいために内容確認が疎かになったり、交渉内容とのズレを見落としたまま締結してしまうといった、デジタル特有の落とし穴も存在します。クリック一つで署名が完了するからこそ、これまで以上に慎重な確認が求められるのです。
こうしたリスクを防ぐためには、アナログな方法を組み合わせることがポイントです。面倒でも一度プリントアウトして隅々まで確認する習慣を持つこと、そして交渉の過程を証拠として残しておくことが、後々のトラブル回避に大きく役立ちます。
電子署名契約は確かに便利です。しかし、便利さに流されて基本をおろそかにすれば、不便どころか思わぬ損失を被る恐れもあります。正しい知識と慎重さを持って活用し、デジタルの恩恵を最大限に享受していくことが大事です。
当センターではITを駆使した労働生産性向上に関するご相談や課題解決にも対応しております。ぜひ、お気軽にご相談ください。

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