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債権管理を法律事務所に外注する金融機関が増加
近時、債権管理の一部または全部を法律事務所に外注する金融機関が増えています。従来、金融機関における債権管理といえば、担当部署や担当者が債務者に連絡し、支払状況を確認しながら返済を促すという方法が一般的でした。しかし、取引先や顧客の数が多くなるほど、すべての債権について金融機関自身が継続的かつ細かな管理を行うことには限界があります。
特に、返済が遅れている債務者や、今後の回収に注意を要する債務者については、通常の顧客対応とは異なる判断や対応が必要になります。連絡の頻度や内容、支払期限の設定、今後の回収可能性の判断など、担当者には相応の経験と知識が求められます。そのため、一定の段階から債権管理を法律事務所に委託し、金融機関と法律事務所が役割を分担する方式が広がっています。
もちろん、債務者側からすると、これまで金融機関から来ていた連絡が法律事務所から届くことには相応のプレッシャーがあります。そのため、法律事務所への外注には、単に金融機関の業務量を減らすという意味だけではなく、債権管理そのものの実効性を高める意味があります。
さらに、金融機関を取り巻く環境では、顧客数の多さに加えて、債権の種類や管理方法も複雑化しています。すべてを一律に金融機関内部だけで処理することが、必ずしも効率的とはいえません。外部の専門家を適切に組み合わせることで、業務の質を維持しながら管理コストを抑えるという発想が重要になっています。そこで本稿では、金融機関が法律事務所に債権管理を外注する理由を解説します。
支払いを促す効果
金融機関が債権管理を法律事務所に外注する第一のメリットは、やはり支払いを促す効果です。債務者にとって、債権者から支払いを求められること自体は珍しいことではありません。金融機関からの電話や郵便による連絡も、日常的な事務連絡の延長として受け止められてしまう場合があります。その結果、本来は早急に対応すべき滞納であっても、支払いを後回しにする債務者が生じます。
この点、金融機関自身からの連絡と、弁護士または法律事務所からの連絡とでは、債務者が受ける心理的な重みが異なります。法律事務所から通知が届けば、債務者は「このまま支払わなければ、さらに手続が進むのではないか」と考えやすくなります。必ずしも直ちに訴訟や強制執行につながるわけではありませんが、将来的に財産を差し押さえられるなど、より大きな不利益につながる可能性を意識するようになります。
債務者は、必ずしも意図的に支払いを拒んでいるとは限りません。資金繰りの問題や事務処理の遅れなどによって、支払いが後回しになっていることもあります。しかし、債権者との関係が長いほど、「多少遅れても待ってもらえる」という甘えが生じることがあります。
法律事務所が債権管理に入ることには、このような甘えを断ち切る意味があります。もちろん、法律事務所からの連絡だけですべての債権が回収できるわけではありません。しかし、回収に向けた債務者の意識を変化させる効果は無視できません。金融機関にとっては、回収業務の効率を高めながら、担当者が督促に費やす時間を削減できる点にも意味があります。そのため、債権管理の外注において、支払いを促す効果は非常に大きな位置を占めています。
人手不足対応
金融機関が債権管理を法律事務所に外注するもう一つの大きな理由が、人手不足への対応です。金融機関が抱える顧客数は非常に多く、その中には正常に返済を続けている顧客だけでなく、支払いに遅れが生じている顧客や、今後の返済に注意を要する顧客も含まれます。これらをすべて金融機関内部の担当者だけで細かく管理することは、相当に大きな負担になります。
そこで、金融機関がすべての債権を一律に外注するのではなく、要注意先を中心として法律事務所に委託する方法が有効になります。金融機関内部では通常の管理を行い、一定の基準に該当した案件だけを外部に移すことで、内部担当者の負担を抑えることができます。結果として、金融機関は限られた人員を本来優先すべき業務に集中させることが可能になります。
この方式は、法律事務所側にとっても合理性があります。金融機関から委託される案件について、対象となる債権の種類や対応手順をある程度整理することができれば、業務をマニュアル化しやすくなります。すべての案件について一から対応方法を検討するのではなく、一定の基準に従って処理できる部分を増やすことで、効率的な業務運営が可能になります。
人手不足が深刻になるほど、「仕事を減らす」のではなく、「誰がどの仕事を担当するかを組み替える」という発想が重要になります。金融機関が得意とする顧客管理や金融判断と、法律事務所が得意とする法的な債権管理を分担すれば、双方が限られた人材を有効に活用できます。
債権管理は金融機関にとって必要不可欠な業務である一方、すべてを自社で抱える必要がある業務ではありません。専門性を要する部分を外部に切り出すことで、内部の人員不足を補いながら業務を継続できます。このような役割分担が可能であることが、法律事務所への債権管理外注を進める重要な要因となっています。
法的手段への円滑な移行
法律事務所に債権管理を外注する案件は、基本的には要注意先です。正常に返済が行われている債権まで外部に委託する必要性は高くありません。問題となるのは、支払いが滞り、通常の督促だけでは解決が難しくなった案件です。このような案件では、単に連絡を続けるだけでなく、状況に応じて次の対応を判断する必要があります。
