リーダー職を増やすために必要な社内改善ポイント【弁護士×MBAが解説】

仕事はできるが昇進したくない社員の増加

企業にとって、仕事のできる社員は非常に重要な存在です。与えられた仕事を正確に処理するだけでなく、自ら課題を見つけ、改善し、より大きな成果につなげられる人材は、会社に長く貢献してもらいたいと考えるのが自然です。しかし、こうした社員ほど、必ずしもリーダー職への昇進を望んでいるとは限りません。

仕事の能力が高い社員に対して、会社が次の段階として管理職やリーダー職を提示することは珍しくありません。ところが本人からすると、昇進によって自分が望んでいた仕事から離れたり、専門性を高める機会が減ったりする可能性があります。責任や会議、部下の管理などが増える一方で、自分自身の能力を伸ばす時間が減ると感じれば、昇進を魅力的なものとして受け止められないこともあります。

その結果、優秀な社員ほど昇進を断り、一定の段階で会社を離れるという状況が生じます。企業側は「能力が高いのだから会社の中心人物になってほしい」と考えますが、社員側は「能力が高いからこそ、自分の専門性をさらに伸ばしたい」と考えることがあります。この違いを放置すれば、会社が期待する人材ほど定着しないという逆転現象が起こります。

つまり、リーダー職が不足している問題は、単純に昇進を希望する社員が少ないという話ではありません。会社が用意しているキャリアと、社員が望む成長の方向が一致しているかを考える必要があります。優秀な社員を長期的に組織へつなぎ止めるには、会社側が社員の成長と組織への貢献を両立できる仕組みを考えなければなりません。そこで本稿では、リーダー職を増やすために企業が変えるべき社内改善のポイントを解説します。

貢献スキルは汎用性が高い

給料は、基本的には社会や組織に対して価値を提供したことの対価です。そのため、仕事のできる人ほど、自分がどのような能力によって価値を生み出せるのかを意識し、その能力を高めようとします。ここで重要になるのが、特定の会社だけで通用する能力ではなく、さまざまな仕事に応用できる「貢献スキル」です。

貢献スキルの汎用性が高ければ、所属する部署や担当する仕事が変わっても、その能力を使って成果を出すことができます。専門知識、問題解決力、営業力、企画力、交渉力、分析力など、仕事を通じて身につけた能力が別の場面でも役立つのであれば、社員自身にとって成長する意味は大きくなります。
優秀な人材は、こうした能力を会社から言われなくても磨こうとする傾向があります。自分の能力が高まれば、任される仕事の幅が広がり、より難しい課題にも対応できるようになるからです。新しい仕事を任されることでさらに経験が積み重なり、その経験によってまた新しい能力が身につくという循環も生まれます。

この循環が続いている間は、社員にとって会社は成長できる場所になります。会社側にとっても、能力の高い社員がより高度な仕事を担えるようになるため、組織全体の生産性を高めることにつながります。社員が成長し、その成長によって会社の成果も高まるのであれば、両者の関係は自然にウィンウィンになります。

したがって、優秀な社員を定着させるうえでは、単に待遇を良くするだけでは十分とは限りません。本人が仕事を通じて能力を伸ばし続けられる状態を維持することが重要です。成長の実感があり、自分の能力が仕事上の成果につながっていると感じられる限り、社員は現在の環境に価値を見いだしやすくなります。

総務やリーダー職は無駄?

順調に能力を伸ばしている優秀な社員が、転職を考えるきっかけになりやすいのが、総務やリーダー職などへの配置や打診です。もちろん、これらの仕事が企業にとって不要という意味ではありません。組織を維持し、円滑に運営するためには、管理や調整を担う仕事が必要です。しかし、会社に必要な仕事であることと、優秀な社員がその仕事を自身のキャリアとして望むことは別問題です。

総務やリーダー職では、個人が持っている貢献スキルを直接活用する機会が減る場合があります。担当業務の遂行よりも、社内調整、進捗管理、会議、部下への対応、組織上の手続などに時間を使う場面が増えるからです。これまで専門性を高めることで成果を上げてきた社員にとっては、自分の能力をさらに伸ばす機会が少なくなったと感じる可能性があります。

特に、仕事そのものに強い関心を持ち、専門能力を高めることにやりがいを感じている社員ほど、この変化を大きく受け止めます。会社から見れば責任あるポジションへの昇進でも、本人から見れば、それまで積み上げてきたキャリアから離れることになる場合があります。

ここで問題になるのは、総務や管理職という仕事そのものではなく、それをキャリア上の当然の昇進ルートとして扱うことです。社員が望んでいる方向と異なる仕事を一律に「昇進」と位置づければ、能力の高い人ほど違和感を覚えます。そして、自分が身につけてきた能力を活かせる環境を求めて、社外に目を向けることになります。

