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AIに奪われる仕事と言われるが・・
「AIに奪われる仕事ランキング」といった言葉が登場して久しくなりました。AIの進歩によって、これまで人が時間をかけて行ってきた作業が、短時間で処理できるようになっています。知識や技術が必要だと思われていた領域にもAIが入り込み、「これから人間の仕事はなくなるのではないか」という不安を感じる人が増えるのも無理はありません。
私自身も、以前はPythonのコードを書けるようになりたいと考え、一生懸命勉強したことがあります。文法を覚え、コードの構造を理解し、エラーが出れば原因を調べ、少しずつ自分で書けるように努力しました。しかし現在では、生成AIに指示すれば、一定程度のPythonコードなら簡単に作ってくれます。苦労して覚えたことを、AIがあっという間に処理しているのを見ると、「あの努力はいったい何だったのだろう」と落胆することがあります。
自分が長い時間をかけて身につけた技術を、AIがより速く、場合によってはより正確に処理するようになれば、自分の存在価値そのものが否定されたように感じることがあります。しかし、ここで「AIができる仕事が増えた=人の仕事がなくなる」と考えるのは適切ではありません。AIが作業を担えるようになったのであれば、むしろ人は、その作業に費やしていた時間や労力を別の役割に振り向けられるようになります。
AIが得意な領域ではAIを使い、人にしか担えない部分では人が力を発揮するという考え方が必要です。AIによって仕事の一部が変化することと、人間が働く必要がなくなることは同じではありません。仕事そのものが消えるのではなく、仕事の中身や、人が担当する位置が変わっていくと考える方が現実的です。
そこで本稿では、AI時代に人が仕事を失わず、むしろ価値を発揮し続けるための働き方について考えていきます。
使い手がいなければAIは活躍できない
いかにAIが優秀であっても、それだけで勝手に仕事を完成させられるわけではありません。AIは与えられた指示や条件をもとに処理を行うため、何をさせるのか、どのような結果を求めるのかを判断する存在が必要です。AIの性能が高くなればなるほど、この「使い手」の役割が重要になります。
Pythonのコード作成を考えても、AIにコードを書かせること自体は難しくありません。しかし、そこで本当に重要なのは、AIに何を指令するかという部分です。どのような処理を実現したいのか、どのようなデータを扱うのか、どのような条件を設定するのか、最終的にどのようなコードになれば正しいのかをイメージできなければ、AIに適切な指示を出すことはできません。
つまり、Pythonのコードを書く作業そのものをAIに任せられるようになったとしても、Pythonという技術そのものを理解する必要性がなくなるわけではありません。むしろ、AIが出力した内容を適切に導くためには、Pythonについて一定以上の知識を持っていることが求められます。知識がなければ、AIが提示したコードが適切なのか、条件に合っているのか、そもそも何を修正すべきなのかを判断できないからです。
ここで人間に求められるのは、AIに対して目的を伝え、必要な条件を設定し、望む方向へ処理を進めさせる「指令役」としての能力です。AIに何をさせるべきかを決めるには、その仕事についての理解が必要です。したがって、AIを使う仕事では、従来型の技能がそのまま不要になるのではなく、その技能を別の形で活用することになります。
人間がすべてを手作業で行う必要がなくなったとしても、AIを正しく動かすための判断まで機械に任せられるとは限りません。特に専門性の高い領域では、適切な指令を出せる人の価値が大きくなります。AIはあくまで道具であり、道具を使って何を実現するのかを決める主体まで自動的に置き換わるわけではありません。
チェックすべきは成果物だけではない
AIに仕事を任せる場合、最初に必要になるのが、AIが作った成果物を確認する作業です。Pythonのコードであれば、指令した人が内容を確認し、意図した処理になっているか、不要な部分が含まれていないか、想定外の動作につながる部分がないかなどを確認する必要があります。
しかし、確認すべきものは成果物だけではありません。コードそのものに問題がなかったとしても、それによって本来求めていた成果が得られているとは限りません。コードが動くことと、目的を達成することは別の問題です。
さらに、成果が出た後にも確認すべきことがあります。求めていた成果が実際に上がっているのか、それを利用する側がどのように評価しているのか、業務全体として意味のある結果になっているのかを確認しなければなりません。
このように考えると、AIを活用する仕事では、単純に「AIへ指示を出して成果物を受け取れば終了」という構造にはなりません。指示を出す前には、何を求めるのかを整理する必要があります。成果物を受け取った後には、その内容を確認し、さらに実際の目的が達成されたかを判断する必要があります。その一連の流れを成立させること自体が、人間の仕事になります。
そして、AIにより良い指令を出すためには、現在の指令で十分なのかを考え続けることも重要です。結果が期待どおりでなければ、何が足りなかったのかを探し、条件を変え、問い方を変える必要があります。こうした改善点を見つけるためには、業務そのものへの理解が欠かせません。