金融機関にとって、訴訟提起などの法的手段は、常に最初に選択するものではありません。裁判手続には費用や時間がかかり、担当者の負担も発生します。しかし、だからといって、法的手段を取るべき場面で躊躇することが適切とは限りません。債務者の財産状況や対応状況などから、任意の交渉だけでは回収が難しいと判断される場合には、適切な時期に法的手段へ移行する必要があります。判断を先延ばしにすることで、回収可能性が低下することもあるためです。
法律事務所に債権管理を委託していれば、日常的な管理の段階から案件の状況を把握してもらえます。そのため、単に「支払いが遅れている」という事実だけではなく、その後の連絡状況や債務者の対応などを踏まえて、今後の対応を検討しやすくなります。法的手段への移行が必要な案件についても、判断を大きく遅らせることを防ぎやすくなります。
また、法的手段にはさまざまな選択肢があります。どの手段を採用することが適切なのかは、債権額、証拠関係、債務者の状況、回収可能性などによって異なります。金融機関の担当者だけで判断することが難しい場合でも、法律事務所に委託していれば、法的な観点から選択肢を整理してもらうことができます。
つまり、法律事務所への外注は、任意の支払いを促す段階だけでなく、必要な場合に法的な回収へ移行するための体制を整えるという意味でも有効です。法的手段を過度に恐れる必要も、反対に安易に選択する必要もありません。案件ごとの状況を継続的に確認し、適切な時期に適切な手段を選ぶための専門的な判断を組み込みやすいことが、外注の重要なメリットとなります。
破産対応
債権管理を行っていると、最終的に債務者の資力が大きく低下し、債務の履行が難しくなるケースがあります。その場合、債務者が破産手続を申し立てることもあります。金融機関にとって、債務者の破産は通常の返済管理とはまったく異なる対応を求められる場面です。単に支払いを求めるだけではなく、裁判所を介した手続に対応する必要が生じるからです。
債務者が破産した場合、債権者には一定の手続上の対応が必要になります。代表的なものが、破産手続における債権届の提出です。金融機関が有する債権について、金額や内容を確認し、必要な資料を整えたうえで手続に対応しなければなりません。通常の債権管理とは異なる専門的な知識が必要になるため、担当者にとって負担の大きい業務になります。
このような業務には、一定のスキルを持った人材が必要です。金融機関の担当者がすべての法的手続について習熟するには、教育や経験の蓄積が必要になります。破産案件が継続的に発生するとは限らない場合には、内部に専門人材を常時配置することが必ずしも効率的とはいえません。
そこで、債権管理を委託している法律事務所に、破産対応までまとめて依頼することには大きな意味があります。通常の債権管理から破産手続への移行までを同じ外部専門家に任せることができれば、金融機関側で新たに案件を引き継ぐ必要が少なくなります。これまでの経緯や債権の内容を把握している法律事務所が、そのまま必要な手続に対応できるためです。
債権管理では、通常の返済が続く案件だけを見ていればよいわけではありません。返済困難から法的整理へ移行する案件も含めて、債権の状態に応じた対応が求められます。そのため、破産という特殊な局面まで含めて業務を任せられることは、法律事務所に債権管理を外注する大きなメリットの一つです。
まとめ
金融機関による債権管理の法律事務所への外注は、単に「督促を外部に任せる」という単純な話ではありません。金融機関が限られた人員と時間を有効に使いながら、債権管理の実効性を高めるための業務分担として捉える必要があります。
債権管理を法律事務所に委託することで、債務者に支払いを促す効果が期待できます。金融機関からの通常の連絡では対応を後回しにしてしまう債務者に対しても、法律事務所からの連絡によって、債務を放置することの重大性を認識させやすくなります。
また、多数の顧客を抱える金融機関にとって、すべての債権を自社だけで管理することは大きな負担です。要注意先など一定の案件を外部に委託すれば、金融機関内部の担当者が担う業務を整理でき、人手不足への対応にもつながります。法律事務所側も業務を標準化しやすくなり、双方に効率化のメリットが生まれます。
さらに、継続的に案件を管理してもらうことで、法的手段が必要になった場合の移行も円滑になります。案件の経緯を把握した法律事務所が対応するため、必要な手続を判断しやすく、金融機関側の引継ぎ負担も抑えられます。
そして、債務者が破産した場合にも、債権届の提出など専門性を要する手続に対応してもらえます。通常の債権管理だけでなく、その後に発生する法的手続まで一貫して任せられる点は、外注の大きな価値です。
今後、人手不足が続く中では、金融機関がすべての業務を内部だけで抱え込むことには限界があります。重要なのは、金融機関自身が担うべき業務と、専門家に任せるべき業務を適切に切り分けることです。債権管理についても、法律事務所を単なる督促の代行先としてではなく、回収業務を支える専門的な外部リソースとして活用することが、効率的な金融機関経営につながっていきます。
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