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労働基準法改正に備えた人材管理の勘所

2026-07-03

労働基準法大改正に備えて

近年、働き方改革に関する議論は一段と活発になっており、労働基準法についてもさらなる大きな改正が見込まれています。これまでにも時間外労働の上限規制や年次有給休暇の取得義務など、多くの制度改正が実施されてきましたが、今後はさらに踏み込んだ労働時間管理や従業員保護に関する制度が整備される可能性があります。企業としては、現行制度への対応だけで安心することはできず、新たな制度変更を見据えた準備を進めることが重要になります。

改正が予定されている内容としては、勤務と勤務の間に一定時間の休息を確保する勤務間インターバル制度の規制強化、長時間にわたる連続勤務の制限、法定休日の指定方法の見直し、さらには勤務時間外の連絡や対応を求められない「つながらない権利」の保障に向けた制度整備など、多岐にわたる事項が検討されています。いずれも従業員の健康や生活を守るという観点から重要な内容ですが、企業にとっては従来以上に厳格な勤怠管理や業務運営が求められることになります。

このような制度改正は、単に就業規則を書き換えれば済む問題ではありません。人員配置の見直し、勤務シフトの再設計、管理職のマネジメント方法の変更、勤怠管理システムの改善など、人事部門を中心として幅広い対応が必要になります。また、制度変更に伴う従業員への説明や社内ルールの整備も欠かせず、人事担当者が担う業務量は確実に増加していきます。

企業は法令を遵守しながら事業を継続しなければならず、人材不足が続く状況下では、限られた人員でこれらの対応を進める必要があります。そのため、従来の人事管理を前提とした考え方では対応が難しくなる場面も増えていくでしょう。法改正を単なる負担として受け止めるのではなく、人材管理の在り方そのものを見直す契機として捉える姿勢が求められます。そこで本稿ではこのような労働法改正に備えた人事管理のポイントを解説します。

企業の人事の負担が増加

現在、多くの企業は深刻な人手不足に直面しています。少子高齢化による労働人口の減少が続く中で、人材の確保そのものが難しくなっており、採用活動に多くの時間と費用を費やしても十分な成果を得られない企業も少なくありません。その一方で、人材確保のためには賃金水準の引き上げも求められており、人件費は年々上昇する傾向にあります。企業の人事部門は採用と定着の双方に大きな課題を抱えています。

こうした状況の中で労働基準法の改正が実施されれば、人事担当者の負担はさらに増加することになります。勤務時間や休憩時間、休日管理などについてより厳格な対応が必要となれば、これまで以上に細かな勤怠管理が求められます。また、制度変更に対応するための社内規程の整備や運用ルールの策定、従業員への周知なども必要になり、人事部門が担当する業務は質・量の両面で拡大していくことになります。

しかし、現実には人事部門だけ人員を大幅に増やすことは容易ではありません。企業全体として人手不足が続く中では、限られた人数でより多くの業務を処理しなければならない状況が続きます。そのため、従来と同じ仕事の進め方では対応しきれなくなる可能性があります。少ない人数で、限られた時間の中でも十分な成果を生み出せる組織運営が重要になります。

そのためには、人事業務そのものを効率化する視点が欠かせません。情報の一元管理や定型業務の標準化を進めるだけでなく、AIを活用して事務作業や情報整理、データ分析などを支援させることも有効な選択肢となります。人が行うべき判断業務と、システムに任せられる業務を適切に整理することで、人事担当者はより重要な業務に時間を充てられるようになります。法改正への対応を一時的な対策で終わらせるのではなく、人事業務全体の効率化と生産性向上につなげる視点を持つことが重要です

企業に貢献できる人材を揃える

労働基準法の改正によって労働時間に関する制約が強まれば、企業は従来よりも少ない人数、少ない労働時間で成果を上げることが求められます。そのためには、人員数だけを増やえる発想ではなく、一人ひとりが組織へ高い価値を生み出せる体制を構築することが重要になります。企業が持続的に成長するためには、企業に貢献できる人材を確保し、その力を十分に発揮できる環境を整えることが欠かせません。

まず重要になるのは、全ての従業員が企業への貢献意欲を持つことです。自らの業務だけをこなすという受け身の姿勢ではなく、組織全体の成果を意識しながら主体的に行動できる人材が増えるほど、限られた労働時間でも高い成果を期待できます。企業としても、従業員が仕事の目的や組織の方向性を理解し、自ら考えて行動できる環境づくりを進める必要があります。

また、今後はこれまでの成功体験だけに依存することは難しくなります。制度や経営環境が変化する中では、従来のやり方に固執するのではなく、新しい方法を柔軟に受け入れ、改善を繰り返せる姿勢が求められます。業務の進め方を見直したり、新たな技術を積極的に活用したりする柔軟性は、企業全体の生産性向上に大きく貢献します。変化を前向きに受け止められる人材が増えるほど、法改正への対応力も高まります。

したがって、企業が今後重視すべきなのは、高い能力だけではありません。企業への貢献意欲を持ち、環境変化に応じて柔軟に考え方や行動を変えられる人材を組織全体に増やしていくことが重要です。このような人材が十分に揃えば、限られた時間や人員という制約の中でも高い成果を維持しやすくなり、法改正による負担増加にも対応できる組織へと近づいていくでしょう。

入口で見極める

企業に貢献できる人材を確保するためには、採用後の教育だけに期待するのではなく、採用段階で必要な資質をできる限り見極めることが重要です。採用は組織づくりの入口であり、この段階で企業が求める人物像と大きく異なる人材を受け入れてしまうと、その後の教育や配置転換によって十分に補うことが難しくなります。労働基準法改正によって人員配置の自由度がこれまで以上に制約される可能性を考えれば、採用時の見極めの重要性はさらに高まると考えられます。