AIは与えられた条件の中で処理能力を発揮できますが、「本当に確認すべきものは何か」「何をもって成功とするのか」を自ら決めることには限界があります。そこを考え、必要な確認を積み重ねる役割は、人が担うことになります。
使い手の育成
組織の中でAI活用を広げようとする場合、単に高性能なAIを導入するだけでは十分ではありません。AIを適切に使える人を組織内に増やす必要があります。どれほど便利な道具を導入しても、その使い方を理解している人が少なければ、期待した効果を得ることはできません。そのため、AI活用においては「使い手を育てる」という活動そのものが重要になります。
この育成活動をAIに全面的に任せることは困難です。AIは質問に答えたり、教材を作ったり、学習を補助したりすることはできます。しかし、組織の中でどのような人材を育てる必要があるのか、現在どの程度の知識があるのか、どこにつまずいているのか、どのような能力を身につければ実務で使えるようになるのかを総合的に判断するには、人による管理が必要です。
そのためには、Pythonに精通し、なおかつAI活用にも対応できる専門家が講師役を担う必要があります。知識を一方的に伝えるだけではなく、AIを使う際の考え方や、指示を組み立てる際の判断基準まで伝えることが重要です。さらに、受講者が実際にAIを使えるようになったかを確認し、必要に応じて指導方法を修正することも求められます。
ここには、人材育成という明確な人間の仕事があります。AIが高度になればなるほど、AIを使える人と使えない人の差が広がる可能性があります。その差を埋めるためには、教育する側の人材が必要です。AIを導入する組織ほど、AIそのものへの投資だけでなく、それを使いこなす人材を増やすための投資も必要になります。
AIによって既存の作業が効率化されれば、人間が行う仕事の一部は減ります。しかし、それによって新たに必要となる教育、評価、運用、調整などの仕事も生まれます。優れた専門知識と指導力を持つ人には、AI時代だからこそ発揮できる役割があります。
結局、役割分担の問題
ここまでPythonコード作成を題材に考えてきましたが、苦労して身につけたスキルがAIにかなわなくなるという現象は、さまざまな分野で起こり得ます。。しかし、AIの登場によって、その努力の価値が完全に消えるわけではありません。
そもそも、人間が身につけたスキルは、その作業を自分の手で行うことだけに価値があるわけではありません。ある分野について深く理解しているからこそ、AIに何をさせるべきかを判断できます。また、AIが出した結果を評価することもできます。さらに、業務上の目的に照らして、どのような結果なら意味があるのかを考えることもできます。
AIが実働部分を担うようになれば、人間の活動領域が狭くなることは確かです。これまで一人の人間が調査から作成、処理、整理まで幅広く担当していたとしても、その一部をAIに任せることが可能になります。その意味では、人間が直接手を動かす領域は減少していくでしょう。
しかし、活動領域の幅が狭くなったとしても、深さまで失われるとは限りません。AIが広い範囲を素早く処理できるのであれば、人間は特定の領域についてより深く考えることができます。表面的な処理をAIに任せ、その分、人間が専門的な判断や高度な意思決定に集中するという役割分担が可能になります。
したがって、AI時代に必要なのは、人間がAIと同じことをするために競争することではありません。AIが優位に立つ部分はAIに任せ、人間は自分が持つ専門性をより深いところまで磨くことです。役割を奪われるかどうかではなく、AIと人間がどの部分を担当するのが最も合理的なのかを考えることが重要です。
まとめ
AIの能力が急速に高まり、人間がこれまで時間をかけて身につけてきた技能を短時間で処理できるようになっています。そのため、「AIに仕事を奪われる」という不安が生まれるのは自然なことです。しかし、AIが人間より優れた作業能力を持つようになったことと、人間の仕事がなくなることは同じではありません。
AIを仕事に組み込むためには、AIに何をさせるのかを考え、適切な指示を出し、結果を確認し、目的に照らして評価する人が必要です。AIがどれだけ高性能になっても、業務上の目的を理解し、その結果に責任を持って判断する役割まで自動的に消えるわけではありません。
また、AIを組織全体で活用するためには、使い手を育てる必要があります。AIそのものを導入するだけではなく、それを使いこなす知識や判断力を持つ人材を育成することが不可欠です。AIの普及は、人間の仕事を一方的に減らすだけではなく、AIを適切に扱うための新しい役割も生み出します。
これまで身につけてきた専門技能がAIに代替される場面が増えても、その努力が無意味になるわけではありません。実作業をAIに任せることで、人間は専門知識を使った判断や、目的の設定、結果の評価といった、より深い部分に集中できます。
結局のところ、問題は「AIか人間か」という二者択一ではなく、どこをAIに任せ、どこを人間が担うのかという役割分担です。AIと同じことをする必要はなく、AIを使いながら人間にしか担えない判断と専門性を磨くことが、これからの仕事における重要な考え方になります。
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