企業に必要な役割を誰が担うのかという問題と、社員がどのようなキャリアを歩みたいのかという問題は、分けて考える必要があります。会社にとって重要な仕事だからという理由だけで、本人の希望を無視して配置すれば、優秀な人材の定着を難しくすることがあります。

優秀な人ほどキャリアを選ぶ

一定の貢献スキルを身につけ、継続的に成果を上げられる人は、転職市場において自分の能力を活かせる選択肢を持ちやすくなります。どの会社でも同じように評価されるとは限りませんが、汎用性の高い能力を持っていれば、自分がどのような仕事をしたいのかを基準にしてキャリアを考えやすくなります。

このような社員にとって重要なのは、単に現在の会社に在籍していることではありません。自分がやりたい仕事を続けられるか、能力をさらに高められるか、仕事を通じて新しい価値を生み出せるかという点が、勤務先を選ぶ際の重要な要素になります。会社への在籍そのものが目的になっていなければ、キャリア上の合理性を考えて環境を変えることも十分にあり得ます。

反対に、自分が積み上げてきた能力を十分に活かせない仕事が増えると、現在の会社にとどまる理由は弱くなります。特に、管理業務や社内調整が中心となり、自分が得たい専門性や経験から遠ざかると感じれば、昇進そのものが魅力ではなく負担になることがあります。

ここには企業と個人の考え方の違いがあります。企業は、優秀な社員ほど組織のために重要な仕事を担ってほしいと考えます。一方、社員は、自分の能力を社会の中でより広く活用しながら成長したいと考えることがあります。会社のために貢献することと、自分の能力を社会で活かすことが一致していれば問題はありません。しかし両者が離れてしまえば、優秀な社員ほど会社を離れる判断をしやすくなります。

したがって、社員が自らの能力を活かしたいと考えることを前提として、その能力を組織の中でも活かせる状態を作ることが、長期的な人材確保において重要になります。

企業への忠誠心を醸成する

リーダー職を担う社員を増やすためには、企業への忠誠心を育てることが重要です。ただし、ここでいう忠誠心は、会社の指示に無条件で従うという意味ではありません。自分が所属する企業のために力を使いたい、この組織の成長に関わりたいと思える状態をつくることが重要です。

そのためには、社員がどのような能力を持ち、どのような方向に成長したいのかを理解したうえで、その能力を企業の活動に結びつける必要があります。会社から一方的に役割を与えるのではなく、本人の成長と組織への貢献が両立する関係を構築することが大切です。

また、自分の仕事が会社の利益だけでなく、社会に対する価値の提供につながっていると実感できる環境も重要です。企業の活動を通じて社会に貢献できていると感じられれば、社員は会社という組織を単なる雇用主としてではなく、自分が価値を提供するための重要な基盤として捉えやすくなります。逆に、社員が会社の中で単なる駒として扱われていると感じれば、組織への愛着を持つことは難しくなります。能力の高い社員ほど、自分の力をどこで、どのように使うのが有効なのかを考えるため、会社側の扱い方は定着に大きく影響します。

リーダー職を増やすためには、役職を用意して昇進を促すだけでは足りません。社員が「この会社のために貢献したい」と自然に思える環境をつくることが必要です。そのためには、社員を大切な経営資源として認識し、能力を正しく見極め、成長できる仕事を与え、組織への貢献が本人の成長にもつながる状態を作ることが求められます。企業と社員の双方が価値を感じられる関係があってこそ、リーダーを担う人材は継続的に育っていきます。

まとめ

リーダー職を増やすためには、単純に優秀な社員へ昇進を勧めるだけでは十分ではありません。仕事のできる社員ほど、自分の能力を高め、それを幅広い仕事で活用することに価値を感じています。そのため、会社が必要としている役職と本人が望むキャリアが一致しなければ、昇進が魅力ではなくなり、転職を考えるきっかけにもなります。

企業に必要な総務や管理業務を否定する必要はありません。しかし、それらを全社員にとって当然のキャリア上の到達点と考えることには注意が必要です。社員がどのような能力を伸ばしたいのかを踏まえ、その能力を組織の中でも発揮できる仕事を設計することが重要です。

また、長期的な定着には、待遇だけでなく「この会社のために貢献したい」と思える関係づくりが欠かせません。社員を単なる人手として扱うのではなく、企業の価値を生み出す重要な存在として捉え、成長と貢献を両立させる必要があります。リーダー職を増やすという課題は、役職者の人数を増やすだけの問題ではなく、社員が会社に残りながら能力を発揮できる組織をつくる問題として考えることが重要です。

当センターでは人財育成の視点をふまえて労働環境の整備や労働問題対応に取り組んでいます。下記よりお気軽にご相談ください。

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