採用においては、能力や資格だけを重視する姿勢には注意が必要です。高い知識や技能を持っていたとしても、自らのキャリアアップだけを優先し、組織への貢献意識が乏しい人材であれば、企業が期待する役割を十分に果たせない場合があります。短期間での転職を前提としている人材や、自身の利益だけを優先する姿勢が強い人材では、組織として継続的な人材育成を進めにくくなる可能性があります。企業が長期的な人材戦略を考えるのであれば、企業との価値観の共有や貢献意欲を重視した採用姿勢が欠かせません。

また、組織で成果を上げるためには、周囲と協力できるコミュニケーション能力や、状況に応じて考え方を柔軟に変えられる姿勢も重要です。反対に、自分の考えだけに固執し、周囲との協調を軽視する人材では、組織全体の生産性を高めることが難しくなる可能性があります。企業は今後、限られた人員で効率よく業務を進める必要があるため、組織全体の連携を阻害する要因はできる限り避けなければなりません。

そのためには、企業がどのような人材を求めているのかを明確に定義し、その基準に沿って採用活動を行うことが重要です。採用基準が曖昧であれば、面接担当者による判断にもばらつきが生じ、本来採用すべきではない人材を受け入れてしまう可能性があります。必要な人物像を明文化し、それに適合するかどうかを丁寧に確認することによって、企業に適した人材を確保しやすくなります。入口である採用段階に十分な力を注ぐことが、将来の人材管理を安定させ、法改正後の組織運営にも大きく貢献することになります。

教育や配置の最適化

企業への貢献意欲が高い人材を採用できたとしても、それだけで十分な成果が生まれるわけではありません。能力や知識、技能が十分に身についていなければ、本人の意欲を企業の成果へ結び付けることは難しくなります。そのため、採用後には計画的な教育を実施し、それぞれの人材が持つ能力を着実に高めていくことが重要です。人材育成は短期間で完結するものではなく、企業の将来を見据えた継続的な取組として位置付ける必要があります。

教育を進める際には、現在の業務だけではなく、将来的に期待する役割まで見据えて育成計画を立てることが重要です。短期的な業務習得だけを目的とした教育では、環境変化への対応力を十分に育てることはできません。労働基準法改正によって働き方が変化する可能性を考えれば、従来以上に幅広い知識や柔軟な対応力を身に付けられる教育が求められます。企業は長期的な視点から人材育成を設計し、継続的に能力向上を支援していくことが必要です。

また、人材配置についても固定的な考え方ではなく、柔軟な運用が重要になります。従業員の適性や能力、本人の希望などを総合的に考慮しながら配置を見直すことで、組織全体の生産性を高めることができます。幅広い業務を経験して汎用性を高めることが望ましい人材もいれば、特定分野の専門性を深めることで企業への貢献を高められる人材もいます。その違いを十分に理解した上で、それぞれに適した育成方針を選択することが重要です。

さらに、配置や育成は企業側だけが一方的に決定するものではありません。本人の考えや将来の希望を十分に確認しながら方向性を共有することで、育成への納得感や仕事への意欲も高まりやすくなります。企業と従業員が共通の目標を持って成長を目指すことにより、人材の能力はより大きく発揮されるようになります。このような教育と配置の最適化を継続し、企業に貢献できる人材を着実に増やしていくことが、労働基準法改正による人事負担の増加に対応し、持続的な組織運営を実現するための重要な基盤となります

まとめ

労働基準法は今後も従業員保護を重視する方向で見直しが進むことが予想され、勤務間インターバルや連続勤務時間、休日管理、「つながらない権利」など、企業の人材管理に影響を及ぼす制度がさらに整備される可能性があります。これらの改正は法令遵守の観点から避けて通ることはできず、企業には従来以上に精緻な人事管理が求められることになります。

一方で、多くの企業は人手不足や賃金上昇という課題を抱えています。そのような状況で法改正への対応も同時に進めなければならない以上、人事部門の負担は大きく増加します。したがって、人員を増やすことだけに頼るのではなく、AIなども活用しながら業務の効率化を進め、限られた人数で高い成果を上げられる体制を構築することが重要になります。

その土台となるのが、人材の質を高めるという考え方です。企業への貢献意欲を持ち、環境変化にも柔軟に対応できる人材を確保することで、限られた労働時間の中でも高い生産性を維持しやすくなります。そのためには採用段階から必要な人物像を明確にし、組織に適した人材を丁寧に見極める姿勢が欠かせません。

さらに、採用後も継続的な教育と適切な配置を通じて、それぞれの能力を最大限に発揮できる環境を整える必要があります。人材育成は一時的な取組ではなく、企業の競争力を支える長期的な投資です。本人の適性や希望も踏まえながら成長を支援し、組織全体として高い成果を生み出せる体制を築くことが、今後ますます重要になります。

労働基準法の改正は、企業にとって負担が増える出来事として受け止められがちですが、見方を変えれば、人材管理全体を見直す契機でもあります。制度変更への場当たり的な対応ではなく、採用、育成、配置、人事業務の効率化を一体的に進めることによって、企業は変化に強い組織を構築できます。今後の法改正を見据え、早い段階から人材管理の基盤を整備することが、持続的な企業成長につながる重要な経営課題といえるでしょう。

当センターでは労働法改正に備えた企業の取り組みを総合的に支援しております。下記よりお気軽にご相談ください。

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